指数・インデックス

S&P500に投資すると為替の影響を受ける?

円で買い付けていても、その裏では米ドルに換えて米国株を買っています。

読了めやす8更新11回読まれています

この記事の要点

  • S&P500は米ドル建てなので、円で見た成績は「指数の動き × 為替の動き」になります。
  • 指数が2倍で1ドルが100円から150円になれば、円では3倍です。逆に円高なら増え方は小さくなります。
  • 売っていなくても影響します。証券会社の画面に出る評価額は、その日の為替で円に直したものです。
  • 直近10年の円換算の実績には、円安による上乗せが入っています。米国企業が生んだものではありません。
  • 円で見た倍率をドルで見た倍率で割れば、為替の寄与だけを取り出せます。
  • 為替ヘッジは影響を抑えられますが、2つの通貨の金利差にあたる費用がかかります。

結論から

受けます。S&P500は米ドル建てなので、円で見た成績は「指数の動き × 為替の動き」になります。 指数が上がっていても、円高が進めば円では減ることがあります。

日本の証券会社で買っていても、投資先が米国株である以上、 為替の影響からは逃れられません。 円で買い付けていても、その裏では米ドルに換えて米国株を買っています。

この記事では、為替がどう効いてくるのか、 直近の実績にそれがどれだけ含まれているのか、 そしてどう考えればよいのかを整理します。

どう効いてくるのか

まず、効き方の形を確かめます。 足し算ではなく掛け算になるところが、この話の要点です。

外貨建ての資産は、外貨で見た値段と、 その外貨の円に対する値段という、2つの値段を同時に持っています。 円で見るとは、この2つを掛け合わせることです。

円での評価額 = ドル建ての評価額 × そのときの為替レート

掛け算なので、どちらか一方が大きく動けば、 もう一方が小さく動いても結果は大きく変わります。

外貨建ての資産を円で見るときは、指数の動きと為替の動きが掛け算になる指数が上がる現地通貨で+×円安になる円の額が増える=円で見た資産両方が乗る円高のときは、指数が上がっても円では減ることがある
どちらも上向きなら、円で見た増え方は指数の増え方より大きくなります。逆に円高が進めば、指数が上がっていても円では減ることがあります。指数のリターンと、日本に住む人が受け取るリターンは別のものです。

指数が10年で2倍になり、そのあいだに1ドルが100円から150円になったとします。 このとき円で見た資産は、2 × 1.5 で3倍です。 ドルで見ていた人は「2倍になった」と思いますが、 日本に住む人が受け取るのは3倍のほうです。

逆も同じです。指数が2倍でも、1ドルが150円から100円になっていれば、 2 × 0.67 で約1.3倍にしかなりません。指数の成績はよくても、円での成績はそれほどでもないということが起こります。

組み合わせは4通りあります。 このうち2つは、指数の動きと為替の動きが逆を向くので、 結果がどちらに転ぶかは動いた幅の大きさで決まります。

指数の動き為替の動き円で見ると
上がる円安大きく増える
上がる円高増え方が小さくなる。減ることもある
下がる円安減り方が小さくなる
下がる円高大きく減る

どちらの向きにも効くという点が大事です。 為替は増やす方向にも減らす方向にも働きます。 直近が増やす方向だったからといって、そういう性質のものではありません。

この計算は、実際に売って円に戻すかどうかとは関係ありません。 持ったままでも、円で評価すればその時点の為替が反映されます。 証券会社の画面に出る評価額も、その日の為替で円に直したものです。

マネック案内役):「売っていないから為替は関係ない」と思いがちだけど、 画面に出ている評価額はもう為替が入った数字なんだ。 増えた理由が株なのか円安なのかは、そこからは分からないんだよ。

直近の実績には円安が乗っている

ここからは、実際に起きたことを見ます。 直近の実績を読むときに、この点を知らないと、 指数の実力を過大に見積もることになります。

ここ10年ほどは円安が進みました。 このため、S&P500を円で見た成績は、 指数そのものの成績よりかなり大きく出ています。

これは実際に起きたことなので、その期間に持っていた人は本当に恩恵を受けています。 ただしこの上乗せは、米国企業が生んだものではありません。為替が動いたから乗ったもので、逆に動けば逆に効きます。

しかも、この上乗せは指数の実力とは無関係に乗ってきます。 米国企業がどれだけ利益を出したかとは別のところで、 日本にいる人の資産額が増えていた、ということです。

どこから数えるかで、同じ指数でも答えが変わる好調な時期から数える大きく増えた高値の直前から数えるほとんど増えない暴落の直後から数えるとても大きく増えた
始まりの月を変えるだけで、同じ指数から別の結論が出ます。過去のリターンを読むときは、いつからいつまでを数えたのかを必ず見てください。都合のよい期間を選べば、都合のよい数字が出ます。

過去の円換算の実績を見て「この調子で増える」と考えると、 円安が続く前提を無意識に置いていることになります。 為替の先行きは、株価と同じかそれ以上に読めません。

為替がどちらに動くかを当てられる人はいません。 専門にしている人でも外します。 だから「これから円高になる」と決めつける必要もありませんが、 「円安が続く」と決めつけるのも同じことです。

いまが歴史的な円安の水準であるなら、 これから円高に戻る局面では、指数が上がっていても円での資産は増えにくくなります。 過去の円換算リターンをそのまま将来に伸ばすのは、二重に楽観的です。

