教育費

教育費の総額と、積み立てる額は別もの

教育費の記事はたいてい総額で終わります。ただ、その額をそのまま積立の目標にすると、必要な額を実際の何倍にも見積もることになります。分けるべきなのは「いつ払うか」です。

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この記事の要点

  • 教育費の総額と、前もって積み立てて用意する額は別ものです。総額を積立目標にすると、必要額を大きく見積もることになります。
  • 小中高の費用は毎年ならして出ていくため、その年の家計から払う家庭が多く、前もって貯める対象になりにくい費用です。
  • 前もって用意が要るのは、短い期間に大きく出ていく大学の費用です。ここだけが「貯めておかないと間に合わない」費用にあたります。
  • 必要な積立額は「総額 ÷ 残り月数」では出せません。出ていく時期がそろっていないため、時点ごとに足りているかを見る必要があります。
  • 児童手当・授業料の減免・給付型奨学金は、対象になれば必要額そのものを下げます。積立額を決める前に確かめる順番です。

「1,000万円」は何を指した数字か

教育費の話は、たいてい総額から始まります。幼稚園から大学まで、すべて公立なら1,000万円前後、 私立が混ざれば2,000万円を超える、といった数字です。金額そのものは公表値から出ているので、 間違っているわけではありません。

問題は、その数字が18年から22年かけて出ていく合計だということが、 抜け落ちやすいところにあります。総額をそのまま「貯めておくべき額」として読むと、 用意すべき額を実際の何倍にも見積もることになります。

教育費の総額と、前もって積み立てて用意する額は別ものです。 総額を積立の目標にすると、必要額が過大になります。

分けるべきなのは金額の大きさではなく、いつ払うかです。 毎年ならして出ていく費用と、短い期間に大きく出ていく費用では、備え方が変わります。

考え方は家賃と車の買い替えの違いに似ています。家賃は毎月の収入から払うもので、 10年分を前もって貯めておく人はいません。車の買い替えは数年に一度まとまった額が出ていくので、 そのときに向けて用意します。教育費のなかにも、この2種類が混ざっています。 総額はその両方を足した数字なので、そのまま貯める目標にはなりません。

教育費の総額のうち、前もって積み立てて用意するのは大学のぶんだけこれから先の教育費の総額(例:970万円)その年の家計から(488万円)積み立てて用意(481万円)小学校・中学校・高校毎年ならして出ていく大学の4年間短い期間に大きく出ていく積立の目標にするのは、総額ではなく右側
小学3年生・すべて公立・国立大学に自宅から通う場合の例です。総額970万円のうち、積立で用意するのは大学の481万円で、残りはその年の家計から払う前提です。金額は全国平均から出した概算で、進路によって大きく変わります。
マネック案内役):総額が大きいこと自体は、じつはあまり怖くないんだ。怖いのは出ていく時期が集中しているところだよ。

教育費は、ならして出ていかない

小学校から高校までの費用は、年によって大きくは変わりません。公立なら年40万円から60万円ほどで、 毎年ほぼ同じ額が続きます。給与から毎月払っている支出に近い性質で、前もって貯めておかないと払えない、という種類の費用ではありません

ところが大学に入る年から、金額の桁が変わります。国立で自宅から通う場合でも年120万円ほど、 私立で家を借りれば年270万円近くになります。これが4年続きます。

教育費は毎年同じではなく、大学に入る年から急に上がる1年あたりの教育費小4中1高1大1年37万円ほどで続いたあと、大学で年120万円に跳ね上がる間に合わせる先は「総額」ではなく、この跳ね上がる年
すべて公立・国立大学に自宅から通う場合の、1年あたりの教育費です。棒の高さが年額に比例します。総額を残り月数で割る考え方だと、右端の高い年に間に合っているかが分かりません。金額は全国平均です。

この形を見ると、備えるべき場所がはっきりします。左側の低い棒は、その年の家計から払えます。 右側の高い棒は、その年の収入だけでは払いきれないことが多い。だから前もって用意しておく必要があるのは、右側のほうだけです。

