結論から
「利回りが高いから安全」と考えていると、 金利が上がった局面で分配金と値段の両方が下がり、想定が崩れます。
ここでは、その2つの道すじを分けて見ていきます。 分けて理解しておくと、ニュースで金利の話が出たときに 自分の資産に何が起きるのかを自分で考えられます。
1つ目の道すじ:利払いが増える
リートは、投資家から集めたお金だけで物件を買っているわけではありません。 銀行からも借りて、その分だけ大きな物件を持っています。
図の下側にあるとおり、家賃から先に利払いを引きます。投資家に配れるのは、その残りです。
金利が上がると、この利払いが増えます。 家賃が変わらなければ、増えた分だけ配れる額が減ります。 分配金が減るというのは、こういう仕組みで起きます。
借入の割合が高いリートほど、この影響は大きくなります。 少ない自己資金で大きな物件を持てば、 好調なときの利益は大きくなりますが、 金利が上がったときの痛みも大きくなります。
借入の割合は、リートの資料では総資産に対する有利子負債の比率として 示されていることが多く、4割から5割あたりが一つの目安になります。 この数字が高いほど、少ない自己資金で大きな物件を動かしている状態です。 利益も痛みも、同じ倍率で大きくなります。
| 借入の割合が低い | 借入の割合が高い | |
|---|---|---|
| 金利が下がるとき | 利益は小さめ | 利益が大きい |
| 金利が上がるとき | 痛みは小さめ | 痛みが大きい |
| 分配金の安定 | 比較的安定 | 振れやすい |
もう一つ、金利が上がると物件そのものの評価額も動きます。 不動産は将来の家賃を見込んで値段がつくので、 金利が上がると同じ家賃でも評価が下がりやすくなります。 借入の割合は、この評価額に対して計算されます。 評価が下がれば割合は上がり、借りている額を変えていなくても、財務が重く見えることになります。
どちらが良いという話ではありません。金利がどちらに動くかで、有利不利が入れ替わるという関係です。
2つ目の道すじ:比べられる相手が強くなる
もう1つは、リートの外側で起きることです。
金利が上がると、国債や預金の利息も上がります。 値動きがなく元本も動きにくいものから、 そこそこの利息が受け取れる状態になります。
そうなると、「わざわざ値動きのあるリートを持たなくてもよい」 と考える人が出てきます。売る人が増えれば、値段は下がります。
分かりやすく言えば、リートの利回りが同じでも、比べられる相手が強くなったということです。 利回り4%のリートは、預金がほぼ0%の時代なら魅力的ですが、 国債で3%が取れる時代なら、その差は小さくなります。
- リートの利回りそのものは変わっていない
- 比べる相手の利息が上がった
- 差が縮んだぶん、リートを持つ理由が薄れる
この動きは、リートに限った話ではありません。 債券も、高い配当を出す株も、金利が上がると同じ理由で売られやすくなります。利回りで買われている資産に共通して起きることです。 利回りの高さで選んだ資産をいくつも持っていると、 金利が上がった局面でまとめて下がることになります。
この動きは、金利が実際に上がる前から始まることもあります。 市場は先を織り込むので、「これから上がりそうだ」という見方が広がった時点で 値段が下がることがあります。実際に上がった日には、 もう織り込み済みで動かない、ということも起きます。ニュースを見てから動いても、たいてい遅いのはこのためです。
この2つ目の道すじは、分配金が減らなくても起きます。 収入は変わらないのに、資産の額だけが減るという形です。分配金の増減と、持っている資産の増減は別々に見てください。
効くまでの速さは、借り方で変わる
金利が上がったからといって、 翌月からすべてのリートの利払いが増えるわけではありません。
借入には期間があります。 10年の固定で借りていれば、その10年のあいだ利払いは変わりません。 借り換えの時期が来て初めて、新しい金利が適用されます。
| 借り方 | 金利上昇が効くまで | 見るところ |
|---|---|---|
| 長期・固定が多い | 遅い。数年かけて効く | 平均の残存期間 |
| 短期・変動が多い | 早い。すぐ効く | 変動の割合 |
借り換えの時期が一度に集中していないかも、あわせて見るところです。 同じ年にまとめて借り換えが来る形になっていると、 その年の金利がそのまま結果を左右します。 時期を分けて借りているリートは、上がった年も下がった年も 平均されるので、振れ方が穏やかになります。
個別のリートを選ぶなら、ここは必ず見るところです。 決算の資料に、借入の平均残存期間や固定の割合が書かれています。
指数に連動する商品を買う場合は、 いろいろな借り方のリートが混ざるので、平均的な効き方になります。速さの違いは薄まりますが、方向は同じです。
金利が上がれば必ず下がる、ではない
ここまでの説明は、ほかの条件が同じならという前提つきです。 実際には、金利以外のことも同時に動きます。
金利が上がる局面は、たいてい景気が良い局面です。 景気が良ければオフィスの需要が増え、空室が減り、家賃を上げられます。家賃の伸びが利払いの増加を上回れば、分配金は増えます。
過去を振り返るときも、期間の取り方で結論が変わります。 金利が上がった局面だけを切り出せば下げて見え、 その前後を含めれば違う姿になることがあります。
どちらの力が強く出るかは、金利の上がり方でも変わります。 景気の良さに合わせてゆっくり上がるなら家賃の伸びが追いつきますが、 物価を抑えるために急に上げる局面では、 家賃が追いつく前に利払いだけが増えます。同じ「金利上昇」でも、その中身で結果が変わります。
物価が上がる局面では、家賃も上がりやすくなります。 契約の更新まで時間がかかるので反映は遅れますが、 長い目で見れば物価の上昇が家賃に乗ってくる面があります。
持つときに見ておくこと
金利との関係を踏まえると、見るところは絞れます。
- 借入の割合。高いほど、金利の動きが強く効く
- 借入の平均残存期間と固定の割合。効くまでの速さが変わる
- 分配金の増減と、値段の増減を別々に追う
分配金を生活費の一部として当てにしている場合は、 減った年をどう乗り切るかまで決めておく必要があります。 金利が上がる局面では、分配金が減り、 同時に売って現金にしようとしても値段が下がっています。いちばん欲しいときに、いちばん取り出しにくくなる形です。 そのぶんは現金で持っておくほうが確実です。
そして、いちばん大事なのは金額です。 金利がどちらに動くかは誰にも分かりません。 分からないものに賭けるのではなく、どちらに動いても持ち続けられる額にしておくことが先です。
過去にどれだけ下げたかは、Jリートに投資していたら今いくらかを試算すると、分配金を再投資した実績と、途中でいちばん沈んだ局面が円で出ます。 金利が動いた時期を含む期間で見ると、振れ方の感覚がつかめます。
物件の種類による違いも、金利と合わせて見ておくと役に立ちます。 住宅は景気が悪くなっても人が住み続けるので家賃が安定しやすく、 ホテルや商業施設は景気の波をそのまま受けます。 金利が上がる局面が景気の良い局面なら、 後者のほうが家賃の伸びで利払いの増加を吸収しやすい、という関係もあります。
円建てなので為替は入りません。 金利という1つの軸で説明できる部分が大きいぶん、 何が起きているのかを追いやすい資産でもあります。
