教育費

公立と私立で、教育費はどれだけ違う

私立は高い、とは誰でも知っています。ただ、差が何倍あるのかと、その差が総額にどう効くのかは段階によってまるで違います。学校に払う額だけを見ていると、公立の負担を見落とします。

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この記事の要点

  • 差がいちばん大きいのは小学校で、公立の約4.8倍です。在学が6年と長いぶん、総額への効き方も大きくなります。
  • 高校の公私差は約2.0倍で、4つの段階のなかでいちばん小さくなっています。
  • 公立でいちばん大きい費目は、学校に払う額ではなく塾や習い事の費用です。公立小学校では総額の7割を占めます。
  • 公表されているのは全国平均です。同じ公立でも地域と家庭で大きくばらつくため、自分の額として読まないでください。
  • 高校の学習費に給食費が載っていないのは0円だからではなく、調査の対象に入っていないためです。

差がいちばん大きいのは、小学校

文部科学省の子供の学習費調査は、2年ごとに幼稚園から高校までの費用を集計しています。 授業料などの学校教育費に、給食費と、塾や習い事の費用まで含めた1年あたりの額です。

公立と私立の年間の学習費は、学校段階によって差の大きさが違う幼稚園1.9倍18万円35万円小学校4.8倍37万円174万円中学校2.9倍54万円156万円高校2.0倍60万円118万円
文部科学省 子供の学習費調査(令和5年度)の全国平均、子ども1人あたりの年額です。上が公立、下が私立。差がいちばん大きいのは小学校で、いちばん小さいのは高校です。平均であって、その家庭の額ではありません。

対象は全国の公立・私立の学校に通う子どもの保護者で、実際に支出した額を集計しています。 つまり予定額ではなく、払った額です。授業料の支援を受けた家庭は、 受けたあとの負担額が集計に入っています。

公私の差は、段階によってまるで違います。いちばん大きいのは小学校で公立の約4.8倍。 いちばん小さいのは高校で約2.0倍です。 「私立は公立の2倍」といった1つの倍率で覚えると、段階によって大きく外れます。

小学校 約4.8倍、中学校 約2.9倍、高校 約2.0倍、幼稚園 約1.9倍。 幼稚園から高校まで通したときの総額では約3.2倍です。
マネック案内役):高校がいちばん差が小さいのは意外かもしれないね。公立高校でも年60万円かかっていて、そもそもの額が大きいんだ。

倍率より、在学年数のほうが効く

年額の倍率だけを見ていると、総額への効き方を読み違えます。 小学校は6年、中学校と高校は3年、幼稚園は3年です。同じ倍率でも、長く在学する段階のほうが総額を大きく動かします

学校段階在学年数公立の総額私立の総額
幼稚園3年55万円104万円49万円
小学校6年220万円1,045万円825万円
中学校3年163万円468万円305万円
高校3年179万円354万円175万円
合計15年617万円1,971万円1,354万円

小学校を私立にするかどうかだけで、825万円が動きます。 これは中学校と高校の差を足したものより大きい額です。 倍率が同じでも、6年と3年では意味が変わります。

逆に、幼稚園の公私差は3年間で49万円です。倍率でいえば1.9倍ですが、 総額に対する効き方はいちばん小さい。倍率と金額は、別のものとして見てください。倍率が大きい段階ほど家計に効く、とは限りません。

もっとも、中学受験をするかどうかは金額だけで決まる話ではありません。 ここで言えるのは「どこを変えると総額がどれだけ動くか」までです。

もう1つ、この表には出てこない費用があります。中学受験そのものにかかる費用です。 受験のための塾の費用は学校外活動費に入りますが、公立小学校の平均値のなかに混ざっているため、 受験をする家庭としない家庭を分けた金額は、この調査からは取り出せません。私立中学を考えている場合、小学校の段階ですでに平均を超えていることが多くなります。

公立でいちばん大きいのは、学校に払う額ではない

公立の学習費を「授業料が無いから小さい」と考えると、実際の負担とずれます。 学習費総額の中身を見ると、いちばん大きいのは塾や習い事の費用(学校外活動費)です。

公立小学校では、学習費の7割が塾や習い事の費用公立小学校 年36.7万円の内訳学校教育費7.4万円給食3.6万学校外活動費(塾・習い事)25.6万円 総額の7割「公立だから教育費は小さい」とは限らないこの費目は家庭ごとの差がいちばん大きく、平均から離れやすい
公立小学校の学習費総額36.7万円の内訳です(令和5年度・全国平均)。学校に払っているのは7.4万円で、残りは給食費3.6万円と学校外活動費25.6万円です。学校に払う額だけを見ていると、実際の負担とずれます。

公立小学校の学習費総額36.7万円のうち、学校に払っているのは7.4万円。 残りの25.6万円は学校の外で使われています。総額の7割が、学校とは関係のないところで動いていることになります。

中学校ではさらに大きくなります。公立中学校の学習費総額54万円のうち、 学校外活動費は36万円。高校受験を控える時期なので、塾の費用がここに集中します。公立でも、中学3年間で塾に100万円以上を使っている家庭が平均に含まれていることになります。

この費目は、家庭ごとの差がいちばん大きいところでもあります。 塾に通わせていない家庭では、公立小学校の学習費は平均より大きく下がります。 逆に受験対策をしている家庭では、平均を大きく超えます。

