結論から
「日経平均は10年で何倍になった」という話をよく見かけます。 その数字が配当を含んでいるかどうかで、結果はかなり変わります。 そして多くの場合、含んでいません。
この記事では、その差がどれくらいあるのか、 そして配当込みの数字をどう手に入れればよいのかを整理します。
ニュースの数字と実際の成績は違う
まず、なぜ2つの数字ができるのかを確かめます。 原因は指数の作り方にあり、意図的に低く見せているわけではありません。
日経平均は、225社の株価を平均した数字です。 株価の動きだけを追っているので、配当は入っていません。 これは日経平均に限った作りではなく、 ニュースで使われる指数の多くが同じです。市場の水準を伝えるのが目的だからです。
配当が支払われると、その分だけ株価は下がります。 株主には配当が入っているので損はしていませんが、株価だけを追う指数には、下がったところだけが記録されます。
つまり、配当を受け取っていた投資家の資産と、 指数が示す水準は、時間とともに離れていきます。 離れ方は下の図のようになります。
日本株の配当は、年に2%前後あることが多いです。 年2%は小さく感じますが、これが毎年積み重なると効いてきます。 10年で2割ほど、20年なら5割を超える差になることもあります。
この差は、期間が長くなるほど加速します。 最初の数年はほとんど気になりませんが、10年を超えたあたりから、 無視できない大きさになっていきます。
差が開くのは、受け取った配当で買い増した分が、 さらに配当を生むからです。利息が利息を生むのと同じ仕組みです。
配当込みの日経平均は手に入らない
では配当込みの数字を見ればよい、という話になりますが、 ここで日経平均に特有の事情が出てきます。
米国のS&P500には配当込みの指数が公開されていて、誰でも見られます。 しかし日経平均の配当込み指数は、無料では手に入りません。同じ「配当込みの実績を知りたい」という目的でも、 指数によって手に入りやすさがまるで違います。
指数は民間の会社が計算して公表しているもので、 どこまで自由に使えるかは指数ごとに違います。 日経平均の場合、配当込みの系列は一般に開かれた形では提供されていません。
| 指数 | 配当込みの入手 |
|---|---|
| S&P500 | 公開されている |
| 日経平均 | 無料では入手できない |
| MSCI ACWI | 指数値そのものが自由に使えない |
有料で提供されている場合もありますが、 個人が実績を確かめたいだけのために契約するようなものではありません。 無料で見られる範囲では、配当を含まない数字しか手に入らないのが実情です。
このため、日経平均の「実際の成績」を知りたいと思っても、 指数そのものからは分かりません。別の方法が要ります。
代わりに使えるもの
指数そのものが使えないなら、実際に売買されている商品の値を使います。 これは代用ですが、目的によっては指数より適していることもあります。
実務でよく使われるのは、日経225に連動するETFの、分配金を再投資した値です。
日経225に連動するETFは何本かあり、古いものは十数年の記録があります。 その値を使えば、指数が公開していない部分を補えます。
ETFは実際に売買されている商品なので、値段が公開されています。 分配金を再投資した場合の値も計算されていて、 これを使えば「持ち続けていたらいくらになったか」が分かります。
「持ち続けていたら」という前提での計算なので、 途中で売り買いした場合の結果とは違います。そこは指数と同じです。
考えようによっては、指数そのものより実態に近い数字です。 指数には費用がかかりませんが、実際に買える商品には信託報酬がかかります。 ETFの値なら、その費用を引いたあとの結果になっています。
この方法の良いところを整理すると、次の3つになります。 いずれも、指数そのものが使えないことを補うものです。
- 実際に売買されている値なので、手に入る
- 分配金の再投資が計算に入っている
- 信託報酬が引かれたあとの、受け取れた額に近い
何を使ったのかを書いておけば、読む人はそれを前提に判断できます。 書かずに数字だけを出すと、指数そのものの成績だと思われてしまいます。
代わりに使うときの注意
代用である以上、指数そのものとは違う点があります。 その違いを知らずに比べると、実態と違う結論が出ます。
注意点は2つです。どちらも、比べる相手が指数そのものであるときに効いてきます。
どちらも、代用であることから来る制約です。
1つ目は、費用が引かれていることです。 ETFには信託報酬がかかるので、指数そのものの成績より少し低く出ます。 S&P500の配当込み指数と横に並べると、日経の側だけ費用を引いた数字になります。 この差は商品の優劣ではなく、費用を引いたあとかどうかの違いです。
といっても、その差は年0.2%程度です。 比較の相手が費用のかからない指数だと知っていれば、読み違えません。
2つ目は、使えるのはそのETFが存在する期間だけということです。 ETFが設定される前の期間は計算できません。 20年前、30年前まで遡りたい場合には、この方法では足りないことがあります。
この2つを知ったうえで使うぶんには、実用上の問題はありません。 むしろ「実際に買えた商品で、実際に受け取れた額」という点では、 指数より現実に近い数字だとも言えます。
遡れる期間の制約は、長期の実績を語りたいときに効きます。 バブル期からの成績を配当込みで見たい、という場合には、この方法では届きません。
実績を読むときは
ここまでの話をふまえて、日経平均の実績を見かけたときに 何を確かめればよいかをまとめます。
確かめることは3つです。書かれていなければ、 その数字は比較の材料としては使えないと考えてください。
- 配当を含む数字か、含まない数字か
- 含むなら、何を使って計算したものか(指数か、ETFか)
- いつからいつまでの期間か
配当を含むかどうかで結果が2割から5割変わるのですから、 そこが書かれていない実績は、幅がありすぎて判断に使えません。 期間についても同じことが言えます。
この3つが分かっていれば、その数字が何を言っているのかが読めます。 どれかが欠けている実績は、比較の材料としては使えません。
出どころが書かれていない実績は、たいてい価格指数です。 わざわざ「配当込み」と書いていないなら、含んでいないと考えたほうが近くなります。
特に、配当抜きの日経平均と、配当込みの外国指数を並べて 「日本株は伸びていない」と結論づける記事には注意してください。 比べているものが違うので、その比較自体が成り立っていません。
自分の金額で、配当を再投資した実績を確かめられます。日経平均に投資していたら今いくらかを試算すると、使っている系列が何かも合わせて表示されます。
