授業料だけを見ると、半分以上が抜ける
大学の費用を調べると、まず出てくるのは授業料です。大学ごとに公表されていて、 国立と私立でも、学部によっても変わります。
ただ、家計から実際に出ていくのはそれだけではありません。日本学生支援機構の学生生活調査は、 授業料に加えて通学費・教材費・食費・住居光熱費まで含めた学生生活費を集計しています。こちらを見ると、金額の見え方が変わります。
学生生活費という言い方に慣れないかもしれませんが、 家計から見れば「大学に通わせるために、1年あたり出ていく額」に近いものです。 授業料と、それ以外に必要になるものをすべて足した数字だと考えてください。
この調査は学生本人に対して行われていて、家庭からの給付とアルバイト、奨学金をあわせた 収入と、その使いみちを集計しています。家計から出ていく額そのものではなく、学生が1年に使った額だという点は、 読むときに押さえておく必要があります。
国立大学に自宅から通う学生の場合、学生生活費は年120万円。 そのうち実際に払った授業料は47万円で、全体の4割ほどにすぎません。 残りは通学費や教材費などの学費と、食費・娯楽費などの生活費です。
国立でも下宿すれば、私立の自宅通学に近づく
学生生活費を設置区分と住まいの組み合わせで並べると、思っていたのと違う並びになります。
国立のなかでも、自宅の120万円と下宿等の180万円では年60万円の差があります。4年間なら240万円です。 「国立に受かったから安く済む」とだけ考えていると、この240万円が計算から抜けます。
| 住まい | 国立 | 公立 | 私立 |
|---|---|---|---|
| 自宅 | 481万円 | 427万円 | 762万円 |
| 学寮 | 610万円 | 581万円 | 998万円 |
| 下宿・アパート等 | 720万円 | 700万円 | 1,076万円 |
学寮は、下宿と自宅の中間にあたります。国立で610万円、私立で998万円。 住居費が下宿より抑えられるぶん、国立なら4年で110万円、私立なら77万円ほど軽くなります。 ただし定員があるので、入れる前提で計画を立てることはできません。
4年間の総額です。いちばん軽い公立・自宅の427万円と、 いちばん重い私立・下宿等の1,076万円では649万円の差があります。 進学先が県内か県外かは、この表のどの行を見るかを決める要素になります。
自宅通学が安く見える理由
自宅の行で生活費が小さく出るのには、からくりがあります。家賃と光熱費を家庭が別に負担しているため、学生本人の費用として現れないのです。
自宅通学なら食費も光熱費も家庭の支出に混ざるので、学生生活費としては計上されません。 自宅通学が下宿より軽いのは確かですが、差額の60万円がそのまま家計に残るわけではありません。
もうひとつ、自宅通学でも見落としやすい費用があります。通学費です。 学費計のなかに含まれていますが、遠方から通う場合は定期券代が年に十数万円になることもあります。自宅だから通学費がかからない、ということはありません。
入学の年だけ出ていく費用
学生生活調査が集計しているのは、在学中の1年あたりの額です。 次のものは、この年額に十分に含まれていません。
- 入学金。入学する年に一度だけ、まとまった額が必要になります。額は大学ごとに公表されています。
- 受験料。複数校を受けると、その分だけ積み上がります。
- 引っ越しと家具家電。下宿を始める年だけ、まとまった額が出ていきます。
- 敷金・礼金と、入居時の仲介手数料。地域によって大きく変わります。
どれも入学の年に集中して出ていく費用です。年額の平均で計画を立てると、 いちばん重い年をさらに重くする要素が計算の外に置かれることになります。
入学の年がいちばん重くなるのは、この一時金と、その年の学生生活費が重なるためです。 しかも私立の場合、合格発表から入学手続きの締切までの期間が短く、その時点で現金として用意できていないと間に合いません。 値動きのある置き場所に入れたままだと、その年の価格で売ることになります。
支援制度があると、この金額は下がる
大学の費用でいちばん大きく効くのが、高等教育の修学支援新制度です。 授業料等の減免と、返さなくてよい給付型奨学金の2つで成り立っています。対象になれば、上の金額をそのまま用意する必要はありません。
対象かどうかは世帯の所得と資産で決まり、条件は改正で動きます。 進学の何年も前に調べた条件が、進学の年にそのまま当てはまるとは限りません。 だから積立の計画では対象外として計算しておいて、 進学が近づいた時点であらためて確かめるほうが安全です。
地元に大学があるかどうかで決まる部分
自宅通学になるか下宿になるかは、本人の希望だけでは決まりません。 通える範囲にその学部があるかどうかで、ほぼ決まってしまう部分があります。
これは計画の立て方に効いてきます。学力や志望は変わりますが、通える範囲に大学があるかどうかは、いまの時点でほぼ分かっているためです。 自宅から通える大学が少ない地域なら、下宿になる確率が高いものとして計画を立てられます。
年60万円、4年で240万円の差なので、どちらを前提にするかで必要な積立額は大きく変わります。 迷う場合は、重いほう(下宿)で計画しておいて、自宅通学になったら余った分をそのまま残すほうが、 あとから足りなくなるより手が多く残ります。
この平均が扱っていない進路
学生生活調査は大学の昼間部を対象にしています。次のものは含まれていません。
- 医学・歯学・薬学など、修業年数が4年を超える課程。総額を4年で計算すること自体が成り立ちません。
- 大学院。学部のあとに進む場合、この表の外に2年以上が乗ります。
- 夜間部。この表は昼間部のみです。
- 海外の大学・留学。
- 個別の大学の実際の学費。この表は全国の平均です。
進学先が決まっている場合は、その大学が公表している学費に置き換えてください。平均は、進路が決まっていない段階で見当をつけるための数字です。
とくに医学部や薬学部を想定している場合、この表の総額は使えません。 修業年数が違うので、4年ぶんを足した額そのものが当てはまらないためです。 専門学校や短期大学も、在学年数が違うぶん総額が変わります。
どう使えばよいか
この金額が効いてくるのは、いまから毎月いくら積み立てるかを決めるときです。 大学の費用は、教育費のなかでいちばん大きく、いちばん時期をずらせない費用にあたります。
もう1つ、この費用には特徴があります。 小中高の費用は毎年ならして出ていくのに対し、大学の費用は4年という短い期間に集中して出ていきます。 年120万円から270万円が4年続くので、その間の家計はそれまでと様変わりします。
しかも進学先が決まるのは、必要になるほんの1年前です。 それまでは、どの行の金額になるか分かりません。 だから幅を持って見ておく必要があります。国立・自宅で足りる計画を立てておいて、 私立・下宿になった場合にどれだけ足りなくなるかを先に知っておく、という使い方です。
幅を持って見ておくと、進学先が決まったときに慌てずに済みます。 重いほうで計画して軽いほうに決まれば、余った分はそのまま残ります。 逆にしていると、決まってから1年で差を埋めることになります。どちらに転んでも困らない側から計画するということです。
進路ごとに必要な積立額がどう変わるかは、教育費の診断で並べて比べられます。金額そのものは学生生活調査のページに、内訳まで載せています。

