結論から
株式や投資信託とは、計算のしかたがまったく違います。 同じ「投資の利益」でも、扱いが別だと考えてください。
ここでは、どの場面で税金の対象になるのか、 いくらぐらい引かれるのか、何を記録しておく必要があるのかを順に見ます。
税金の対象になる場面
いちばん誤解が多いのがここです。 円に換えたときだけが対象だと思っていると、申告が漏れます。
円やドルに換えたときはもちろんですが、別の暗号資産に交換したときも、利益が確定したものとして扱われます。持っているビットコインで別の通貨を買った場合、 その時点でビットコインを売って買い直したのと同じ扱いになります。
支払いに使った場合も同じです。 暗号資産で商品を買うと、その暗号資産を時価で売って その代金で買い物をした、という形に整理されます。
共通しているのは、手元に円が入っていなくても対象になることです。 交換や支払いでは現金を受け取っていないのに、 税金を納める必要が出てきます。ここが資金繰りの問題につながります。
交換のときに厄介なのは、いくらの利益が出たかが見えにくいことです。 円を経由していないので、画面上は数字が入れ替わっただけに見えます。 けれど計算のうえでは、交換した時点の時価で売ったことになります。その時価を記録していないと、あとから計算できません。
逆に、買って持っているだけなら対象になりません。 値上がりして含み益が大きくなっていても、 何もしていなければ、その年の申告には出てきません。
給与と足してから計算される
株式や投資信託の利益は、ほかの所得と分けて計算します。 給与がいくらであっても、投資の利益にかかる率は変わりません。
暗号資産は違います。給与などと足したうえで計算されます。
足してから計算するということは、もともとの所得が高い人ほど、同じ利益でも引かれる額が大きくなるということです。所得が増えるほど税率が上がる仕組みだからです。
この違いが効くのは、利益が大きい年です。 少額なら株式との差は小さく収まりますが、 利益が増えるほど適用される率が上がるので、同じ利益でも、株式で得た場合と手元に残る額が変わります。大きな利益が見えてきた時点で、一度確かめておくのが安全です。
さらに住民税もかかります。 所得税と住民税を合わせると、所得の高い層では 株式の利益にかかる率よりかなり重くなります。
| 株式・投資信託 | 暗号資産 | |
|---|---|---|
| 計算のしかた | ほかの所得と分ける | ほかの所得と足す |
| 税率 | 利益の額によらず一定 | 所得が増えるほど上がる |
| 給与が高い人 | 率は変わらない | 率が上がる |
| NISAの対象 | 対象になる商品がある | 対象外 |
具体的な率は所得の額によって変わるので、ここでは書きません。 国税庁の速算表で、自分の所得に対応する率を確かめてください。「だいたい2割」という感覚で見積もると、足りなくなることがあります。
損失を翌年に持ち越せない
株式では、損失が出た年に申告しておけば、 その損失を翌年以降の利益と相殺できます。 値動きの大きい資産では、この仕組みが効きます。
暗号資産では、これができません。下げた年の損失は、その年で終わります。
値動きが荒い資産ほど、この差は大きくなります。 ある年に大きく下げ、次の年に同じだけ戻ったとします。 2年を通せば損得ゼロですが、 税金の計算では、下げた年は0、戻った年は利益として扱われます。
- 下げた年の損失は、翌年の利益と相殺できない
- 株式の損失と相殺することもできない
- 同じ年の中で、暗号資産どうしの損益は合算できる
3つ目は覚えておいて損はありません。 同じ年に利益が出たものと損が出たものがあれば、 その年の中では差し引きできます。 売る時期を年内にそろえるかどうかで、結果が変わることがあります。
もう一つ、株式との相殺もできません。 株式で損が出た年に暗号資産で利益が出ていても、 その2つを差し引きすることはできない、ということです。別々の入れ物として計算されると考えてください。
計算に必要な記録
利益を出すには、買ったときの値段が必要です。 売った額から、買った額を引いたものが利益になります。
何度も売り買いしていると、この計算がかなりの手間になります。 同じ通貨を複数回に分けて買っていれば、どの分を売ったことにするかの決まりに沿って計算する必要があります。
分けて持っているほど、この手間は増えます。 複数の取引所を使い、さらに自分の財布にも移していると、 全部を1つにまとめて計算する必要があります。持ち場所を増やすほど、年に一度の作業が重くなります。管理のしやすさも、始めるときに考えておく価値があります。
取引所が年間の記録を出してくれることもあります。 ただし複数の取引所を使っていれば、自分でまとめることになります。 自分の財布に移して管理している分があれば、それも自分で追う必要があります。
- いつ、いくらで、どれだけ買ったか
- いつ、いくらで、どれだけ売ったか、または交換したか
- そのときの円換算の値段。ドル建てで取引していれば為替も必要
3つ目は見落とされがちです。 海外の取引所でドル建てで取引していれば、 その時点の為替で円に直したうえで計算します。 記録が残っていないと、あとから復元するのは容易ではありません。
記録を助ける道具もあります。 取引所の履歴を読み込んで、年間の損益を計算してくれるものです。 ただし読み込める形式は道具によって違うので、 使うつもりなら早めに試して、 自分の取引所に対応しているかを確かめておいてください。
取引の数が少ないうちに、記録の付け方を決めておくのが確実です。 あとから数年分をまとめようとすると、 取引所の履歴が取り出せなくなっていることもあります。
納める資金を先に分けておく
最後に、実務でいちばん困りやすい点です。
税金を納めるのは、利益が出た年の翌年です。 その間に値段が下がっていても、納める額は利益が出た時点で決まっています。
年内に大きな利益が出て、そのまま持ち続け、 翌年の納付までに値段が半分になった、という場合でも、 納める額は変わりません。売って現金を作ろうとしても、 そのときには足りないことがあります。
- 利益が確定した時点で、納める額の見当をつける
- その分を円に換えて、別に分けておく
- 翌年の納付まで、その資金には手をつけない
住民税は、さらに遅れて請求が来ます。 利益が出た翌年の6月から、その次の年の5月にかけて納めます。 所得税を納め終わったあとに、もう一度請求が来る形です。納め終わったつもりでいると、翌年また払うことになります。
交換や支払いで利益が確定した場合は、特に注意が要ります。 手元に円が入っていないのに納税の義務だけが生まれるので、 自分で円を用意する必要があります。
利益が大きくなりそうな年は、 売る時期を年をまたいで分けるという考え方もあります。 足してから計算する仕組みなので、 1年に集めるより分けたほうが率が下がることがあります。 ただし値段は待っているあいだにも動くので、 税だけを見て決めると別の損をすることもあります。
そもそも投じる額を抑えておけば、この問題も小さくなります。自分の金額で試算すると、耐えられると答えた額から逆算した上限が出ます。
税の扱いは改正されることがあります。 ここに書いたのは現在の一般的な整理なので、 実際の申告では、その年の国税庁の案内を確かめてください。 金額が大きい場合は、税理士に相談するほうが確実です。
