結論から
どちらを選ぶか、という質問は非常によく見かけます。 けれど比べる前に、この2つがどれだけ重なっているかを知っておくと、 迷い方が変わります。
この記事では、重なっている部分と違う部分を分けて見たうえで、 選び方の考え方を整理します。
6割は同じものを持っている
比べる前に、どれだけ重なっているかを確かめます。 ここを知ると、この問いの見え方が変わります。
まず押さえたいのは、この2つが対立するものではないという点です。 オルカンの中には、S&P500の銘柄がほぼそのまま入っています。
オルカンには数千社が含まれていますが、 その一社ずつが同じ重みを持っているわけではありません。 規模の大きい会社ほど比率が大きくなります。
全世界株式の国別の比率は、その国の株式市場の規模で決まります。 いま最も大きいのは米国で、全体の6割前後を占めます。 その中身の中心にあるのが、S&P500に入っている大きな会社です。
つまりオルカンを買うことは、その6割で米国株を買うことでもあります。 「米国に集中するのが不安だから全世界にした」という判断をしても、 資産の6割は米国に置かれています。
| S&P500 | オルカン | |
|---|---|---|
| 対象 | 米国の500社 | 先進国と新興国の数千社 |
| 米国の比率 | 100% | 6割前後 |
| 日本の比率 | 0% | 数% |
| 通貨 | 米ドル建て | 米ドル建て |
違うのは残りの4割
重なっている部分を確かめたので、次は違う部分を見ます。 ここに、この2つを分ける性質が集まっています。
違いは1か所に集まっています。米国以外をどう扱うか、という点です。 そこにどんな性質があるのかを順に見ます。
では何が違うのか。オルカンには、米国以外の国が入っています。 日本、英国、その他の先進国、そして新興国です。
比率としては4割ですが、含まれる会社の数では大半を占めます。 小さな会社が数多く入っているためです。 数で見るか、金額で見るかで、印象がかなり変わります。
この部分があることで、米国が停滞した期間に、ほかの国の成長を受け取れます。逆に、米国だけが伸びる期間には、その分だけ足を引っぱられます。
新興国が入っている点も違いです。 成長の余地が大きいと言われる一方で、値動きは荒く、 政治や制度の影響も受けやすい市場です。 比率としては大きくありませんが、性質の違うものが混ざっています。
過去10年は後者でした。米国が強かったので、 オルカンの成績はS&P500に届きませんでした。 この結果を見て「オルカンは劣っている」と読むのは、 期間の取り方に引きずられた読み方です。
比較の記事の多くは、直近の期間を使っています。 手元にあるデータをそのまま使っているだけのことが多く、 意図的に選んでいるわけではありませんが、結論は期間に左右されます。
期間を変えれば、結論も変わります。 米国が停滞し、他の国が伸びた期間もありました。 そのときはオルカンのほうが良い成績になっています。
もうひとつの違いは、比率が自動で変わることです。 もし米国以外の市場が大きくなれば、オルカンの中の比率も自然に上がります。 S&P500を選んでいる場合は、そうなっても米国のままです。
過去の成績が近いのは偶然ではない
違いを見てきましたが、日々の値動きに目を移すと、 この2つはよく似ています。その理由も、これまでの話から説明がつきます。
この2つの値動きは、日々かなり似ています。 米国株が大きく下げた日は、オルカンも下げます。 6割が同じものなのだから、当然のことです。
相関という言葉で語られることもありますが、 仕組みを見れば当たり前の話です。 同じ銘柄を6割共有しているものが、別々に動くはずがありません。
「分散しているから違う動きをするはず」と期待していると、 下げた局面で「分散の意味がなかった」と感じることになります。 けれどそもそも大部分が同じなので、違う動きにはなりません。
違う動きを期待するなら、株式以外の資産を持つ必要があります。 債券や現金は、株式が下げる局面で違う動きをすることがあります。 株式の中で分けても、株式であることは変わりません。
為替の影響についても同じです。 どちらも米ドル建てで計算されているので、 円高になれば両方とも円で見た資産が目減りします。
円高になれば、どちらを選んでいても同じように目減りします。 通貨の面では、この2つに差はほとんどありません。
国を分けることと、通貨を分けることは別の話です。 オルカンは数十か国に分かれていますが、 その多くは米ドルや、米ドルと連動しやすい通貨の経済圏にあります。 国の数ほどには、通貨は分かれていません。
選び方の考え方
ここまでで、違いがどこにあるかは見えました。 では実際に選ぶとき、何を基準にすればよいのかを整理します。
ここまでをふまえると、選ぶときに問うべきことは1つです。米国が今後も世界の中心であり続けると考えるかどうか。
- そう考えるなら、S&P500に集中する選択に理由がある
- 分からないと考えるなら、オルカンのほうが自然
- どちらとも言えないなら、判断を要らなくするほうを選ぶ
この問いは、投資の専門家でも意見が分かれるものです。 米国の強さは続くという見方も、 いつかは他の国に移るという見方も、どちらにも根拠があります。
3つ目が現実的な答えになることが多いはずです。 この問いに自信を持って答えられる人は、多くありません。 答えられないなら、答えなくてよい方法を選ぶという考え方です。
もうひとつの見方として、資産全体の中でどう置くかを考える方法もあります。 株式そのものにいくら置くかを先に決めれば、 その中身がどちらかという問題は、相対的に小さくなります。
なお、費用の差はほとんど気にしなくてよい水準になっています。 どちらの分類にも信託報酬の低い商品があり、 その差が結果を分けるほどではありません。
決められないまま何もしないでいるのが、いちばんもったいない状態です。 どちらを選んでも6割は同じものなのですから、 決めきれないことで止まるより、決めて始めるほうが結果につながります。
両方持つ意味はあるか
最後によくある質問に触れておきます。 決めきれないときに、両方を買うという選択です。
両方を買っている人もいます。 意味があるかどうかは、何を狙っているかによります。
両方を持つと、米国の比率が上がります。 オルカンだけなら6割だった米国が、 S&P500を足した分だけ高くなります。これは分散ではなく、米国への傾斜です。
たとえば同じ金額ずつ両方を買った場合、 米国の比率は8割前後になります。 全世界に分散したつもりが、S&P500だけを買うのに近い配分です。
それを分かったうえで「米国を多めにしたい」ならば、 意図した配分になっているので問題ありません。 分散のつもりで両方を買っているなら、逆のことをしています。
どちらも、自分の金額で過去の実績と下落を確かめられます。S&P500で試算するとオルカンで試算するを見比べると、同じ期間での差が数字で見えます。
