結論から
値上がりの話ばかりが目に入りますが、 持ち続けられるかどうかを決めるのは下げたときの深さです。 ここでは、何を持つことになるのかと、その荒さを先に見ます。
否定するための記事ではありません。 性質を知ったうえで、いくらまでなら持てるかを自分で決めるための材料です。
何を持っていることになるのか
ビットコインを買うと、手元に何かが届くわけではありません。 「この番号のビットコインは、この人のもの」という記録が、 世界中のコンピュータに分散して保管されます。
この記録を書き換えるには、参加している多数のコンピュータの同意が要ります。 特定の会社や国が勝手に増やしたり、記録を消したりできない作りです。 発行できる総量にも上限が決められています。
裏を返すと、困ったときに保証してくれる相手がいません。銀行預金なら預金保険があり、株式なら会社の資産や利益が裏付けになります。 ビットコインには、そのどちらもありません。
| 銀行預金 | 株式 | ビットコイン | |
|---|---|---|---|
| 裏付け | 銀行と預金保険 | 会社の利益と資産 | なし |
| 持っている間の収入 | 利息 | 配当 | なし |
| 価格の手がかり | 元本は動かない | 業績・利回り | 買いたい人の量だけ |
| 取れる期間 | 長い | 長い | 2014年ごろから |
いちばん右の列に、価格の手がかりがありません。 これが、あとで見る値動きの荒さにそのままつながります。
期間の短さも押さえておきたい点です。 株式の指数なら数十年ぶんの記録があり、 好況も不況も戦争も、ひととおり通ってきた実績が残っています。 ビットコインが値段のつくものとして取引されるようになったのは そこからずっと後で、まだ十数年ぶんしかありません。
十数年のあいだに起きたことだけを見て 「こういう資産だ」と決めるのは、材料としては足りません。 金利が高い時代を経験していない、といった空白もあります。過去の値動きから読み取れることが、株式より少ない資産です。
持っていても、何も生まない
株式には配当が、債券には利息が、不動産には家賃があります。 値段が動かなくても、持っているだけでお金が入ってきます。
ビットコインにはそれがありません。金と同じで、増えるのは値段が上がったときだけです。 1年持っても、値段が変わらなければ資産は1円も増えていません。
この性質は、長く持つ理由の作り方に効いてきます。 配当が入る資産なら「値段が戻らなくても配当は入る」と考えられますが、 ビットコインで下げた期間は、ただ待つ期間になります。
収入を生まないことは、税金の面でも効いてきます。 配当や利息があれば、受け取るたびに少しずつ課税されますが、 その分は手元に残ります。ビットコインでは、 売るまで手元に何も入らないかわりに、 売った年にまとめて課税されることになります。
下げの深さが、株とは桁違い
ここがいちばん大事なところです。 ビットコインは、株式の指数とは比べものにならない深さで下げてきました。
高値から8割ちかく下げた局面が、過去に複数回あります。 株式の指数で「大暴落」と呼ばれる下げが4割から5割ですから、 その倍近い深さです。
深さがなぜ効くかというと、戻るのに必要な上げ幅が、下げ幅より大きくなるからです。 半分になったものは2倍にならないと戻りません。 8割下げたなら、5倍にならないと元の値になりません。
| 下げ幅 | 元に戻るのに必要な上げ幅 |
|---|---|
| −20% | +25% |
| −50% | +100% |
| −80% | +400% |
| −90% | +900% |
この表は算数なので、どの資産でも同じです。 違うのは、ビットコインでは下の2行が実際に起きているという点です。
もう一つ、深い下げが厄介なのは、 途中で売ってしまう人が多いことです。 8割減った画面を毎日見ながら数年待つのは、 数字で見るよりずっと難しいことです。下げに耐えられなかった場合、戻ってきても手元には残りません。耐えられる額かどうかは、この点まで含めて考えてください。
そして戻るまでの時間も長くなります。 過去には、高値を取り戻すまでに3年ほどかかった局面がありました。 その間ずっと、含み損を抱えたまま持ち続けることになります。
自分の金額でどれくらい減るのかは、ビットコインに投資していたら今いくらかを試算すると、過去にいちばん沈んだ局面の減り方が円で出ます。
税金の扱いが重い
日本では、ビットコインの利益は原則として雑所得になります。 株式や投資信託の利益とは、計算のしかたが違います。
| 株式・投資信託 | ビットコイン | |
|---|---|---|
| 所得の区分 | 申告分離課税 | 雑所得(総合課税) |
| 税率の考え方 | 利益に対して一定 | ほかの所得と合算して累進 |
| 損失の繰り越し | できる | できない |
| NISAの対象 | 対象になる商品がある | 対象外 |
いちばん効くのは2行目です。 給与などほかの所得と合算されるため、利益が大きいほど税率も上がります。株式の利益にかかる率と比べて、負担が重くなることがあります。
3行目も見落とされがちです。 株式なら損失を翌年以降に繰り越して、将来の利益と相殺できます。 ビットコインではそれができません。 下げた年の損失は、その年で終わります。
利益を計算するには、買ったときの値段を1件ずつ記録しておく必要があります。 何度も売り買いしていると、その計算だけでかなりの手間になります。 取引所が年間の記録を出してくれることもありますが、 複数の取引所を使っていれば自分でまとめることになります。
さらに、ビットコインを別の暗号資産に交換したときにも 利益が確定したものとして扱われます。 売って円にしていなくても、税金の対象になる場合があります。
持つなら、いくらまでか
ここまでを整理すると、判断すべきことは1つに絞れます。8割下げても生活が続く額はいくらか、という問いです。
- 生活費や近く使う予定のお金は、そもそも対象にしない
- その残りの中で、8割減っても持ち続けられる額を考える
- 戻らなかった場合を想定して決める。戻る前提で決めない
割合で決める方法もあります。 資産全体の数%までと決めておけば、値上がりした年には自然と割合が上がるので、 その都度いくらか売って元の割合に戻すことになります。 上がったときに一部を利益として確定させる仕組みが、 あらかじめ入っている形です。
この順番で考えると、多くの人にとって金額はかなり小さくなります。 それが正しい結果です。値動きの荒さに対して、 耐えられる額のほうが先に上限を決めます。
積立で買う方法もあります。買う時期を分けることで、 高いところでまとめて買ってしまう危険は薄まります。 ただし、値動きの荒さそのものが小さくなるわけではありません。積立は、買う値段をならす方法であって、下げを防ぐ方法ではありません。8割下げる局面では、積み立てた分もまとめて8割減ります。
取引所を選ぶときは、国内で登録を受けている業者かどうかを確かめてください。 過去には、取引所が破綻して預けた分が戻らなかった例があります。 自分で鍵を管理する方法もありますが、鍵を失えば取り戻す手段はありません。
持っていることを家族が知らないと、 万一のときに誰も取り出せなくなる点も、ほかの資産とは違います。 預金や証券口座は手続きをたどれますが、 自分で鍵を管理していた場合、その鍵を知る人がいなければ そこで終わりです。どこに何があるかは残しておいてください。
いくらまで投じてよいかは、こちらでは決められません。自分の金額で試算すると、耐えられる下落から逆算した上限が算数で出ます。
