結論から
「不動産に投資したい」と考えたとき、 この2つは同じ入口に見えますが、途中から別の道になります。
ここでは、金額・借入・手間・換金の4つで違いを分けて見ます。 自分がどれを重く見るかで、選ぶものが決まります。
始める額と、分かれ方
最初の違いは、始めるのに必要な額です。
自分で買う場合は、区分の1室でも数百万円から、 1棟であれば数千万円からが目安になります。 借入を使うとしても、頭金と諸費用は自分で用意する必要があります。
リートなら数万円から始められます。 しかもその数万円が、数十から数百の物件に分かれます。オフィス、住宅、物流、商業と、用途もまたがります。
この差は、失敗したときの効き方に表れます。 自分で買った1室に入居者がつかなければ、収入はゼロになります。 リートで1棟の空室が増えても、全体からすればごく一部です。
| 自分で買う | リート | |
|---|---|---|
| 始める額 | 数百万〜数千万円 | 数万円から |
| 分かれ方 | 1室または1棟 | 数十〜数百の物件 |
| 空室の効き方 | 収入がゼロになることも | 全体の一部 |
| 場所の分散 | 1か所 | 複数の地域 |
物件を選ぶ責任の所在も違います。 自分で買う場合は、その1室が当たりかどうかを自分で判断します。 場所、築年数、周辺の家賃相場を調べ、 将来もその需要が続くかを考えることになります。リートでは、その判断を運用会社に任せています。
少額から始めて、慣れてから増やせるのもリートの側です。 自分で買う場合は、最初から大きな金額を動かすことになります。
借入を使えるかどうか
いちばん大きな違いが、ここです。
自分で不動産を買う場合、銀行から借りて買えます。 自己資金1割で買えば、10倍の資産を動かしていることになります。 家賃が利払いを上回っていれば、その差が自分のものになります。
リートでは、これができません。借入を使っているのはリートの側であって、投資家ではないからです。
図のとおり、借入と利払いはリートの中で完結しています。 投資家が受け取るのは、そこから先の分配金です。 自分でお金を借りてリートを買うことは、ふつうは想定されていません。
この違いは、両方向に効きます。 借入を使えば少ない自己資金で大きく増やせますが、 値下がりしたときの損も自己資金に対して大きくなります。返済は、家賃が入らない月にも続きます。
手間と、うまくやる余地
自分で買う場合は、買ったあとに続く仕事があります。
- 入居者を探す。空室が続けば収入が入らない
- 修繕に対応する。設備の故障や建物の劣化
- 確定申告をする。減価償却や経費の計算
買うときにも手間があります。 物件を探し、内見し、金融機関に融資を申し込み、 契約と登記を進めることになります。 リートなら、証券口座で数回押すだけで持てます。始めるまでの距離が、そもそも違います。
管理会社に任せることもできますが、その分の費用がかかります。 そして最後の判断は自分でする必要があります。
時間の使い方という点でも違います。 現物は買ってからが始まりで、持っているあいだずっと関わり続けます。 リートは買ったあと、何もしない期間が続きます。投資に使える時間がどれだけあるかも、 選ぶうえで現実的な条件になります。
この手間は、裏を返せばうまくやる余地でもあります。 良い物件を安く買えれば、その差はそのまま自分のものになります。 リフォームで家賃を上げる、といった働きかけもできます。
リートにはその余地がありません。 物件を選ぶのも、家賃を決めるのも、運用会社です。 投資家にできるのは、そのリートを買うか買わないかだけです。
言い換えると、自分の目利きや労力を結果に反映させたいかどうかで 向き不向きが分かれます。手間をかけたくないならリート、 自分で動かしたいなら現物、という分かれ方です。
売りたいときに売れるか
もう一つ、性格の違いが出るのが換金です。
リートは市場で取引されているので、 売りたい日に売れます。値段はその日の相場で決まります。
現物の不動産はそうはいきません。 買い手を探し、条件を詰め、手続きを進めるのに数か月かかることがあります。 急いで現金にしたい場合は、相場より安く手放すことになります。
ただし、これはどちらにも良い面と悪い面がある違いです。 すぐ売れるということは、下げたときに売ってしまいやすいということでもあります。 現物はすぐ売れないぶん、慌てて手放すことも起きにくくなります。
| 自分で買う | リート | |
|---|---|---|
| 売るまでの時間 | 数か月 | その日 |
| 値段の分かりやすさ | 査定しないと分からない | 毎日出ている |
| 一部だけ売る | できない | できる |
| 下げたときの行動 | 動きにくい | 売ってしまいやすい |
値段の見え方にも違いがあります。 リートは毎日値段がつくので、下げた日はすぐ分かります。 現物は査定しない限り分からないので、 下げていても気づかずに持ち続けられます。 これは落ち着いて持てる面でもあり、実態より良く思い込んだまま持ち続ける面でもあります。
「一部だけ売る」も実務では効きます。 資金が必要になったとき、リートなら必要な分だけ売れます。 現物は1室まるごとでしか動かせません。
どちらを選ぶか
ここまでを整理すると、選び方の軸が見えてきます。
- 借入を使って大きく動かしたいなら現物。ただし返済は続く
- 手間をかけずに分けて持ちたいならリート
- 少額から試したい、途中で額を変えたいならリート
年齢や状況も効いてきます。 借入は返し終えるまで続くので、 返済の期間が働ける期間に収まるかどうかを先に考える必要があります。 リートにはその制約がありません。いつでも始められて、いつでもやめられます。
どちらか一方しか選べないわけでもありません。 まずリートで値動きの感覚をつかんでから、 現物を検討するという順番も現実的です。
税金の扱いも違います。現物は家賃収入が不動産所得となり、 ほかの所得と足して計算されます。 建物の価値の目減りを費用として計上できる仕組みもあり、 帳簿の上での利益と、実際に手元に残る現金がずれることがあります。 リートの分配金は、株式の配当と同じ扱いになります。
気をつけたいのは重なりです。 自宅を持っている時点で、すでに日本の不動産を大きく抱えています。 そこへ現物の投資物件を足すと、資産のかなりの部分が同じ国の、同じ資産の種類に集まります。
働いている会社の業種まで考えると、重なりはさらに広がります。 不動産や建設に関わる仕事をしているなら、 収入そのものが同じ市場の動きに左右されます。 資産も収入も同じ方向を向いていないか、一度まとめて見ておく価値があります。
リートも中身は日本の不動産なので、この重なりからは逃れられません。 金額を決めるときは、自宅を含めた全体で見てください。
どちらを選ぶにしても、先に決めるのは金額です。 いくらまでなら値下がりしても続けられるのかを決めてから、 その範囲で方法を選んでください。 方法から先に決めると、その方法に必要な額に合わせて 金額のほうが決まってしまいます。
過去にどれだけ下げたかは、Jリートに投資していたら今いくらかを試算すると、分配金を再投資した実績と、いちばん沈んだ局面が円で出ます。 現物を検討している場合も、同じ不動産の値動きの目安として使えます。
