差がいちばん大きいのは、小学校
文部科学省の子供の学習費調査は、2年ごとに幼稚園から高校までの費用を集計しています。 授業料などの学校教育費に、給食費と、塾や習い事の費用まで含めた1年あたりの額です。
対象は全国の公立・私立の学校に通う子どもの保護者で、実際に支出した額を集計しています。 つまり予定額ではなく、払った額です。授業料の支援を受けた家庭は、 受けたあとの負担額が集計に入っています。
公私の差は、段階によってまるで違います。いちばん大きいのは小学校で公立の約4.8倍。 いちばん小さいのは高校で約2.0倍です。 「私立は公立の2倍」といった1つの倍率で覚えると、段階によって大きく外れます。
倍率より、在学年数のほうが効く
年額の倍率だけを見ていると、総額への効き方を読み違えます。 小学校は6年、中学校と高校は3年、幼稚園は3年です。同じ倍率でも、長く在学する段階のほうが総額を大きく動かします。
| 学校段階 | 在学年数 | 公立の総額 | 私立の総額 | 差 |
|---|---|---|---|---|
| 幼稚園 | 3年 | 55万円 | 104万円 | 49万円 |
| 小学校 | 6年 | 220万円 | 1,045万円 | 825万円 |
| 中学校 | 3年 | 163万円 | 468万円 | 305万円 |
| 高校 | 3年 | 179万円 | 354万円 | 175万円 |
| 合計 | 15年 | 617万円 | 1,971万円 | 1,354万円 |
小学校を私立にするかどうかだけで、825万円が動きます。 これは中学校と高校の差を足したものより大きい額です。 倍率が同じでも、6年と3年では意味が変わります。
逆に、幼稚園の公私差は3年間で49万円です。倍率でいえば1.9倍ですが、 総額に対する効き方はいちばん小さい。倍率と金額は、別のものとして見てください。倍率が大きい段階ほど家計に効く、とは限りません。
もう1つ、この表には出てこない費用があります。中学受験そのものにかかる費用です。 受験のための塾の費用は学校外活動費に入りますが、公立小学校の平均値のなかに混ざっているため、 受験をする家庭としない家庭を分けた金額は、この調査からは取り出せません。私立中学を考えている場合、小学校の段階ですでに平均を超えていることが多くなります。
公立でいちばん大きいのは、学校に払う額ではない
公立の学習費を「授業料が無いから小さい」と考えると、実際の負担とずれます。 学習費総額の中身を見ると、いちばん大きいのは塾や習い事の費用(学校外活動費)です。
公立小学校の学習費総額36.7万円のうち、学校に払っているのは7.4万円。 残りの25.6万円は学校の外で使われています。総額の7割が、学校とは関係のないところで動いていることになります。
中学校ではさらに大きくなります。公立中学校の学習費総額54万円のうち、 学校外活動費は36万円。高校受験を控える時期なので、塾の費用がここに集中します。公立でも、中学3年間で塾に100万円以上を使っている家庭が平均に含まれていることになります。
この費目は、家庭ごとの差がいちばん大きいところでもあります。 塾に通わせていない家庭では、公立小学校の学習費は平均より大きく下がります。 逆に受験対策をしている家庭では、平均を大きく超えます。
私立で大きいのは、学校に払う額
公立でいちばん大きいのが学校外活動費だったのに対し、私立では逆になります。 私立小学校の学習費総額174万円のうち、学校教育費が98万円。学校外活動費は71万円です。公私の差を作っているのは、学校に払う額のほうです。
| 区分 | 学校教育費 | 学校給食費 | 学校外活動費 |
|---|---|---|---|
| 公立小学校 | 7.4万円 | 3.6万円 | 25.6万円 |
| 私立小学校 | 97.8万円 | 5.4万円 | 71.0万円 |
注目したいのは、学校外活動費も私立のほうが2.8倍大きいところです。 私立に通わせている家庭は、塾や習い事にも多く支出しています。公立にすれば学校外活動費のぶんは同じ、というわけではありません。
私立の費用は、毎年ならして出ていく
金額の大きさに目が行きますが、出ていき方も見ておく必要があります。 小中高の費用は、私立であっても毎年ほぼ同じ額が続きます。 入学の年だけ跳ね上がるという形ではありません。
これは、前もって貯めておく必要があるかどうかを分けます。 毎年同じ額なら、その年の家計から払えるかどうかの問題になります。 払えるなら積立の対象にしなくてよく、払えないなら進路そのものを見直すことになります。
この金額は、あなたの額ではない
ここまでの金額はすべて全国平均です。調査は抽出で行われているので、 公表値には標準誤差率も付いています。公立小学校で1.45%、私立幼稚園で4.75%といった幅です。
もうひとつ、表の読み方で注意がいるところがあります。 高校の学習費には給食費が載っていませんが、これは0円だからではなく、調査の対象に入っていないためです。0と「調査していない」は別のことです。
地域による差も、この調査からは取り出せません。公表されているのは全国の平均で、 都市部と地方では、学校外活動費も通学費も水準が違います。 自分の地域の相場を知りたい場合は、平均を出発点にして、 周りの家庭で実際にかかっている額を聞くほうが確かです。
金額そのものは子供の学習費調査のページに、内訳と標準誤差率まで載せています。
中学から私立にすると、どこが変わるか
公私の選び方でよくあるのが、小学校は公立で、中学から私立にするという形です。 この場合、費用は中学と高校の6年間で変わります。
| 進路 | 幼稚園〜高3の15年間の総額 |
|---|---|
| すべて公立 | 617万円 |
| 高校から私立 | 792万円 |
| 中学から私立 | 1,097万円 |
| すべて私立 | 1,971万円 |
中学から私立にすると、すべて公立の場合より480万円増えます。 高校だけ私立にする場合との差は305万円です。どこから私立にするかで、階段状に変わります。
ここで見ておきたいのは、増えた分がいつ出ていくかです。 中学から私立にした場合、増えるのは中1から高3までの6年間。 これはちょうど、大学のための積立をいちばん厚くしたい時期と重なります。
進路を数字だけで決めないために
公私の差が分かっても、それだけでは決まりません。決めるのに要るのは、 その差が家計の中で払える大きさなのかのほうです。
- 私立にした場合の年額を、いまの家計で毎年払えるか。小中高の費用は毎年ならして出ていきます。
- 私立にしたぶん、大学のための積立を減らすことになっていないか。時期が重なると、あとから戻せません。
- きょうだいがいる場合、同じ年に2人が在学する年をまたげるか。その年の支出は足し算になります。
3つめは、きょうだいの年齢が近いほど効きます。2人とも私立に通う年が出てくると、 その年だけ学費が2人ぶんになります。1人あたりの年額で見ているうちは、この年が視界に入りません。
とくに2つめが見落とされがちです。小中高を私立にすると、その期間の家計が重くなり、 大学のための積立に回せる額が減ります。ところが大学の費用はいちばん大きく、いちばん時期をずらせない費用です。
進路を変えたときに必要な積立額がどう動くかは、教育費の診断で並べて比べられます。公立と私立を入れ替えるだけで、毎月の必要額がどれだけ変わるかが出ます。

