iDeCoは、一時金ではなく年金の形でも受け取れます。この場合、税金の計算は 退職所得ではなく雑所得になります。そして、公的年金と合算して計算します。 ここが、年金受取でいちばん見落とされるところです。
iDeCoの年金は、公的年金等に含まれる
確定拠出年金から年金の形で支払われるお金は、税法上「公的年金等」に含まれます。 国民年金や厚生年金と同じ扱いです。
ここでいう「年金の形」とは、残高を何年かに分けて定期的に受け取ることです。 年1回や年6回など、金融機関の規約で決まった回数で受け取ります。 一度に全額を受け取る一時金とは、税法上の扱いがまったく変わります。 同じお金でも、受け取り方の選択だけで所得の種類が変わる、ということです。
一時金の退職所得には「2分の1にする」という緩和がありますが、 年金にはありません。控除を引いた残りが、そのまま雑所得になります。
もうひとつの違いは、課税される回数です。一時金は受け取る年に1回だけ計算します。 年金は受け取る年ごとに、その年の収入で計算します。 途中で公的年金が増えたり、他の所得が入ったりすれば、そのたびに結果が変わります。 何年も先まで確定しない、という性格があります。
公的年金等控除の決まり方
公的年金等控除は、受け取った年金の額と年齢で決まります。給与所得控除とは別の表です。
| 年齢 | 最低保障される控除額 |
|---|---|
| 65歳未満 | 60万円 |
| 65歳以上 | 110万円 |
65歳以上の最低保障額は、給与所得控除の最低保障額より大きくなっています。 年金を給与と同じ扱いで計算すると、税を多く見積もることになります。
収入がこの額を超えると、段階的に率をかけた計算に移ります。 収入が増えるほど控除額も増えますが、増え方は緩やかになり、最後は一定額で頭打ちになります。
65歳が境目になっているのは、それ以前は働いている人が多いことを踏まえた作りです。 60歳から65歳までのあいだにiDeCoを年金で受け取ると、控除の最低保障額は小さいほうが適用されます。 給与がまだある時期に重ねると、そちらとも合算されて税率が上がることがあります。 受け取り始める年齢は、この点でも効いてきます。
雑所得は、給与所得や事業所得と合算して課税されます。分離課税の退職所得とは違い、 他に所得があればそこに積み上がる形になります。60代でまだ働いている人が iDeCoを年金で受け取ると、給与の上に乗るぶん高い税率がかかります。 働いているあいだは受け取らない、という選択肢もあります。
ここに載せている控除の表は、公的年金等以外の合計所得金額が1,000万円以下の場合のものです。 これを超えると控除額は下がります。ToMiは年金以外の所得を持っていないため、 この区分を分けずに計算しています。年金以外に大きな所得がある方は、 実際の控除額はここで出しているより小さくなります。
年齢別の速算表は公的年金等控除のルールに出典と確認日を付けて掲載しています。
合算されることの意味
ここが本題です。公的年金等控除は、受け取る年金の合計に対して1つだけ適用されます。 国民年金にひとつ、厚生年金にひとつ、iDeCoにひとつ、というものではありません。
たとえば公的年金が年110万円ちょうどの65歳の人は、控除に収まって税金がかかりません。 ここにiDeCoの年金が年80万円加わると、合計190万円になり、 控除を超えた分が雑所得として課税されます。
自分の公的年金がいくらになるかは、ねんきん定期便やねんきんネットで確かめられます。 50歳以上であれば、いまの加入状況が60歳まで続いた場合の見込額が載っています。 50歳未満だと、これまでの加入実績に対する額なので、実際の受給額とは違います。 年金受取を検討するなら、まずこの数字を持っているかどうかが分かれ目になります。
税金だけでは終わらない
年金受取でもうひとつ効いてくるのが、公的な保険料です。 雑所得が増えると、次のものが上がります。
- 国民健康保険料(75歳未満)または後期高齢者医療保険料(75歳以上)
- 介護保険料(65歳以上の第1号被保険者)
- 医療費の窓口負担割合が上がることもあります
これらは税金ではありませんが、手取りは同じように減ります。 税額だけを並べて「年金のほうが安い」と決めると、この分が抜け落ちます。
保険料の額は市区町村ごとに違うので、正確な金額を出すことはできません。 ただし、増えることは確かです。ToMiの診断では、税額とは別に保険料の増加も出しています。
税額と保険料を分けて出しているのは、性質が違うからです。 税額は制度の表から計算できますが、保険料は住んでいる自治体によって変わります。 1つの数字にまとめると、確からしさの違う2つが混ざります。 比べるときは、税額の差だけでなく、保険料の増加も合わせて見てください。
受け取る年数で変わる
年金で受け取る場合、何年に分けて受け取るかを選べます。 期間は金融機関の規約によりますが、5年から20年程度が一般的です。
同じ残高でも、期間が短いほど1年あたりの額は大きくなり、 控除を超えやすくなります。逆に期間を長くすれば1年あたりは小さくなりますが、 そのぶん受け取り終わるまでの年数が延びます。
また、受け取っているあいだも口座管理手数料はかかり続けます。 期間を長くすれば、その分だけ手数料の総額も増えます。 税金だけで期間を決められる話ではありません。
受け取っていない残高は、そのあいだも運用が続きます。 期間を長くすれば、運用が続く期間も長くなります。増えることも減ることもありますが、 受け取り終わるまで値動きの影響を受け続ける、ということです。 全額を早く受け取れば、その先の値動きからは離れられます。
受け取りの回数も金融機関によって違います。年1回、年2回、年6回など、 規約で決まった範囲から選びます。回数が多いほど、そのつど手数料がかかる場合もあります。 税額には影響しませんが、手取りには効いてきます。
一時金と比べるときの見方
一時金と年金のどちらが有利かは、人によって逆になります。 比べるときに見るのは、次の2つです。
| 受け取り方 | 効いてくるもの |
|---|---|
| 一時金 | 会社の退職金の額と、勤続年数・加入年数 |
| 年金 | 公的年金の見込額と、受け取る年数 |
退職金が大きい人は一時金にすると退職所得控除が足りなくなり、 公的年金が多い人は年金にすると公的年金等控除を超えます。 両方が大きい人は、どちらか一方に寄せるより、分けたほうが軽くなることがあります。
多くの金融機関では、一部を一時金で受け取り、残りを年金にすることもできます。 ただし選べる組み合わせは規約によるので、出口の設計を考えるなら まず自分の口座の規約を確かめるところからになります。
出口の設計を考えるのは、受け取る直前ではなく、もっと前から意味があります。 受け取る年齢や順番によって税額が変わるので、そこに合わせて 退職の時期や、企業型DCの受け取り方を調整する余地があるためです。 ただし、何十年も先の制度がいまと同じである保証はありません。 いま出せるのは、いまの制度での概算です。
一時金・年金・その組み合わせの3通りで、受取時に増える税金がいくら変わるか。iDeCoは本当に節税?受取時まで含めて税金差を診断で並べて比べられます。公的年金額が未入力の場合は、複数の条件で試算します。