もちろん、小中高の費用をその年の家計から払えない家計もあります。 その場合は積み立てる範囲を広げることになりますが、それは「範囲を選んだ結果」であって、 最初から全部を積立の対象にする話ではありません。

どこから先を積み立てて用意するか

ここを決めないまま金額を出すと、必要額は一気に変わります。 同じ子ども・同じ進路でも、積立で用意する範囲を広げれば広げるほど、毎月の必要額は上がります。

積み立てる範囲用意する額毎月の積立額
大学・専門学校だけ481万円月30,900円
高校以降660万円月42,400円
これから先の教育費すべて970万円月59,800円

小学3年生・すべて公立・国立大学に自宅から通う場合の例です。 範囲を「大学だけ」から「すべて」に広げると、必要な毎月の額は2倍近くになります。金額が変わったのではなく、 その年の家計から払う前提だったものを、前もって貯める側に移しただけです。

範囲を「すべて」にすると、今年度ぶんの費用も積立の対象に入ります。 ただし今年度ぶんは年度のはじめに出ていくので、これから積み立てても間に合いません。 いま手元にある教育資金でまかなうか、その年の家計から払うことになります。
マネック案内役):どちらが正しいという話じゃないよ。ただ、この選択をしないまま 「教育費はいくら貯めるべきか」を考えると、いちばん大きい数字が出てくることになるね。

決め方の目安はひとつです。その年の家計から払える費用は、積立の対象にしない。 いま小学校の費用を毎月の収入から払えているなら、中学校の費用も同じように払える見込みが立ちます。 積み立てておかないと払えないのは、収入の何倍もの額が一度に出ていく年です。

総額を月数で割ると、何が抜けるか

用意する額が決まったあと、次は毎月いくら積むかです。ここで総額を残り月数で割る方法を使うと、 もうひとつ抜けが出ます。

(誤)毎月の積立額 = 用意する額 ÷ 残りの月数

この式は、最後の1円まで使い切る形でちょうど足りる額を出します。 つまりいちばん最後の時点でだけ帳尻が合う計算です。 途中で足りているかどうかは、この式のどこにも出てきません。

総額を月数で割る方法では、大学に入る年に足りているかが分からない総額 ÷ 残り月数いつ足りなくなるかは出てこない月ごとに残高を進めるどの時点でも0を下回らない最小の額教育費は年度のはじめにまとめて出ていくだから「その年までに貯まっているか」で決まる割り算の額でも総額は足りるが、入学の年には間に合わないことがある
割り算は最後の1円まで使い切る前提の数字で、途中で足りるかどうかを見ていません。教育費は出ていく時期がそろっていないため、時点ごとに残高が尽きないかを確かめる必要があります。

教育費は年度のはじめにまとめて出ていきます。大学に入る年には、その年のぶんが必要になります。 割り算で出した額を積み立てていると、総額としては足りていても、 入学の年には貯まっていない、という状態が起こりえます。

足りなくなったときに残っている手段は、借りるか、進路を変えるかです。 貸与型の奨学金は教育費を減らすものではなく、卒業後の返済に置き換えるものです。 そこに追い込まれないための計算なので、時点で見る必要があります。

正しくは、月ごとに残高を進めて、どの時点でも0を下回らない最小の額を逆算します。 手で計算するのは大変ですが、教育費の診断では学年と進路を入れるだけでこの形で出します。

きょうだいがいると、総額より山が効く

子どもが2人いる場合、総額はおおよそ2倍になります。ただ、家計に効いてくるのは総額ではなく、同じ年に2人が在学する年のほうです。その年の支出は、単純な足し算になります。

たとえば中学3年生と小学5年生のきょうだいがいると、下の子が大学に入る年に、 上の子はまだ大学在学中という年が出てきます。その年だけ、大学の費用が2人ぶん必要になります。 総額を人数で割った平均で見ていると、この山は見えません。

年齢が離れていれば重なりは小さくなり、近ければ大きくなります。 どちらが有利ということではなく、重なる年がいつで、その年にいくら要るかを 先に知っておくかどうかの違いです。重なる年が分かっていれば、そこに向けて貯める目標が1つに決まります。

