結論から
投資の話は、たいてい商品選びから始まります。 どの投資信託がよいか、信託報酬はいくらか、どの指数に連動しているか。 どれも意味のある比較ですが、その前に決まっているものがあります。 そもそも資産のうち何割を、値動きのあるものに置くのか。ここが資産配分です。
この記事は、配分の決め方の観点を整理するものです。 何割が正解かは人によって違うので、具体的な割合は出しません。 出せるのは、何を見て決めるのかという順番だけです。
資産配分とは
資産配分は、アセットアロケーションとも呼ばれます。 株、債券、現金、不動産、そのほかといった資産の種類ごとに、 全体の何%ずつを置くかを決めることです。
割合で見るところが要点です。金額のままだと、 資産が増えたときに同じ意味を持たなくなります。 株を300万円持っているという事実は、資産全体が500万円の人と 5,000万円の人とでは、まったく違う意味になります。
もうひとつ、資産配分は「これから買うお金」ではなく「いま持っているお金の全部」について考えるものです。 毎月の積立額をどう振り分けるかという話と混ざりやすいのですが、 すでにある預金も含めた全体の割合が、実際に抱えている値動きを決めます。 預金が多い人は、意識していなくても、かなり慎重な配分になっています。
自宅は扱いが難しいところです。売って住み替える気がないなら、 値上がりしても使えるお金にはなりません。 それでも、資産全体のうち不動産に何割が乗っているかを知っておく意味はあります。 住宅ローンが残っているあいだは、借りたお金で不動産を大きく持っている状態でもあります。 金融資産だけを見て配分を語ると、この部分がまるごと抜け落ちます。
なぜ商品選びより先に来るのか
理由は単純です。割合が大きいものほど、資産全体の動きを決めるからです。
同じ商品を持っていても、株が3割の人と9割の人とでは、 株が同じだけ下がったときに減る額が3倍違います。 どの投資信託を選ぶかで生まれる差は、ふつうはこれより小さくなります。先に効くほうを先に決める、というだけの話です。
商品の比較が無意味だと言っているのではありません。 信託報酬の差は持っているあいだずっと効き続けますし、 同じ指数でも商品によって差は出ます。 ただ、その比較はふつう小数点以下の話で、配分の違いは割合そのものの話です。 桁が違うものを同じ順番で考えると、時間の使い方を間違えます。
何をもとに決めるか
配分を決めるとき、相場の見通しは使えません。 これから何が上がるかが分かるなら、そもそも分ける必要がないからです。 使えるのは、自分の側にある条件だけです。
| 見るもの | 何が決まるか |
|---|---|
| いつ使うお金か | 値動きのあるところに置いてよい金額 |
| どれだけの下げなら持ち続けられるか | 値動きのあるものの割合の上限 |
| 収入が止まったときの備えがあるか | 現金として残しておく額 |
| すでに寄っているものがあるか | これ以上増やしたくない種類 |
1つめがいちばん強い制約です。 3年以内に使うと決まっているお金は、値動きのあるところに置くと、 必要な時期の値段で決まってしまいます。 使う時期が決まっているお金は、配分の話に入れる前に外しておきます。
2つめは、率ではなく金額で考えると現実的になります。 「3割の下落までなら耐えられる」と言うのは簡単ですが、 それが400万円だと分かると答えが変わる人は少なくありません。 率のままだと、自分の話として想像しにくいからです。
耐えられる下げ幅を確かめるときは、去年までの自分の行動を見るのがいちばん確かです。 実際に下げた局面で売らずにいられたのなら、その割合は持ちこたえられたということです。 そのときより資産が増えていれば、同じ割合でも動く金額は大きくなっています。 言葉で決意を確かめるより、過去に自分が何をしたかを見るほうが当てになります。
4つめは見落としやすいところです。 勤め先の株を持っている人、自宅を買った人、 会社の年金で株の投信を選んでいる人は、 すでにどこかに寄っています。そこを数に入れずに新しい投資を決めると、 寄っている側をさらに厚くしてしまうことがあります。
置いておくと、配分はずれる
一度決めた配分は、放っておいても勝手に動きます。 よく上がったものほど金額が大きくなり、全体に占める割合も大きくなるからです。
半分ずつで始めたつもりでも、株がよく上がった数年のあとには、 株の割合が7割を超えていることがあります。 売り買いを一度もしていなくてもです。自分では慎重なままのつもりで、実際には強気な配分になっている、 という状態が起こります。
この状態のやっかいなところは、気づくのが下がったあとになりやすい点です。 上がっているあいだは、割合が増えたぶんだけ気分もよくなります。 割合を見る習慣がないと、増えた値動きの大きさは意識に上りません。
戻すきっかけの決め方には、よく使われるものが2つあります。 決めた割合から一定の幅だけずれたら戻す方法と、 年に一度など時期を決めて見る方法です。 前者は必要なときだけ動かせるかわりに、常に割合を見ている必要があります。 後者は手間が読めるかわりに、大きくずれた期間をしばらく抱えることになります。 どちらが合うかは、手をかけられる頻度で決まります。
割合を元に戻す作業をリバランスと呼びます。 増えすぎたものを売って減ったものを買う、あるいは 新しく入れるお金を減ったほうに寄せる、という方法があります。 どちらにも税金や手数料の話がついてくるので、 やるかどうかを含めて、決めるのは持ち主です。
決め方の落とし穴
よく見かける決め方には、そのまま使うと合わなくなるものがあります。
- 年齢だけで決める目安。同じ年齢でも、収入の安定度も使う予定も違う
- 公的な年金基金の配分をそのまま写す。目的も期間も、途中で売る必要の有無も違う
- 過去に成績のよかった資産の割合を大きくする。順位は年によって入れ替わる
- 積立の振り分けだけを決めて、すでにある預金を数に入れない
2つめについて補足します。 年金積立金を運用しているGPIFは、国内債券・国内株式・外国債券・外国株式の 4つについて、それぞれの割合を決めて公表しています。 公表されているので写しやすいのですが、 何十年も引き出さずに運用でき、途中で売る必要がない立場での配分です。 来年の学費を抱えている家計と、同じ前提には立っていません。
4つめは、積立を始めた人がほぼ必ず通るところです。 毎月の5万円をどう振り分けるかは熱心に考えるのに、 すでにある預金1,000万円は数に入れない、という状態になりやすい。 全体で見れば値動きのあるものはごくわずかで、 本人が思っているよりずっと慎重な配分になっています。 積立の配分と、資産全体の配分は別の数字です。
自分の配分を出す
必要なのは、資産の種類ごとのおおよその金額だけです。 1円単位で合わせる必要はありません。 割合を見るのが目的なので、万円単位で足りています。
出したあとに見るのは、次の3つです。
- いちばん大きい種類が、全体の何割か
- 外貨で値段が決まるものを足すと、全体の何割か
- その割合のまま下げが来たとき、資産全体で何円減るか
3つめまで出すと、配分の話がはじめて金額の話になります。自分の金額で、いまの配分と減り方を試算すると、種類ごとの割合と、条件を置いたときの減り方が内訳つきで出ます。 どの配分がよいかは出しません。いまどうなっているかを出すところまでです。
