結論から
「経済規模が大きいのに株価は上がっていない」という言い方をよく聞きます。 実際、直近の10年を切り取ると、伸びた市場とは言いにくい期間が長く含まれます。
この記事では、中国株の指数が何を持っているのか、 何が値段を動かしてきたのか、そして持つと決めるなら何を先に決めておくべきかを見ていきます。
3つの市場をまたいで持つ
日本から買える中国株の商品は、多くがMSCI Chinaという指数に連動します。 この指数は国際的な投資家が買える中国企業の株式を集めたもので、 上場している市場は1つではありません。
| 市場 | どういう株式か |
|---|---|
| 中国本土(上海・深圳) | 人民元建て。外国人が買える枠に制限がある |
| 香港 | 香港ドル建て。国際的な投資家が買いやすい |
| 米国 | 米ドル建て。ネット企業などが上場している |
業種では、通信サービスと一般消費財の比重が高く、 大手のインターネット企業が上位に並びます。 金融もまとまった比重を占めます。 銘柄数は数百社ありますが、上位の数社で指数の動きのかなりの部分が決まります。
中国本土の株式(A株)だけを対象にした指数や、 香港上場の大型株だけを集めた指数もあります。 同じ「中国株」という名前でも、中身と値動きは別物になります。
通貨も1つではありません。 本土の株式は人民元、香港の株式は香港ドル、米国上場の株式は米ドルで取引されます。 日本から米国上場のETFなどを通して持つ場合、最終的にはすべて米ドルに直され、 そこから円に直されます。円で見た結果には、為替の動きも入ります。
人民元は、当局が値動きの幅に関与する通貨です。 自由に動く通貨に比べると急な変動は起きにくい一方で、 政策として水準が変わることがあります。 企業の業績とは関係のないところで、円で見た資産が動く要因がここにもあります。
政策が、株価に直接効く
どの国でも規制は株価に影響します。中国株で違うのは、その影響が大きく、速く、業種まるごとに及ぶことです。
2021年には、学習塾やインターネットの分野に対する規制が相次いで打ち出されました。 対象となった業種の株価は短期間で大きく下げ、 指数全体もその影響を受けました。業績が悪化したからではなく、 事業の前提そのものが変わったためです。
不動産の不振も続いてきました。 不動産は中国経済の中で大きな比重を占め、 家計の資産としても中心にあるため、 そこが弱ると消費や金融にも波及します。
逆向きも成り立ちます。 政策が支援に回る局面では、業績が変わらなくても株価が大きく上がることがあります。 上げも下げも政策で動くぶん、値動きの理由が業績から離れやすい市場です。
この10年の実績が示すもの
投資先を選ぶとき、多くの人は伸びた市場を探します。 中国株について正直に言うと、直近の10年はそこに当てはまりません。 マイナスの期間が長く、下げてから戻るまでに何年もかかった局面があります。
深く下げた資産が元に戻るには、下げ幅以上の上げ幅が要ります。 半分になったなら2倍です。この算数は、どの資産でも変わりません。 違うのは、戻るまでにかかった時間の長さです。
ここで大事なのは、「だから買ってはいけない」ということではありません。 下げた市場は、その後に戻ることもあります。 ただ「伸びている市場だから」という理由では買えない、というだけです。 買うなら、別の理由が要ります。
どの年を起点にするかで、答えは大きく変わります。 高値の直前から数えるのと、下げ切った直後から数えるのとでは、 同じ指数でも年率がまるで違う数字になります。 中国株のように上下の振れが大きい市場ほど、この差が開きます。
自分が入れようとしている金額で、過去にどうなっていたかは試算できます。自分の金額で、下げた時期も含めて確かめると、途中でいちばん低かった月まで合わせて出ます。
制度の側の不確実さ
値動き以外に、持ち方そのものに関わる不確実さがあります。 これは他の国の株式ではあまり意識しなくてよい部分です。
- 米国上場の中国企業について、上場廃止をめぐる議論が続いてきた
- 中国本土の株式は、外国人が買える枠や経路に制限がある
- ネット企業の多くは、契約を通じて支配する仕組み(VIE)で海外から保有されている
- 会計監査の情報開示をめぐって、国どうしの調整が必要になった経緯がある
VIEというのは、外国資本が直接持てない業種の会社を、 契約の積み重ねで実質的に支配する仕組みです。 投資家が持っているのは事業会社の株式そのものではなく、 その仕組みを通じた権利にあたります。
この仕組みが問題になったことは、これまでありませんでした。 ただ「株式を持っている」という言葉の中身が、他の国とは少し違うことは、 知ったうえで持つほうがよい種類の話です。
資産の中でどう置くか
中国株は、全世界株式や新興国株式の指数の中にも含まれています。 単独で買うというのは、その比重を自分の判断で引き上げるということです。 まず、いま持っている商品にどれだけ入っているかを確かめてください。
そのうえで単独で持つなら、先に決めておきたいことがあります。 全体の何%までにするか、そして何年持つつもりかです。 政策で大きく動く市場では、下げた理由が読み切れないまま下げ続けることがあります。 金額の上限を決めていないと、そこで判断を迫られます。
費用も確かめてください。 新興国の指数に連動する商品は、先進国の指数より信託報酬が高めです。 値上がりが無かった期間でも、この費用は毎年引かれます。
持つ理由も言葉にしておいてください。 「割安だから」「分散のため」「特定の産業に期待している」では、 下げたときに続けるかどうかの判断が変わります。買う前に理由を書いておくと、値段が動いたときにその理由を読み直せます。
理由が「安いから」だけだった場合、さらに安くなったときに買い増すのか、降りるのかが決まりません。 政策で動く市場では、安い理由が数年続くこともあります。 どこまで下がったら降りるのかを、金額で決めておいてください。 率ではなく金額で決めるのは、同じ3割でも100万円と1,000万円では受け止め方が違うからです。
商品を選ぶときに見る場所は3つあります。どの指数に連動しているか、信託報酬がいくらか、為替ヘッジが付いているかです。 本土のA株だけを対象にしたもの、香港上場の大型株を集めたもの、 3つの市場をまたぐものでは、中身も値動きも変わります。 「中国株ファンド」という名前だけで選ばないでください。
配当の扱いも見ておいてください。 中国株には配当を出す会社が多く、株価が伸びなかった期間でも配当は受け取れていました。 価格の指数だけを見ると、その分が丸ごと抜け落ちます。実績を比べるときは、配当を含む数字どうしで比べてください。
最後に、これは中国株に限った話ではありません。 生活費や数年以内に使う予定のお金を入れていると、 いちばん下げた時期に売る側に回ります。 手元にいくら残すかを先に決めておくほうが、銘柄選びより結果に効きます。 手元にいくら残せばよいかは生活防衛資金の診断で決められます。

