結論から
「オルカン」は「オール・カントリー」の略で、 全世界株式に連動する投資信託の呼び名として使われています。 特定の商品名から広まった言い方で、指数そのものの名前ではありません。
この記事では、それが実際には何を指しているのか、 中身がどうなっているのか、 そして「世界に分散している」という言葉をどう受け取ればよいのかを整理します。
何を指しているのか
まず、言葉の指すものをはっきりさせます。 呼び名が広まった一方で、何を指しているのかは人によって少し違います。
もとになっているのは、MSCI ACWI という指数です。 先進国と新興国を合わせた、世界の株式市場を対象にした指数で、 数千の会社が含まれています。
MSCI という会社が算出している指数で、 世界の機関投資家が基準として広く使っているものです。 同じ系統の指数には、新興国を含まないものなど、いくつかの種類があります。
ここでも、指数そのものは買えません。 買えるのは、その指数に連動するように作られた投資信託やETFです。「オルカン」と呼ばれているのは、その商品のほうです。
同じ指数に連動する商品は複数あり、 運用会社によって信託報酬も少しずつ違います。 「オルカンを買う」と言っても、どの商品を買うかまでは決まっていません。
| 全世界株式(オルカン) | |
|---|---|
| もとになる指数 | MSCI ACWI など |
| 対象 | 先進国と新興国の株式 |
| 含まれる会社の数 | 数千社 |
| 通貨 | 指数は米ドル建て |
呼び名が広まったのは、ある運用会社の商品名に「オール・カントリー」が 含まれていたためです。そこから全世界株式の商品全般を指す言葉として使われるようになりました。 このため、人によって少しずつ指しているものが違うことがあります。
対象になる国の数は数十か国にのぼります。 日本も、その中の1つとして含まれています。 日本株の投資信託を別に持っている場合、その分だけ日本の比率が上がります。
中身は米国が6割前後
対象と作りが分かったところで、中身の配分を見ます。 ここが、この商品を理解するうえでいちばん大事な部分です。
ここがいちばん誤解されやすいところです。 「全世界」という名前から、世界の国々に均等に配られている印象を受けますが、 実際は違います。
国ごとの比率は、その国の株式市場の規模で決まります。 市場が大きい国ほど、比率も大きくなります。 そしていま最も大きいのは米国で、全体の6割前後を占めます。
この比率は、日々の株価の動きによっても少しずつ変わります。 米国株が伸びれば米国の比率が上がり、他の国が伸びればその国が上がります。
残りを、日本、英国、その他の先進国、新興国で分け合う形になります。 日本の比率は数%程度で、それほど大きくありません。
この配分のしかたには理由があります。 市場の規模で配るということは、世界中の投資家が実際に持っている割合に近づけるということです。 特定の国を厚くしたり薄くしたりする判断を、誰もしていません。
この結果、オルカンの値動きはS&P500とかなり近くなります。 米国株が大きく下げた日は、オルカンも下げます。 「分散しているから米国株とは違う動きをする」とは言えません。
なお、この比率は固定ではありません。 市場の規模が変われば、比率も自動で変わります。 誰かが判断して配り直すのではなく、市場の実態にそのまま追従します。 これは自動で調整されるという利点でもあります。
なぜ選ばれるのか
偏りがあると聞くと選ぶ理由が薄れそうですが、そうではありません。 この商品が選ばれるのには、配分とは別のところに理由があります。
比率の偏りがあるにもかかわらず、この商品が選ばれるのには理由があります。 突き詰めると、どの国が伸びるかを当てにいかなくてよいという一点です。
誰にも分からないことを、分からないまま扱える方法だからです。
米国が伸びるかどうかは分かりません。 新興国が伸びるかどうかも分かりません。 けれど全部を持っていれば、どこが伸びてもその分は受け取れます。
さらに、比率が自動で変わるという性質も効いてきます。 もし将来、米国以外の国の市場が大きくなれば、 その国の比率も自然に上がります。 自分で判断して乗り換える必要がありません。
- 国を選ぶ判断が要らない
- 比率が市場の実態に自動で追従する
- 1本で数千社を持てるので、手間が少ない
この「当てにいかなくてよい」という性質は、 時間が経つほど価値を持ちます。 20年、30年という期間では、どの国が中心になっているかは変わりうるからです。
もうひとつ、判断の回数が減ることも利点です。 国別に複数の商品を持つと、比率が崩れたときに調整したくなります。 1本にまとめておけば、その判断自体が発生しません。
分散でも消えないもの
利点を挙げてきましたが、解決しない部分もあります。 ここを知らずに始めると、下げた局面で想定と違うと感じることになります。
第一に、世界の株がまとめて下がる年には、まとめて下がります。国の分散で薄められるのは、特定の国が悪くなったときの影響だけです。 景気、金利、戦争、感染症のように市場全体に効く出来事は、薄められません。
2020年の急落や、2008年の金融危機のような局面では、 先進国も新興国もまとめて下げました。 国を分けていても、下がるときは同時に下がります。
第二に、米ドル建てで計算されているため、 日本に住む人が見ると為替の影響が乗ります。 円高が進めば、指数が上がっていても円での資産は目減りします。
第三に、これは株式だけの分散です。 債券や現金は含まれていません。 株式という資産そのものが持つ値動きの荒さは、そのまま残ります。
この3つは、分散という言葉で解決したつもりになりやすいところです。 分散は万能な安全装置ではなく、 「特定のものを選び間違える危険」を減らす道具にすぎません。 その道具で何が減って何が残るのかを知っておくと、想定と違う動きにも慌てずに済みます。
見るときの注意
利点と限界の両方が分かったところで、 実際にこの商品の情報に触れるときの読み方をまとめます。
最後に、この商品の実績や説明を見るときの注意をまとめます。
- 「全世界」でも中身は米国が6割前後であることを前提に読む
- その数字がドル建てか円換算かを確かめる
- 自分がすでに持っている資産との重なりを見る
1つ目は、下げた局面での受け止め方に効きます。 米国株が下げた日に自分の資産も同じだけ下げていても、それは想定どおりです。
3つ目は見落とされやすい点です。 米国株の投資信託を別に持っていれば、その分だけ米国の比率が上がります。 オルカンを持っているから分散できている、とは限りません。
2つ目も効きます。円換算の実績には為替の動きが乗っているので、 「オルカンは年◯%」という数字がドルの話か円の話かで、意味が変わります。
自分の金額で、過去の実績と下落を確かめられます。オルカンに投資していたら今いくらかを試算すると、円換算した金額と、その期間にいちばん沈んだところが並びます。
