早いほど効果が大きい理由
借り換えで減るのは、これから先にかかる利息です。 すでに払った利息は戻りません。だから、残っている期間が長いほど、 減らせる利息も大きくなります。同じ金利差でも、残り25年と残り5年では効果がまるで違います。
元利均等返済では、返済の初期ほど返済額に占める利息の割合が大きくなります。 残高が大きい時期に高い金利がかかるからです。 借入から10年経った時点でも、残っている利息の総額はまだかなり大きく、 そこを下げる余地は残っています。
具体的には、残高3,000万円・残り25年・年1.2%を年0.7%へ借り換えると、 諸費用70万円を引いても総額は130万円ほど軽くなります。 同じ金利差でも残りが10年しかなければ、減る利息は諸費用に届きません。 効いているのは金利差ではなく、それが何年続くかのほうです。
一方、諸費用のうち大半を占める事務手数料は、借入額に比例します。 返済が進んで残高が減れば手数料の絶対額も下がりますが、 減る利息のほうがもっと速く小さくなります。 結果として、時間が経つほど「諸費用に食われる割合」が上がっていきます。
返済が進むと、毎月の返済額に占める利息の割合も下がっていきます。 元利均等返済では、残高が減るにつれて利息が小さくなり、元金に回る額が増えるからです。 つまり返済の後半は、そもそも利息をあまり払っていません。 金利を下げても、下げる対象そのものが小さくなっているということです。
残高がいくら残っているかは、返済予定表か金融機関のアプリで確かめられます。 残高と残りの回数、いま適用されている金利の3つが分かれば、 借り換えの効果は計算できます。書類を探すのに数分かかるだけで、 そこから先は数字を入れるだけです。
よく言われる3つの目安
借り換えの目安として、次の3つがよく挙げられます。
- 残高が1,000万円以上あること
- 残りの返済期間が10年以上あること
- 金利差が1%以上あること
この3つがそろっていれば、諸費用を差し引いても効果が残ることがほとんどです。 そういう意味で、最初のふるいとしては役に立ちます。 「うちは全部当てはまるから、一度きちんと計算してみよう」という使い方なら問題ありません。
問題は逆向きに使ったときです。 「金利差が1%もないから、うちは関係ない」と切り捨ててしまうと、 実際には効果が出るケースを取りこぼします。 この目安が作られた頃と比べて、いまは金利の水準そのものが下がっています。 1%の差がつくこと自体が少なくなっているので、 目安のほうが実態に追いついていない面があります。
金利差だけで判断すると、もう一つ見落とすものがあります。 借り換え後の金利タイプです。変動から変動へ移るなら、比べているのは純粋な金利差です。 全期間固定から変動へ移るなら、金利差のなかに「読めなくなること」の対価が含まれています。 同じ0.5%の差でも、中身が違うということです。 タイプをそろえて比べるか、そろわないなら何が変わるのかを言葉にしてから決めてください。
目安が当てにならない場面
3つの目安は、どれも「他の2つが平均的なら」という前提の上に立っています。 1つが極端に大きいと、残りが足りなくても成立します。逆もあります。
たとえば残高5,000万円・残期間30年なら、金利差が0.3%でも減る利息は大きくなります。 諸費用は借入額に比例するので手数料も大きくなりますが、 利息の減り方のほうが期間で効くぶん勝ちやすくなります。 反対に、金利差が1.5%あっても残期間が3年しかなければ、 減る利息が諸費用に届きません。
もう一つ、目安には現れないのが事務手数料の型です。 定額型を選べる金融機関なら、諸費用が数万円で済むかわりに金利が上乗せされます。 この場合、残高が小さくても諸費用を取り戻せることがあります。 目安は借入額に比例する定率型を前提にしているので、そこがずれます。
借入から何年経っているかも、そのままでは目安になりません。 大事なのは経過した年数ではなく、残っている年数と残高だからです。 35年で借りて10年経った人には、まだ25年残っています。 20年で借りて10年経った人とは、同じ「10年経過」でも状況がまったく違います。
住宅ローンの借り換え診断では、目安に当てはまるかどうかではなく、自分の残高・残期間・金利で総支払額の差を出します。 諸費用を取り戻せる時期も同時に出るので、「動く意味があるか」をそこで判断できます。
いまの金融機関に金利の引き下げを相談してみる、という手もあります。 借り換えを検討していると伝えると、条件変更で下げてもらえることがあります。 下がる幅は借り換えほどではないことが多いのですが、諸費用がかかりません。 差額が小さいなら、こちらのほうが手元に残る額は大きくなります。
売却や住み替えの予定があるとき
借り換えの諸費用は先に出ていき、金利差の効果はあとから効いてきます。 だから、諸費用を取り戻す前に売却や完済をすると、その分だけ損になります。 金利差がどれだけあっても、この順番は変わりません。
回収の時期は、諸費用と金利差から決まります。 諸費用が重ければ遅くなり、金利差が大きければ早くなります。 同じ金利差でも、事務手数料が定額型なら回収は早く来ます。 「何年で取り戻せるか」は商品ごとに違うので、比べる行ごとに出しておくと選びやすくなります。
転勤の可能性がある、子どもの進学に合わせて住み替えるかもしれない、 親の家に移る話が出ている——こうした事情があるなら、 金利を比べる前に「あと何年ここに住むか」を先に見積もってください。 その年数が回収の時期より短いなら、金利差があっても答えは出ています。
はっきり決まっていない場合に、無理に「たぶん10年」と置く必要はありません。 分からないなら分からないままで構いません。 ただ、回収に9年かかると出たなら、それは「9年より前に動く可能性があるかどうか」を 考える材料になります。数字が出てから考えるほうが早く決まります。
住み替えの予定がはっきりしていなくても、 いまの家に何年住んだかは判断の材料になります。 買ってから3年以内に売る人は多くありませんが、 10年を超えると住み替えを考える人が増えます。そのあたりを目安にしてもよいと思います。
金利が上がりそうなときに急ぐべきか
「これから金利が上がりそうだから、いまのうちに固定へ借り換えたほうがいい」 という言い方をよく見かけます。この判断には、当てにいっている部分があります。 金利が上がるかどうかは誰にも分からないからです。
確かなのは、いま提示されている金利は確定しているということだけです。 全期間固定へ借り換えれば、その金利で完済まで確定します。 上がるかどうかを当てたのではなく、上がっても下がっても関係なくなる状態を買った、 と考えるほうが正確です。そのかわり、下がっても恩恵は受けません。
変動のまま置いておくのは、上がったときに返済額が増えることを引き受ける代わりに、 いまの低い金利をそのまま使う選択です。どちらが正しいという話ではなく、返済額が増えたときに家計が回るかどうかで決まります。 月2万円増えても大丈夫なら変動を続ける余地がありますし、 増えると厳しいなら固定に寄せる意味があります。