マネック案内役):「1人あたり1,000万円だから2人で2,000万円」と考えると、いちばん重い1年が見えないままになるよ。 家計が詰まるのは総額じゃなくて、その年なんだ。

積立額を決める前に確かめること

必要額は、支援制度の対象になるかどうかで下がります。 積立額を決めてから制度を調べるのではなく、順番は逆のほうが無駄がありません。

  • 児童手当。受け取った分を教育資金に回している家庭では、そのぶん積立額が下がります。
  • 高校生等への修学支援。所得の条件を満たせば、授業料の負担が変わります。
  • 高等教育の修学支援新制度。授業料等の減免と給付型奨学金があり、いちばん重い大学の費用に効きます。

それぞれの対象と条件は児童手当と修学支援のページにまとめています。児童手当だけでも、1人あたり234万円ほどになります。

いずれも所得や世帯の条件で決まり、条件は改正で動きます。 ToMiの試算はこれらを反映していないので、対象になれば、出した必要額より小さくて済みます。 進学の年の条件で確かめてください。

もうひとつ、逆方向の抜けもあります。入学金・受験料・引っ越しの費用は、 公表されている年額の平均には十分に含まれていません。これらは入学の年に一度だけ出ていきます。

早く始めるほど、毎月の額は下がる

必要な積立額を決めるもう1つの要素が、残りの年数です。同じ金額を用意するのでも、 期間が長ければ毎月の額は小さくなります。当たり前のようですが、効き方は思ったより大きくなります。

いまの学年大学まで必要な毎月の積立額
小学1年12年月26,800円
小学3年10年月30,900円
中学1年6年月44,600円
高校1年3年月66,900円

すべて公立・国立大学に自宅から通う場合の例です。用意する額はどれも同じ481万円で、 変わっているのは残りの年数だけです。小学1年から始めれば月2万7千円ほど、 高校1年からだと月6万7千円。残りの期間が4分の1になると、毎月の額は2.5倍になります。

ここで言いたいのは「早く始めなさい」ということではありません。いま何歳かによって、現実的に取れる手が違うということです。 残りの期間が短い場合、毎月の額を上げるより、進路の前提か積立の範囲を見直すほうが早いことがあります。

数年積んでから止めると、必要額はそこから急に上がります。 はじめから続けられる額に収まるように、進路か範囲のほうを合わせるほうが確実です。

順番を決めてから、金額を出す

ここまでを順番にすると、次のようになります。

  • 教育資金を、生活費と別の口座に分ける。分けていないと、積んだつもりの額が日々の支出に流れます。
  • どこから先を積立で用意するかを決める。ここで必要額が大きく変わります。
  • 出ていく時期ごとに足りるかを見て、毎月の額を逆算する。総額を月数で割らない。
  • 支援制度の対象になるかを、進学の年の条件で確かめる。対象なら必要額が下がります。

金額から入らないのは、金額だけを先に出しても動かせる場所が分からないためです。 「月8万円必要です」と言われて続けられないとき、次に何をすればよいのかが出てきません。 範囲と進路のどちらを動かせるかが分かっていれば、そこから戻れます。

具体的な金額は教育費の診断で出せます。総額と、積み立てて用意する額を分けたうえで、 いつ・いくら足りなくなるかまで出します。

よくある質問

教育費は1人あたり1,000万円かかるというのは本当ですか?
幼稚園から大学まで、どの進路をとるかで数百万円から2,000万円以上まで変わります。ただし、それは18年から22年かけて出ていく総額で、前もって貯めておく額ではありません。
教育費は毎月いくら積み立てればよいですか?
総額を残り月数で割っても出ません。教育費は大学に入る年から急に上がるため、その時点までに用意できているかで決まります。出ていく時期ごとに残高が尽きないかを確かめて逆算します。
小学校や中学校の費用も積み立てておくべきですか?
毎年ほぼ同じ額が出ていくので、その年の家計から払えるなら積立の対象にしなくて構いません。積立の範囲を広げるほど必要な毎月の額は増えるので、どこから先を積み立てるかを先に決めます。

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