老後資金と教育資金は、性質が違う
どちらも「将来のためのお金」ですが、決定的に違うところがあります。使い始める時期を、自分でずらせるかどうかです。
この違いは、金額の大きさとは関係ありません。1,000万円の老後資金と500万円の教育資金なら、 金額としては老後資金のほうが大きい。それでも、失敗したときに取り返しがつくかどうかでは 教育資金のほうが厳しい条件に置かれます。
老後資金は、値下がりした年に取り崩す額を減らすという選択ができます。 働く期間を延ばす、支出を抑える、受け取り開始を遅らせる。どれも回復を待つための手段です。
もう少し細かく言うと、老後資金にあるのは「使う額を減らす」「使い始めを遅らせる」 「働く期間を延ばす」という3つの逃げ道です。どれも、結果が出るまでの時間を伸ばす手段です。
教育資金にはそれがありません。大学の入学は、相場が戻るまで待ってくれません。 値下がりした年に入学が来れば、下がった価格で売って払うことになります。
利回りを置くと、必要額は小さく出る
積立の計算に想定利回りを入れると、必要な毎月の額は下がります。 同じ条件で比べると、下がり方はこのくらいです。
| 想定利回り | 必要な毎月の積立額 |
|---|---|
| 年0% | 月30,900円 |
| 年1% | 月29,400円 |
| 年3% | 月26,500円 |
小学3年生・すべて公立・国立大学に自宅から通う場合の例です。 年3%を置くと月4,400円下がります。ただしこれはその利回りで実際に運用できた場合の話で、置いた数字は仮定にすぎません。
ToMiの試算で想定利回りの既定を0%にしているのは、この理由からです。 利回りを入れた場合も、0%のときの額を必ず併記します。
もうひとつ、表を見て気づくことがあります。利回りを3%にしても、下がるのは月4,400円です。思ったより小さいと感じるかもしれません。 期間が10年ほどだと、複利が効く時間がそれほど長くないためです。
期間が短いほど、利回りで縮められる幅は小さくなります。 そして期間が短いときほど、値下がりから取り戻す時間も残っていません。効果は小さく、危険は大きいという組み合わせになるので、 進学が近いほど運用に頼る理由は薄くなります。
使う時期が近づいたら、置き場所を変える
使うまで10年以上ある教育資金と、来年使う教育資金では、同じ置き場所が適切とは限りません。 違うのは、値下がりしたときに取り戻す時間が残っているかです。
「何年前に移すのが正しい」という公的な基準はありません。 要点は年数そのものではなく、いつ移すかをあらかじめ決めておくことにあります。
決めていないと、価格が下がった年に「もう少し待とう」と判断することになります。 そして待っているうちに入学の年が来ます。あらかじめ時期を決めておけば、 その判断をしなくて済みます。
とくに用意しておきたいのが、入学の年の一時金です。入学金と、私立なら手続きの締切までに 払う額は、合格発表からの短い期間に現金で必要になります。 この分だけは、受験の年より前に現金にしておくほうが安全です。
置き場所を決める3つの条件
具体的な商品名の前に、どういう条件で選ぶのかを決めておくと迷いません。 教育資金の場合、見るところは3つです。
- 使う時期に、必要な額がそこにあるか。値動きがあると、その年の価格で決まってしまいます。
- 必要になったときに引き出せるか。満期や解約の条件で縛られていると、時期がずれたときに動かせません。
- 途中でやめたときに、それまで積んだ分がそのまま残るか。中途解約で元本を割る仕組みかどうかです。
この3つのどれにも、利回りは入っていません。利回りで選ぶと、上の3つのどれかを手放すことになるためです。 増やすことが目的のお金なら利回りで選んでよいのですが、教育資金は 「その時期に、その額があること」が目的のお金です。
使うまで10年以上あるうちは、3つめの条件を満たしたうえで値動きのある置き場所を使う、 という選び方もできます。判断が分かれるのはそこで、使う時期が近づいてからは分かれません。
金額を決めるより先に、分ける
置き場所の話の前に、済ませておくことがあります。 教育資金を、生活費と別の口座に分けることです。
分けるのは、意志の強さの問題ではありません。見え方の問題です。 同じ口座にあるお金は、残高としてしか見えません。 教育費として残しているつもりの30万円も、画面に出るのは口座の合計額です。 月末に足りなければ、その30万円から使うことになります。
しかも、使ったことに気づきません。口座から30万円が減っても、 それが教育費のぶんだったのか生活費のぶんだったのかは、あとから分けられないためです。足りなくなったことに気づくのが、必要になった年になります。
この状態では、必要な積立額を計算しても意味がありません。積み立てた額がそのまま残らないためです。 口座を分けるだけで、教育費として残った額がひと目で分かるようになります。
生活防衛資金を削らない
教育資金を厚くしようとして、手元の現金まで回してしまうことがあります。 これは結果として、教育資金を守れません。
- 急な出費が来たとき、取り崩す先が教育資金しかなくなります。
- 収入が止まったとき、生活のために教育資金を使うことになります。
- 値動きのある置き場所にしていた場合、下がった年に売ることになります。
順番としては、生活防衛資金が先です。教育費は10年以上先に使うお金で、 急な出費はいつ来るか分かりません。先に来るほうから備えるのが自然な並びです。
生活防衛資金は、教育資金を守るためにもあると考えてください。 手元に別の現金があれば、急な出費が来ても教育資金に手をつけずに済みます。 いくら残すかの考え方は生活防衛資金の記事にまとめています。
学資保険を、他と同じ土俵で見る
教育資金の話でよく出てくるのが学資保険です。ToMiは特定の商品を勧めませんが、他の置き場所と同じ3つの条件で見ればよいという点だけは言えます。
満期の時期を進学に合わせられること、途中で使いたくなっても動かしにくいことは、 見る人によって長所にも短所にもなります。 中途解約で払った額を下回る仕組みかどうかは、契約ごとに違います。
確かめ方は1つです。その契約の書面で、いつ・いくら受け取れて、途中でやめたらいくら戻るかを見る。「教育資金なら学資保険」という決め方ではなく、上の3つの条件に照らして判断してください。
順番のまとめ
教育資金の置き場所は、次の順番で決まります。
- 生活防衛資金を先に確保する。これを削って教育資金に回さない。
- 教育資金を、生活費と別の口座に分ける。分けるまで金額の話は成り立たない。
- 必要な積立額を、利回り0%でも出す。利回りを置く場合は両方を並べる。
- 使う時期が近い分を、値動きのない置き場所へ移す時期をあらかじめ決める。
この4つのうち、最初の2つは今日じゅうにできます。3つめは計算するだけです。 時間がかかるのは4つめだけで、しかもそれはいつやるかを決めておくことなので、いま決められます。
この順番で見ていくと、置き場所を決める前に済ませることのほうが多いのが分かります。 どの商品にするかは最後の話で、そこだけを先に考えると、たいてい前のどれかが抜けます。
必要な積立額と、いつ足りなくなるかは教育費の診断で出せます。利回りを置いた場合も、0%のときの額を必ず併記します。

