手取り・給与

扶養とは?税金と社会保険の違い

103万・106万・130万を1本に並べた図は、種類の違うものを並べています。金額より先に、どの決まりの話かを決めてください。

読了めやす9更新

この記事の要点

  • 「扶養」には税金の扶養、社会保険の扶養、会社の配偶者手当の3つがあり、決まりも判定する人も別です。
  • 税金の扶養で変わるのは、働く本人ではなく配偶者の税金です。
  • 社会保険の扶養で変わるのは、自分が保険料を払うかどうかです。金額の影響は多くの場合こちらが大きくなります。
  • 会社の配偶者手当は法令ではなく就業規則で決まるため、公表資料では調べられません。
  • 3つは切り替わる位置が違うので、ひとつの「◯万円の壁」にまとめられません。

「扶養」は3つある

「扶養を外れる」という言い方は、日常ではひとまとめに使われます。 しかし制度としては、少なくとも3つの別々の決まりが同じ言葉で呼ばれています。 判定する人も、変わるものも、切り替わる日も、3つとも違います。

「扶養」と呼ばれているものは、3つある税金の扶養決めるのは税務署(法令)変わるのは配偶者の税金社会保険の扶養決めるのは健康保険(協会けんぽ・健保組合)変わるのは本人が保険料を払うかどうか会社の配偶者手当決めるのは配偶者の勤務先(就業規則)変わるのは毎月の手当
3つは別々の決まりで、判定する人も、変わるものも違います。ひとつの「◯万円の壁」にまとめると、必ずどれかを取りこぼします。

この3つを1本の数直線に並べて「103万円の壁」「106万円の壁」「130万円の壁」と書いた図をよく見かけます。 並べると同じ種類の区切りに見えますが、実際には種類が違うものを並べていることになります。 金額を覚えても、自分がどれに当たるのかは分かりません。

まず、いま自分が心配しているのが3つのうちどれなのかを決めてください。 そこが決まらないまま金額を調べても、答えは出ません。

税金の扶養:変わるのは配偶者の税金

税金の扶養とは、配偶者控除と配偶者特別控除のことです。 ここで変わるのは、働いている本人の税金ではありません。配偶者(控除を受ける側)の税金です。

働く人の収入が増えると、配偶者が受けられる控除が小さくなります。 控除が小さくなると、配偶者の課税される所得が増え、その分だけ配偶者の税金が増えます。 つまり、働いた本人の給与明細を見ても変化は出ません。変化が出るのは配偶者の側です。

もうひとつ、働く本人にも税金はかかります。給与収入が一定額を超えると、 本人の所得税や住民税が発生します。ただしこれは「扶養を外れたから」ではなく、 単に自分の収入が課税される水準に達したという話で、配偶者控除とは別の仕組みです。

税金の扶養でいちばん誤解されているのは、上限を1円超えた瞬間に控除がゼロになるという理解です。 実際にはそうなっていません。配偶者控除が受けられなくなる所得を超えても、 そこから配偶者特別控除へ地続きに移り、段階的に小さくなっていきます。 この仕組みは「働きすぎると急に損をする」ことを避けるために作られたものです。

控除の額と段の切れ目は年によって変わります。金額そのものは配偶者控除・配偶者特別控除とは?で、 出典と確認日を付けて扱っています。

もうひとつ覚えておきたいのは、控除が減ることと、税金がその額だけ増えることは別だということです。所得控除が減ると増えるのは課税される所得で、 税金はそこに税率をかけて計算されます。実際に増える税額は、 減った控除に税率をかけた分だけです。控除が38万円減っても、 税金が38万円増えるわけではありません。

社会保険の扶養:変わるのは自分の保険料

社会保険の扶養は、税金とはまったく別の判定です。 ここで変わるのは配偶者の税金ではなく、自分が健康保険料と年金保険料を払うかどうかです。 金額の影響は、多くの場合こちらのほうが大きくなります。

そして判定の順番も違います。税金は1年間の所得で決まりますが、 勤務先の健康保険・厚生年金に入るかどうかは、年収では決まりません。 週の所定労働時間と勤務先の規模が先に来ます。

勤務先の社会保険に入るかどうかは、年収より先に決まる条件がある週の所定労働時間は?外れたら →勤務先の規模は?外れたら →学生ではない・2か月を超えて働く?外れたら →すべて満たす勤務先の社会保険に入るどれかで外れる被扶養者でいられるかを別に判定
上から順に見ていきます。どこかで外れると、勤務先の社会保険には入りません。そのあとで、配偶者の健康保険の被扶養者でいられるかを別に判定します。

この条件をすべて満たすと、勤務先の社会保険に入ります。どこかで外れた場合は、 次に「配偶者の健康保険の被扶養者でいられるか」を別に判定します。 被扶養者から外れ、しかも勤務先の社会保険にも入らない場合は、 国民健康保険と国民年金を自分で払うことになります。

3つの道がある

  • 勤務先の健康保険・厚生年金に入る。保険料は勤務先と折半で、将来の厚生年金も増える
  • 配偶者の健康保険の被扶養者のまま。自分の保険料は0円
  • どちらでもない。国民健康保険と国民年金を全額自分で払う
3つ目がいちばん負担の重い道です。勤務先が折半してくれるわけでもなく、 被扶養者として免除されるわけでもありません。 週の所定労働時間が短いまま収入だけが増えると、この道に入ることがあります。

