金利タイプは3つ
住宅ローンの金利タイプは、大きく3つに分かれます。 違いは金利の高さではなく、契約したあとに金利が動くかどうか、 動くとすればいつからか、という点です。
図の横軸は契約からの年数です。色のついている範囲が、 市場金利が動いたときに返済額が変わりうるところを表しています。 変動は契約の直後から、当初10年固定は11年目から動きます。 全期間固定はどこにも色がつきません。
いまは、変動がいちばん低く、当初固定がその次、全期間固定がいちばん高いという並びが普通です。 この差は「将来の金利が動くリスクを、借りる側と貸す側のどちらが持つか」の値段です。 変動を選べば安く借りられますが、上がったときの負担は借りた側が持ちます。 全期間固定は高いかわりに、貸す側がその不確かさを引き受けています。
どれが得かは、あとにならないと分かりません。 金利が上がらなければ変動がいちばん安く済みますし、大きく上がれば全期間固定が有利になります。 先に決められるのは「上がったときに耐えられるか」だけです。
変動金利
もっとも金利が低いかわりに、契約した直後から金利が動く可能性があります。 多くの金融機関では年2回、金利を見直します。 見直しの基準になるのは短期プライムレートで、そこから決まる店頭表示金利に、 契約時に決まった引下げ幅を当てて適用金利が決まります。
ここで覚えておきたいのは、動くのは店頭表示金利のほうで、引下げ幅は変わらないという点です。完済まで同じ引下げ幅が続く契約が一般的なので、 市場金利が動かなければ、適用金利も動きません。
金利が上がっても毎月の返済額がすぐには変わらない仕組みを持つ商品があります。 5年間は返済額を据え置く「5年ルール」と、 見直すときも従来の1.25倍までしか上げない「125%ルール」です。 家計が急に苦しくならない仕組みですが、抑えた分の利息が消えるわけではありません。 後の返済に回るか、最後にまとめて残ります。この2つを採用していない金融機関もあります。
引下げ幅が固定されているという性質は、変動金利の分かりにくいところでもあります。 「変動だから金利が上がるかもしれない」というとき、上がるのは店頭表示金利のほうです。 いま年0.7%で借りていて店頭表示金利が3.1%なら、引下げ幅は2.4%です。 この2.4%は完済まで変わらないので、店頭表示金利が3.6%になれば適用金利は1.2%になります。
変動金利を選ぶ人は、いまも多数派です。 金利がいちばん低いことに加えて、 ここ十数年のあいだ金利が上がらなかったという経験が背景にあります。 ただし、過去に上がらなかったことは、これから上がらない理由にはなりません。 選ぶときは、上がったときに毎月いくらになるかを一度は計算しておいてください。
当初固定金利
最初の一定期間だけ金利を固定するタイプです。3年・5年・10年などがあり、 期間が長いほど金利は高くなります。固定しているあいだは市場金利が動いても返済額は変わりません。
いちばん大事なのは、この商品の性質が固定期間が終わったあとに現れることです。 当初固定の低い金利は、大きな引下げ幅で作られています。 そして固定期間が終わると、その引下げ幅が縮む商品が多くあります。
つまり、店頭表示金利がまったく動かなかったとしても、 固定期間が終わった時点で適用金利は上がりえます。 「10年固定で年1.0%」という表示を、35年ずっと1.0%だと読むと、 11年目以降の負担を見落とすことになります。
この点は、金融機関の商品説明書に「固定期間終了後の引下げ幅」として書かれています。 借りる前に必ず確かめてください。当初固定が終わったあとの金利で、確かめ方をまとめています。
全期間固定金利
完済まで金利が変わらないタイプです。フラット35が代表的ですが、 民間の金融機関にも同じ性質の商品があります。 契約した時点で、完済までに払う総額が確定します。
金利は3つのなかでいちばん高くなります。 その差は、将来の不確かさを引き受けてもらう対価です。 長い目で見て金利が上がらなければ、変動より多く払うことになります。 そのかわり、大きく上がっても支払いは1円も変わりません。
返済額が確定していることには、金額に表れない価値があります。 教育費の見通しを立てるとき、転職を考えるとき、 住居費が動かないことを前提にできるのは強みです。 「損得」ではなく「読めるかどうか」を買っている、と考えるほうが近いと思います。
全期間固定にも種類があります。フラット35は住宅金融支援機構が関わる商品で、 団信への加入が任意という特徴があります。民間の全期間固定は団信が原則加入で、 その分が金利に含まれています。同じ「全期間固定」でも、 何が含まれているかが違うので、金利の数字だけでは比べられません。
全期間固定と当初固定は、名前が似ているぶん混同されやすいところです。 全期間固定は完済まで金利が変わりませんが、当初固定は決めた期間だけです。 広告に「固定金利」とだけ書かれている場合、どちらなのかを必ず確かめてください。 同じ言葉で呼ばれていても、契約したあとの性質はまったく違います。
借り換えで選び直すとき
借り換えは新しい契約なので、金利タイプもそこで選び直せます。 いま変動で借りていて、これ以上動かしたくないから全期間固定へ移る、 という使い方は理にかなっています。
| いま | 借り換え後 | 起きること |
|---|---|---|
| 変動 | 全期間固定 | 総額は増えやすいが、返済額が完済まで確定する |
| 全期間固定 | 変動 | 総額は減りやすいが、確定していた返済額が動き出す |
| 変動 | 変動 | 読めなさは変わらない。金利差がそのまま効く |
| 当初10年固定 | 変動 | 10年動かなかった返済額が、契約後すぐ動き出す |
注意したいのは、2段目と4段目です。 総支払額の試算では「減る」と出るのに、引き換えに読めなさが増えています。 金額だけを見ると得な選択に見えるので、そこが伝わりにくいところです。
全期間固定から変動へ移るのは、いま確定している返済額を手放すことです。 手放した対価として金利が下がっているので、 いまの金利が続けば得になります。上がれば、確定していた状態のほうがよかったことになります。
タイプを変えると増えるもの
金利タイプを読めない側へ変えるとき、増えるのは「上がったときに返済額が増える可能性」です。 これは金額として先に出てこないので、試算では見えません。 見えるのは総支払額が減ることだけです。
確かめる方法は一つあります。金利が上がった場合の試算を並べることです。 いまの金利のまま、+0.5%、+1%、+2%と置いてみて、 そこでも借り換えの効果が残っているかを見ます。 +1%で効果が消えるなら、それは「いまの金利が続けば得」という条件付きの得です。
住宅ローンの借り換え診断では、金利が上がったときの試算を同じ画面に並べています。 上げるのは借り換え後だけではありません。いまのローンが変動なら、そちらも一緒に上げます。 片方だけを上げると、変動から変動への借り換えが実際より不利に見えるからです。
金利タイプは、契約したあとでも変えられることがあります。 変動から固定期間を選び直す手続きは、多くの金融機関で数千円から受け付けています。 ただし、逆方向に戻せるかどうかは商品によります。 固定期間の途中で変動に戻せない商品もあるので、そこは先に確かめてください。