マネック案内役):つまり公立を選んでも、教育費が自動的に小さくなるわけじゃないんだ。学校の外でいくら使うかのほうが、 公私の選択より効く家庭もあるよ。

私立で大きいのは、学校に払う額

公立でいちばん大きいのが学校外活動費だったのに対し、私立では逆になります。 私立小学校の学習費総額174万円のうち、学校教育費が98万円。学校外活動費は71万円です。公私の差を作っているのは、学校に払う額のほうです。

区分学校教育費学校給食費学校外活動費
公立小学校7.4万円3.6万円25.6万円
私立小学校97.8万円5.4万円71.0万円

注目したいのは、学校外活動費も私立のほうが2.8倍大きいところです。 私立に通わせている家庭は、塾や習い事にも多く支出しています。公立にすれば学校外活動費のぶんは同じ、というわけではありません。

これは因果の話ではなく、集計の結果です。私立に通わせる家庭と公立に通わせる家庭で、 教育にかける支出そのものの水準が違う、という読み方のほうが素直です。

私立の費用は、毎年ならして出ていく

金額の大きさに目が行きますが、出ていき方も見ておく必要があります。 小中高の費用は、私立であっても毎年ほぼ同じ額が続きます。 入学の年だけ跳ね上がるという形ではありません。

これは、前もって貯めておく必要があるかどうかを分けます。 毎年同じ額なら、その年の家計から払えるかどうかの問題になります。 払えるなら積立の対象にしなくてよく、払えないなら進路そのものを見直すことになります。

危ないのは、私立の学費を払うために大学のための積立を止めてしまうことです。 小中高の費用は毎年払えば済みますが、大学の費用は前もって用意しておかないと間に合いません。止めた数年ぶんは、あとから取り戻すのが難しくなります。
マネック案内役):私立を選ぶかどうかは、年額を払えるかだけじゃなくて、大学ぶんの積立を続けたまま払えるかで見てね。

この金額は、あなたの額ではない

ここまでの金額はすべて全国平均です。調査は抽出で行われているので、 公表値には標準誤差率も付いています。公立小学校で1.45%、私立幼稚園で4.75%といった幅です。

この標準誤差率は「同じ調査をやり直したら、平均値がこれくらい動きうる」という幅です。家庭ごとのばらつきではありません。実際の家庭ごとの差は、この幅よりはるかに大きくなります。

もうひとつ、表の読み方で注意がいるところがあります。 高校の学習費には給食費が載っていませんが、これは0円だからではなく、調査の対象に入っていないためです。0と「調査していない」は別のことです。

地域による差も、この調査からは取り出せません。公表されているのは全国の平均で、 都市部と地方では、学校外活動費も通学費も水準が違います。 自分の地域の相場を知りたい場合は、平均を出発点にして、 周りの家庭で実際にかかっている額を聞くほうが確かです。

金額そのものは子供の学習費調査のページに、内訳と標準誤差率まで載せています。

中学から私立にすると、どこが変わるか

公私の選び方でよくあるのが、小学校は公立で、中学から私立にするという形です。 この場合、費用は中学と高校の6年間で変わります。

進路幼稚園〜高3の15年間の総額
すべて公立617万円
高校から私立792万円
中学から私立1,097万円
すべて私立1,971万円

中学から私立にすると、すべて公立の場合より480万円増えます。 高校だけ私立にする場合との差は305万円です。どこから私立にするかで、階段状に変わります。

ここで見ておきたいのは、増えた分がいつ出ていくかです。 中学から私立にした場合、増えるのは中1から高3までの6年間。 これはちょうど、大学のための積立をいちばん厚くしたい時期と重なります。

マネック案内役):金額そのものより、大学の直前6年間に重なることのほうが効くんだ。 この6年で積立を止めると、大学までに間に合わなくなることがあるよ。

進路を数字だけで決めないために

公私の差が分かっても、それだけでは決まりません。決めるのに要るのは、 その差が家計の中で払える大きさなのかのほうです。

  • 私立にした場合の年額を、いまの家計で毎年払えるか。小中高の費用は毎年ならして出ていきます。
  • 私立にしたぶん、大学のための積立を減らすことになっていないか。時期が重なると、あとから戻せません。
  • きょうだいがいる場合、同じ年に2人が在学する年をまたげるか。その年の支出は足し算になります。

3つめは、きょうだいの年齢が近いほど効きます。2人とも私立に通う年が出てくると、 その年だけ学費が2人ぶんになります。1人あたりの年額で見ているうちは、この年が視界に入りません。

とくに2つめが見落とされがちです。小中高を私立にすると、その期間の家計が重くなり、 大学のための積立に回せる額が減ります。ところが大学の費用はいちばん大きく、いちばん時期をずらせない費用です。

進路を変えたときに必要な積立額がどう動くかは、教育費の診断で並べて比べられます。公立と私立を入れ替えるだけで、毎月の必要額がどれだけ変わるかが出ます。

よくある質問

公立と私立で教育費は何倍違いますか?
段階によって違います。小学校は約4.8倍、中学校は約2.9倍、高校は約2.0倍、幼稚園は約1.9倍です。幼稚園から高校まで通したときの総額では約3.2倍になります。
公立なら教育費はあまりかからないのですか?
学校に払う額は確かに小さくなりますが、塾や習い事の費用は公立のほうが総額に占める割合が高くなります。公立小学校では、学習費総額の約7割が学校外活動費です。
この金額に授業料の無償化は反映されていますか?
調査は実際に支出した額を集計しているため、調査時点で適用されていた支援は結果に含まれます。ただし制度はその後も変わるので、最新の条件は文部科学省の公表ページで確かめてください。

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