この3つ目の道に入りやすいのは、時給が高い仕事で短い時間だけ働いている場合です。 週の所定労働時間の条件を満たさないので勤務先の社会保険には入らず、 それでいて収入は被扶養者の基準を超えてしまう。そういう組み合わせが起こり得ます。 国民年金の保険料は全国一律で額が決まっていますが、 国民健康保険の保険料は自治体・所得・世帯構成で変わるため、 お住まいの市区町村で確認しないと金額が分かりません。

逆に、勤務先の社会保険に入る道には、保険料の負担と引き換えに得られるものがあります。 保険料は勤務先と折半になりますし、厚生年金に入るので将来受け取る年金も変わります。 病気やけがで働けないときの傷病手当金、出産のときの出産手当金も、 勤務先の健康保険に入っていなければ受け取れません。短期の手取りだけを見て「損」と決めると、この部分が抜け落ちます

マネック案内役):「社会保険に入ると損」と言われるけど、いちばん負担が重いのは入らないのに扶養からも外れるときだよ。

会社の配偶者手当:法令ではない

3つ目は、配偶者の勤務先から出る配偶者手当(家族手当)です。 これは法令ではなく、会社ごとの就業規則・給与規程で決まっています。 支給の有無も、金額も、なくなる条件も、会社によって違います。

税金や社会保険と決定的に違うのは、段階的に減るとは限らないことです。 税金は控除が段階的に小さくなり、社会保険料は収入に応じて増えます。 一方で配偶者手当は、条件を1円超えた月から全額なくなることがあります。

月1万円の手当なら、年間で12万円です。税金や社会保険料の増え方より大きくなることも珍しくありません。 それにもかかわらず、公表された資料には載っていないので、自分で規程を確認するしかありません

配偶者の勤務先の就業規則か給与規程で、手当の金額と、なくなる条件(年収か月収か、いくらか)を確認してください。 ここを確認しないまま働き方を決めると、いちばん大きな影響を見落とすことがあります。

さらにややこしいのは、会社が「扶養の範囲」と呼ぶ基準が、 税法上の基準とも社会保険上の基準とも一致するとは限らないことです。 税法に合わせている会社もあれば、健康保険の被扶養者かどうかを条件にしている会社もあり、 独自の金額を決めている会社もあります。 「扶養」という同じ言葉が使われているせいで、3つとも同じ基準だと思い込みやすくなっています。

3つが混ざると、何が起きるか

3つが別々の決まりだということは、切り替わる位置も別々だということです。 税金の控除が小さくなり始める収入と、社会保険に入る収入と、会社の手当がなくなる収入は、一致しません。

しかも、どこで切り替わるかは人によって違います。 週に何時間働くか、勤務先が何人規模か、配偶者の収入がいくらか、手当の条件が何か。 これらが変われば、切り替わる位置も全部変わります。「◯万円の壁」という共通の答えが存在しないのは、このためです。

もうひとつ、時期の問題があります。社会保険の加入条件は制度改正で変わりますし、 税金の控除額も年によって変わります。去年の記事に書かれていた金額が、 今年も同じとは限りません。金額を覚えるより、何がどの決まりで決まっているかを覚えておくほうが長持ちします。

住民税にも注意が必要です。住民税は前年の所得に対して翌年にかかるため、 働き方を変えた初年度と翌年度で、手取りの感覚がずれます。 くわしくは住民税はなぜ前年の年収で決まる?で扱っています。

自分の場合を確かめる

3つの決まりを理解したうえで実際に決めるには、自分の条件を入れて計算するしかありません。 必要なのは、いまの年収、これからの働き方(時給と週の時間)、勤務先の規模、 配偶者の年収、そして配偶者手当の条件です。

ToMiの扶養を外れて働くと、世帯手取りはいくら増える?では、この3つをすべて差し引いたうえで、世帯の手取りがいくら変わるかを出します。 「扶養の中でいちばん稼いだ場合」と比べて、外れるなら年収いくらまで働けば元が取れるかも逆算します。

大事なのは、働くか働かないかの二択ではないということです。 扶養を外れた直後は負担が先に来るため、中途半端に超えるといちばん損をします。 越えるなら一気に越えたほうが早く戻ります。その分かれ目がどこにあるかは、 金額を並べた記事ではなく、自分の条件で計算しないと出てきません。

よくある質問

税金の扶養と社会保険の扶養は、同じ年収で切り替わりますか?
一致しません。税金は1年間の所得で判定しますが、勤務先の社会保険に入るかどうかは週の所定労働時間と勤務先の規模で決まります。被扶養者でいられるかは、さらに別に年間収入の見込みで判定します。3つとも基準が違うため、切り替わる位置もそれぞれ違います。
扶養を外れると、自分の手取りは必ず減りますか?
必ずではありません。保険料の負担が先に来るため、外れた直後は世帯の手取りが下がる範囲があります。ただしそこから働く時間を増やせば戻ります。どこで戻るかは、時給・勤務先の規模・配偶者の収入・会社の手当で人によって変わります。
いちばん負担が重いのはどの状態ですか?
勤務先の社会保険に入らないまま、配偶者の健康保険の被扶養者からも外れる状態です。国民健康保険と国民年金を全額自分で払うことになり、勤務先が折半してくれる分もありません。週の所定労働時間が短いまま収入だけが増えると、この状態になることがあります。

参照した一次情報

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この記事は商品の仕組みを説明するものであり、 特定の商品の購入を勧めるものではありません。 個別の投資助言でもありません。制度や条件は変わることがあるため、実際のご判断にあたっては国税庁の給与所得者向けのページや、お取引先の金融機関で最新の条件をご確認ください。