結論から
日本でも投資対象として広く知られるようになりました。 名前は聞いたことがあっても、 何をどう選んで計算した数字なのかまで知っている人は多くありません。
この記事では、この指数が何を表しているのか、 そして日本に住む人が投資対象として見るときに 何を知っておくとよいのかを整理します。
何を表している数字か
まず、対象と作り方を確かめます。 日経平均と比べると、どちらの点でも考え方が違います。
S&P500は、米国の代表的な500社を対象にした指数です。 算出しているのはS&Pダウ・ジョーンズ・インデックスという会社で、 米国の株式市場の様子を表す数字として広く使われています。
重みの決まり方は、時価総額です。 時価総額は「株価 × 発行済み株式数」で、会社の規模を表す数字です。 規模の大きい会社ほど、指数に与える影響が大きくなります。
日経平均が株価の高さで重みを決めるのに対して、 S&P500は会社の大きさで決めます。 この作り方のほうが、いまは主流です。 市場全体の動きを表すという目的には、こちらのほうが合っているためです。
| S&P500 | |
|---|---|
| 対象 | 米国の主要500社 |
| 算出する会社 | S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス |
| 重みの決まり方 | 時価総額(会社の規模) |
| 通貨 | 米ドル |
時価総額で重みを決める方法には、もうひとつ利点があります。 株価が動けば重みも自動で変わるので、 誰かが調整しなくても、市場の実態に追従します。 株価の平均を取る方法だと、株式分割のたびに調整が必要になります。
500社という数は、米国に上場している会社のすべてではありません。 米国市場にはもっと多くの会社がありますが、 時価総額の大きい会社を集めているため、市場全体の8割前後をカバーすると言われます。
選ばれ方に特徴がある
もうひとつ知っておきたいのが、500社の選ばれ方です。 単純に時価総額の上位500社が自動的に入るわけではありません。
委員会が選ぶ仕組みになっていて、 時価総額のほかに、収益が黒字であること、 株式の流動性が十分にあることなどの条件があります。人の判断が入る指数だという点は、覚えておく価値があります。
この条件のおかげで、極端に不安定な会社は入りにくくなっています。 一方で、条件を満たさないまま大きく成長している会社が、 しばらく入らないということも起こります。
この仕組みは、日本のTOPIXのように機械的に決まる指数とは違います。 基準を満たしていても入っていない会社があり、 その判断の理由が外から完全には見えません。 広く使われている指数ですが、中立な機械ではない、という点は知っておく価値があります。
入れ替えは随時行われます。 条件に合わなくなった会社が外れ、新しい会社が入ります。 長期の実績を見るときには、この点も効いてきます。 10年前のS&P500と今のS&P500では、中身がかなり違います。
上位数社の影響が大きい
時価総額で重みが決まるということは、 大きな会社の影響が大きいということでもあります。 そしていまの米国市場では、上位の会社が非常に大きくなっています。
上位10社で指数全体の3割を超える年もあります。 500社に分散しているように見えて、実際には少数の会社に結果が左右されます。
分散の度合いを測る目安として、上位10社の比率を見る方法があります。 この比率が高いほど、少数の会社に結果が寄っていることになります。 500という数字だけを見て安心するより、この比率を見るほうが実態に近づきます。
しかも上位に並ぶ会社は、業種が偏りがちです。 過去10年は情報技術の分野の会社が上位を占めてきました。 その分野が伸びた期間は指数も伸び、 その分野が停滞すれば指数も停滞します。
これは指数の欠陥ではありません。 市場の実態を映しているだけです。 ただし「500社に分散されている」という理解のまま持つと、 実際の集中の度合いを見誤ります。
これは時価総額で重みを決める方法の必然でもあります。 市場で大きくなった会社の影響が大きくなるのは、その方法を選んだ結果です。 伸びた会社の比率が上がっていくので、 好調な分野があると、その分野の比率が自然に高まっていきます。
日本に住む人から見ると
ここからは、日本で暮らす人が投資対象として見るときの話です。 米国の人が見るのとは、事情がひとつ違います。
S&P500は米ドル建てで計算されています。 日本に住み、日本円で買い物をする人にとって意味があるのは、 円に直したあとの金額です。
つまり、指数の動きに加えて為替の動きが乗ります。指数が上がっていても、円高が進めば円で見た資産は減ることがあります。 逆に円安が進めば、指数の上がり方以上に増えます。
直近10年の円換算の実績には、円安による上乗せが入っています。 これは実際に起きたことですが、指数が生んだものではありません。 為替が逆に動けば、逆に効きます。
もうひとつ、1国に集中している点も見ておく必要があります。 米国の市場は世界の6割前後を占めるため、 「これだけで十分に分散されている」と説明されることもあります。
実際、この比率は過去に何度も変わっています。 一時は日本の市場が世界の相当な割合を占めていた時期もありました。 いまの構成比は、いまの時点でのものでしかありません。
ただし、いま6割を占めていることは、 これからも占め続ける理由にはなりません。 国の構成比は時間とともに変わってきました。1国を選ぶという判断をしていることは、意識しておいたほうがよいところです。
この指数を見るときは
最後に、S&P500の数字を見るときの注意をまとめます。 どれも知っていれば読み違えずに済むものです。
この指数は情報が多く、実績も手に入りやすいので、 読み方さえ決めておけば扱いやすい対象です。
- その数字がドル建てか円換算かを確かめる
- 配当を含むかを確かめる。配当込みの指数も公開されている
- 上位数社の影響が大きいことを前提に読む
1つ目がいちばん効きます。 「S&P500は年◯%」という話がドルの話なのか円の話なのかで、 日本に住む人にとっての意味はまったく変わります。
2つ目については、S&P500には配当込みの指数が公開されているという利点があります。 日経平均のように、配当込みが手に入らないという問題がありません。 実績を見るときは、配当込みの数字を探してください。
3つ目は、大きく動いた日のニュースを読むときに効きます。 上位数社の決算で指数全体が動くことがあり、 そのときは500社の多くが動いていないこともあります。
自分の金額で確かめられます。S&P500に投資していたら今いくらかを試算すると、円換算した金額と、その期間にいちばん沈んだところが並びます。
