配偶者手当は、法令ではない
配偶者手当(家族手当・扶養手当と呼ぶ会社もあります)は、 会社が独自に支給している賃金の一部です。 税金の配偶者控除や、社会保険の被扶養者とは、まったく別のものです。
税金と社会保険は、法令と公的機関が決めています。全国どこでも同じ決まりです。 配偶者手当は、その会社の就業規則・給与規程が決めています。 支給の有無も、金額も、なくなる条件も、会社ごとに違います。
このことは、インターネットで調べても答えが出ない理由でもあります。 税金や社会保険であれば、国税庁や日本年金機構の公表ページを見れば条件が分かります。 配偶者手当については、そういう調べ先が存在しません。自分の会社の規程だけが唯一の答えです。 記事に書かれている「一般的には◯万円」という数字は、 どこかの会社の例にすぎず、自分の会社に当てはまる保証はありません。
「扶養」という同じ言葉が使われるので混同されますが、 会社が「扶養の範囲」と呼ぶ基準は、税法上の基準とも、 社会保険上の基準とも一致しないことがあります。 3つの違いは扶養とは?税金と社会保険の違いで整理しています。
税金や社会保険と、形が違う
この手当がやっかいなのは、金額の大きさよりも変わり方です。 税金と社会保険は、収入が増えるにつれて段階的に変わります。 配偶者手当は、条件を超えた月から全額なくなることがあります。
税金の配偶者控除は、上限を超えても配偶者特別控除へ移り、段階的に小さくなります。 社会保険料も、収入が増えれば増えますが、少しずつです。 一方で手当は、段ではなく崖です。
しかも、判定の基準が年収とは限りません。月収で見る会社もあれば、 年収の見込みで見る会社もあります。健康保険の被扶養者かどうかを条件にしている会社もあります。何を基準にしているかを確かめないと、いつなくなるかが分かりません。
金額は小さくない
月1万円の手当であれば、年間で12万円です。 これは、扶養を外れたときに増える税金や社会保険料と比べても、決して小さい額ではありません。
しかも税金や社会保険料は、収入が増えれば負担も増えますが、 手元に残る額そのものが減るわけではありません。 手当がなくなる場合は、世帯の収入そのものが減ります。 税金の増加と、手当の消失は、性質が違います。
もうひとつ性質が違うのは、手当は配偶者の給与から消えるという点です。 働いた本人の給与は増えているのに、配偶者の給与が減ります。 世帯としては差し引きで見なければ分かりませんが、 それぞれの明細を別々に見ていると、増えた実感だけが先に来ます。 減ったことに気づくのは、年間の収支を見返したときになりがちです。
給与から引かれるものの全体像は給与から引かれるもので扱っています。 手当は「引かれるもの」ではなく「もらえるもの」が消える話なので、 給与明細の控除欄を見ても気づけません。支給欄のほうが変わります。
どこを確認すればよいか
配偶者の勤務先の就業規則か給与規程を見るのがいちばん確実です。 社内のイントラネットに置かれていることが多く、 人事・総務に聞けば教えてもらえます。
確認したいこと
- 支給されているか。給与明細の支給欄に、家族手当・扶養手当といった項目があるか
- 金額はいくらか。月額か年額か
- なくなる条件は何か。配偶者の年収か、月収か、健康保険の被扶養者かどうかか
- 判定の時期はいつか。年に一度か、毎月か
- いつからなくなるか。条件を超えた月からか、翌年度からか
確認するときは、金額よりも条件のほうを先に聞いてください。 金額が分かっても、いつなくなるかが分からなければ計算できません。 逆に条件が分かれば、その手前で止めるのか、超えて取り返すのかという 2つの選択肢を比べられるようになります。
手当があるとき、どう考えるか
手当がなくなる条件が分かったら、選べるのは3つです。 手当を残すためにその手前で働く時間を抑えるか、 手当を失っても取り返せるところまで働くか、 あるいは中途半端に超えてしまうか。
3つの選び方
- 条件の手前で止める。手当は残るが、働く時間の上限もそこで決まる
- 手当の分を取り返せるところまで働く。増えた給与が、手当と税・社会保険料の増加を上回る
- 中途半端に超える。手当だけが消えて、増えた給与では足りない。いちばん損になる
1つ目と2つ目のどちらがよいかは、金額だけでは決まりません。 働ける時間に上限があるなら1つ目しか選べませんし、 長く働き続ける予定があるなら、2つ目のほうが数年単位では大きくなります。 社会保険に入れば厚生年金も増えるので、そこも合わせて考えることになります。
決められないときは、まず2つ目に必要な年収がいくらかを出してみてください。 その数字を見てから、それが現実的かどうかを考えるほうが早く決まります。 手が届く範囲なら2つ目、届かないなら1つ目です。
見直しが進んでいる
配偶者手当は、働き方によって支給が変わる仕組みのため、 働く時間を抑える理由のひとつになっていると指摘されてきました。 これを受けて、手当を見直す会社が出てきています。
見直しの形はさまざまです。手当そのものを廃止して基本給に振り替える会社、 配偶者ではなく子どもを対象にする会社、条件となる収入の基準を引き上げる会社があります。
廃止して基本給に振り替える形なら、配偶者がいくら働いても手当が減ることはありません。 この場合、考えることが税金と社会保険の2つだけに減ります。 自分の世帯がすでにその形になっているかどうかは、規程を見れば分かります。 「手当があるはずだ」という前提で働く時間を抑えているとしたら、 その前提が古くなっている可能性もあります。
反対に、手当が残っていて、しかも条件が厳しい会社もあります。 その場合は、税金や社会保険より先に手当のほうを確認したほうが早く答えが出ます。 いちばん大きい要素から確認するのが、いちばん少ない手間で済みます。
つまり、いまの条件が来年も同じとは限りません。 働き方を大きく変えるときは、その時点の規程をあらためて確認してください。 数年前に聞いた条件のまま考えていると、前提が変わっていることがあります。
自分の場合を確かめる
配偶者手当の条件が分かれば、あとは計算できます。 税金と社会保険料の増え方に、手当がなくなる分を足し合わせて、 世帯としていくら残るかを出せます。
ToMiの扶養を外れて働くと、世帯手取りはいくら増える?では、手当の年額と、なくなる年収を入力できます。 ToMiは会社ごとの規程を持っていないので、ここは入力していただく形です。 入力すると、税金・社会保険料と並べて、手当の減少も内訳に出ます。
そのうえで、手当がなくなっても取り返せる年収がいくらかを逆算します。 手当の影響が税金や社会保険より大きい場合は、結果にもそう出ます。何がいちばん効いているのかが分かれば、確認する先も決まります。
手当の条件がまだ分からない場合でも、ひとまず0円のまま計算してみてください。 税金と社会保険だけでどう動くかが分かります。 そのあとで手当の条件を確認して入れ直せば、どれだけ結論が変わるかが見えます。 差が大きければ、その手当こそが自分の世帯にとっての本当の「壁」だった、ということになります。
