結論から
日本株の指数として、日経平均とTOPIXはどちらもよく使われます。 同じ日本の株を見ているのに、動き方が違う日があります。 その理由は、この2つの作りの違いにあります。
この記事では、何がどう違い、その結果として 投資する側に何が変わるのかを整理します。 結論としては、日本株の中でどちらを選ぶかより、 資産全体のうちどれだけを日本株に置くかのほうが、はるかに大きく効きます。
対象の広さが違う
違いは大きく2つありますが、まずは分かりやすいほうから見ます。 どれだけの会社を見ているか、という範囲の話です。
同じ「日本株の指数」でも、含んでいる会社の数がまるで違います。 この差が、分散の広さの違いになります。
日経平均は、日本経済新聞社が選んだ225社を対象にします。 TOPIXは、東京証券取引所が算出するもので、 対象はプライム市場の全社に近い広さです。
| 日経平均 | TOPIX | |
|---|---|---|
| 算出する人 | 日本経済新聞社 | 東京証券取引所 |
| 対象の数 | 225社 | 1,000社以上 |
| 選び方 | 業種のバランスを見て選ぶ | 基準を満たす会社を広く含む |
| 重みの決まり方 | 株価の高さ | 会社の規模(時価総額) |
選び方の考え方も違います。日経平均は業種のバランスを見ながら選ぶため、 規模の大きさだけでは決まりません。 TOPIXは基準を満たしていれば含まれるので、選ぶ人の判断がほとんど入りません。
数だけを見れば、TOPIXのほうが4倍以上を含んでいます。 分散という意味では、TOPIXのほうが広いことになります。
ただし、数が多ければそれだけ分散されるとは限りません。 TOPIXは会社の規模で重みが決まるので、 大きな会社の影響が大きくなります。1,000社を含んでいても、上位の数十社で相当な割合を占めます。
重みの決まり方が違う
もうひとつの違いは、含まれている会社をどう扱うかです。 同じ225社や1,000社を見ていても、 どの会社の値動きを重く見るかで、出てくる数字は変わります。
こちらのほうが、日々の動き方の違いに直結します。 対象の数が違うことより、この重みの決め方の違いのほうが、 値動きの性格を分けています。
言い換えると、日経平均は1株の値段を見ていて、 TOPIXは会社そのものの値段を見ています。
日経平均は株価を平均する考え方なので、 株価が高い銘柄ほど指数を動かす力が大きくなります。 株価の高さは会社の規模とは別なので、 規模が小さくても株価が高ければ、大きな影響を持ちます。
時価総額とは、その会社の株をすべて買い集めるとしたらいくらかかるか、 という金額です。会社の規模を表す数字として広く使われています。
TOPIXは時価総額で重みが決まります。 時価総額は「株価 × 発行済み株式数」なので、会社の規模に近い数字です。 規模が大きい会社ほど、指数への影響も大きくなります。
どちらが正しいという話ではありません。 日経平均の作り方は、市場の様子を早く伝えるための昔からのやり方で、 TOPIXの作り方は、市場の規模を反映させるための考え方です。 目的が違うので、答えも違います。
その結果、何が変わるか
ここまでが作りの説明です。 では実際に、この違いは投資する人にとって何を意味するのか。 日々の値動きと、長い期間の成績に分けて見ます。
作りの違いは、実際の値動きの違いになって表れます。 ただし出方には特徴があり、短い期間ほどはっきりし、 長い期間ほど目立たなくなります。
いちばん分かりやすいのは、値がさ株と呼ばれる 株価の高い銘柄が大きく動いた日です。
日経平均は、株価の高い一部の銘柄が動いた日に大きく動きます。 その銘柄が属する業種の影響を、市場全体より強く受けることになります。 特定の業種に偏る時期があるのは、この仕組みからくるものです。
TOPIXは、大きな会社が全体を引っぱるという意味では偏りますが、 株価の高さによる偏りはありません。 市場全体の規模の動きに、より近い数字になります。
もうひとつ、どちらが上かは時期によって入れ替わります。 特定の業種が伸びる時期には日経平均が有利になり、 市場全体が広く上がる時期にはTOPIXが追いつきます。 どちらかが常に勝ち続けることはありません。
長い期間で見ると、この2つの成績はそれほど大きく離れません。 同じ国の同じ市場を見ているので、大きな方向は一致します。 違いが出るのは、短い期間の動きと、その荒さのほうです。
もうひとつ、指数の入れ替えの影響にも違いがあります。 日経平均は選ぶ人が決める仕組みなので、 入れ替えのときに対象銘柄の株価が動くことがあります。 TOPIXは基準を満たすかどうかで決まるので、そうした動きは相対的に小さくなります。
どちらを選ぶか
性質が分かったところで、選び方の話に移ります。 先に言っておくと、どちらかが優れているという結論にはなりません。 何を重く見るかによって、答えが変わります。
投資する対象として選ぶなら、何を重く見るかで決まります。 目安を挙げますが、どれも「こういう考え方もある」という程度のものです。
- 日本の市場全体に近い形で持ちたい → TOPIX
- 報道でよく目にする指数と同じ動きにしたい → 日経平均
- 数銘柄の影響を減らしたい → TOPIX
実際には、どちらか一方だけを持つ必要もありません。 両方を持つこともできますし、日本株そのものを持たない選択もあります。 指数を選ぶ前に、日本株にいくら置くかを決めておくと、この判断は軽くなります。
分散という観点だけを取れば、TOPIXのほうが広く持てます。 一方で、日経平均は情報が多く、 自分の資産がどう動いたかをニュースから追いやすいという利点があります。
注意したいのは、どちらを選んでも日本1国に集中していることは変わらない点です。 日経平均とTOPIXの違いは、日本の中でどう配るかの違いであって、 国を分散する話ではありません。
もし迷って決められないなら、どちらを選んでも大きな失敗にはなりません。 同じ国の同じ市場を見ている以上、長期の方向は一致します。 決めきれずに何もしないでいるほうが、選択の違いより結果に効きます。
数字を読むときは
最後に、この2つの実績を見比べるときの注意です。 比べ方を間違えると、簡単に逆の結論が出てしまいます。
実績を並べた記事や広告を見かけたときに、 その比較が成り立っているかを確かめる観点を挙げます。
- 同じ期間で比べる。期間が違えば、どちらが上かは簡単に入れ替わる
- 配当を含むかをそろえる。片方だけ配当込みだと比較にならない
- 短い期間の差は、作りの違いから来ていることが多い
比較の期間が意図的に選ばれていることもありますが、 多くは書き手が手元にあるデータをそのまま使っただけです。 悪意がなくても、期間の取り方で結論は変わります。
特に1つ目です。ある年は日経平均が上回り、別の年はTOPIXが上回る、 ということが普通に起こります。 1年の比較で優劣を決めると、次の年には逆の結論が出ます。
日経平均のほうは、自分の金額で実績を確かめられます。日経平均に投資していたら今いくらかを試算すると、期間ごとの年率と、その期間にいちばん沈んだところが出ます。