指数の寄与と為替の寄与を分ける

円安が乗っていると分かったら、次はどれだけ乗っていたのかを見ます。 これは自分で計算できます。

自分の成績のうち、どれだけが投資先の伸びで、 どれだけが円安によるものかは、分けて計算できます。

やり方は単純な割り算です。証券会社の画面には円の評価額しか出ないことが多いので、 自分で計算するしかありませんが、手順は難しくありません。

円で見た倍率を、ドルで見た倍率で割れば、残りが為替の寄与です。 この作業をすると、直近10年の円換算の成績のうち、 相当な部分が為替によるものだったことが見えてきます。

必要なのは3つの数字だけです。

  • ドルで見た倍率 — 投資先が伸びたぶん
  • 為替の倍率 — 円が安くなったぶん
  • その掛け算が、円で見た倍率

ドルでの倍率は、指数の値をそのまま調べれば分かります。 円での倍率は、自分の買値と現在の評価額から出ます。 この2つがそろえば、残りが為替の寄与です。

たとえば円で3倍になっていたとして、ドルでは2倍だったなら、 残りの1.5倍分が為替の寄与です。 この場合、増えた金額のうち相当な部分は円安が作ったことになります。

分けて見る意味は、期待の置き方が変わることです。 円安が結果の相当部分を作っていたのなら、 それが続かない場合には、これまでと同じようには増えません。

もうひとつ、資産全体を見るときにも効いてきます。 外国株、外貨預金、外貨建ての保険などは、 別々の商品に見えても、円高になれば同じ方向に効きます。1つずつ見ていると分散しているように見えて、 通貨の面ではまとまっていることがあります。

為替ヘッジという選択肢

ここまで読んで、為替の影響を避けたいと思う人もいるはずです。 そのための仕組みが用意されているので、性質を見ておきます。

為替の影響を抑える仕組みとして、為替ヘッジがあります。 ヘッジありの投資信託を選べば、円高で目減りする影響を小さくできます。

ただし、ただではありません。 ヘッジには2つの通貨の金利差にあたる費用がかかります。 日本の金利が米国より低いあいだは、その差の分だけ成績が削られます。

性質を並べると、どちらにも良い面と悪い面があることが分かります。 円高で守られる代わりに、円安の上乗せも入りません。

円高のとき円安のとき費用
ヘッジなし目減りする上乗せされるかからない
ヘッジあり影響を抑えられる上乗せも入らない金利差の分がかかる

この費用は目に見えにくいところが厄介です。 信託報酬のように率が示されるわけではなく、 成績の差として後から現れます。

もうひとつ、ヘッジは為替の影響を完全に消すものではありません。 仕組み上わずかなずれが残り、金利差が大きく動けば費用も動きます。 「ヘッジをしておけば円建てと同じ」と考えると、想定と違う動きに戸惑います。

どちらが有利かは、これからの為替次第なので事前には決まりません。 分かるのは「ヘッジなしは為替の影響を受ける」 「ヘッジありは費用がかかる」という性質だけです。

どう考えればよいか

為替が読めない以上、当てにいく前提では決められません。 自分の側から決める方法を取ります。

  • 円で見た成績が、指数の成績と一致しないことを前提にする
  • 資産全体のうち、外貨建てがどれだけあるかを把握する
  • 円高が来ても持ち続けられる金額に収めておく

1つ目と2つ目は、把握するだけで判断が変わります。 「S&P500に投資している」と思っていたものが、 実は「米国株と米ドルの両方に投資している」ことに気づくと、 資産全体の見え方が変わってきます。

為替が読めないことは、投資先が読めないことと同じです。 読めないものが2つある以上、当てにいくより、 外れても困らない状態を作るほうが確かです。

3つ目が実務的です。過去にどれだけ下がったかを自分の金額に当てはめれば、 耐えられるかどうかが金額で分かります。 円換算での下落には、指数の下げと円高の両方が入っています。

自分の金額で確かめられます。円換算での実績と下落を試算すると、同じ月の為替で直した金額が出ます。

為替の影響は受けます。円で見た成績は指数の動きと為替の動きの掛け算です。 指数のリターンと、日本に住む人が受け取るリターンは別のものとして読んでください。

よくある質問

円で買っているのに、なぜ為替の影響を受けるのですか?
円で買い付けていても、その裏では米ドルに換えて米国株を買っているためです。投資先が米国株である以上、その価値は米ドルで決まります。それを円で評価するときに、そのときの為替が掛かります。
売らなければ為替は関係ありませんか?
関係します。持ったままでも、円で評価すればその時点の為替が反映されます。証券会社の画面に出ている評価額も、その日の為替で円に直したものです。増えた理由が株なのか円安なのかは、その数字からは分かりません。
為替ヘッジをしたほうがよいですか?
これからの為替次第なので事前には決まりません。分かるのは性質だけです。ヘッジなしは為替の影響をそのまま受け、ヘッジありは影響を抑えられるかわりに2つの通貨の金利差にあたる費用がかかります。日本の金利が米国より低いあいだは、その差の分だけ成績が削られます。

参照した一次情報

あわせて読みたい

この記事は商品の仕組みを説明するものであり、 特定の商品の購入を勧めるものではありません。 個別の投資助言でもありません。制度や条件は変わることがあるため、実際のご判断にあたっては金融庁のNISA・つみたて投資枠のページや、お取引先の金融機関で最新の条件をご確認ください。