債券の説明でつまずくのは、数字が2つ出てくるところです。 表面利率と利回り。似た言葉ですが、片方は買ったあと変わらず、もう片方は毎日動きます。
この2つを混ぜたまま読むと、「利回りが上がったのに損した」という 矛盾に見える場面が出てきます。矛盾ではありません。 上がったのは市場の利回りで、自分が受け取る利息はそのままだからです。
表面利率と利回りは別のもの
| 何を表すか | 買ったあと | |
|---|---|---|
| 表面利率 | 額面に対して毎年払われる割合 | 変わらない |
| 最終利回り | いまの価格で買って満期まで持った場合の年あたりの収益率 | 買った時点で決まる |
| 市場の利回り | いま同じ年限を買うならいくらの収益率か | 毎日動く |
受け取る利息の額は、表面利率と額面だけで決まります。 いくらで買ったかは関係ありません。安く買った人も高く買った人も、受け取る利息は同じ額です。
だから、表面利率だけを見て2本の債券を比べても意味がありません。 利率3%で額面より高い債券と、利率2%で額面より安い債券のどちらが有利かは、最終利回りを見るまで分かりません。 証券会社の一覧で並べ替えるときも、そこを基準にします。
動かないほうと、動くほう
表面利率が動かないのに、市場の利回りは動く。 この2つのつじつまを合わせているのが価格です。
市場の利回りが表面利率より高くなれば、その債券は見劣りします。 同じ価格では買い手がつかないので、価格が下がります。 下がったぶんだけ満期の差益が乗るので、合計するとちょうど市場の利回りに並びます。
この調整は、誰かが決めているわけではありません。 高すぎれば買い手がつかず、安すぎれば買い手が殺到する。 売り買いの結果として、そこに落ち着くという形です。 だから価格は毎日動き、同じ銘柄でも買う日によって最終利回りが変わります。
額面より安く買う場合
額面100のものを98で買ったとします。 満期には100が戻るので、利息とは別に2だけ増えます。
この2は、受け取る利息が市場より低いことの埋め合わせです。 表面利率が低い債券は、そのままでは選ばれません。 だから価格が下がって、満期の差益で足りない分を補う形になります。
この形は、古い時期に発行された債券でよく起こります。 金利が低いころに出た債券は表面利率が低いので、 いま買うなら額面より安い価格になる。安いのは訳ありだからではなく、条件をそろえた結果です。
受け取る利息は少ないが、満期に差益が出る。合わせた結果が最終利回りで、そこで初めて他の債券と比べられます。
この形には、税金の面で違いが出ることがあります。 利息として受け取る分と、満期の差益として受け取る分では、 扱いが分かれるためです。くわしくは米国債の税金で扱っています。
額面より高く買う場合
逆に102で買えば、満期に戻るのは100までです。差の2は戻りません。
金利が高い時期に出た債券が、そのあと金利が下がってから買われる場合がこれです。 受け取る利息が市場より多いぶん、価格が上乗せされています。
単価の表示は、額面100あたりの数字になっていることが多くなります。 「101.20」なら額面より高く、「98.40」なら安い。 この1つを見るだけで、満期に差益が出る形か、差額を諦める形かが分かります。
金利が上がると価格が下がる理由
ニュースで「金利上昇で債券が下落」と聞くと、 持っている債券に何か起きたように感じます。実際には何も起きていません。
変わったのは新しく出る債券の条件です。 より高い利息を払う債券が出れば、古い債券は同じ価格では売れません。 利息の差が埋まるところまで価格が下がります。
この言い方をすると当たり前に聞こえますが、 運用報告書に「評価損」と書かれると別のことのように見えます。 満期まで持つ前提なら、その評価損は満期に向かって消えていきます。 額面に戻るところが決まっているためです。
持ち続けるなら関係ない
価格が下がっても、受け取る利息は変わりません。 満期に戻るのも額面のままです。この下落が結果に効くのは、途中で売るときだけです。
逆に金利が下がれば、持っている債券の価格は上がります。 こちらも、売らなければ受け取る額は変わりません。 評価額が増えたように見えても、満期まで持てば戻るのは額面です。上がっても下がっても、持ち切る人には同じ結果になります。
残りの期間が長いほど、大きく動く
同じ金利の変化でも、価格の動き方は年限によって違います。 残りが長いほど、大きく動きます。
理由は単純で、影響を受ける回数が違うからです。 残り1年なら、見劣りする利息を受け取るのはあと1〜2回。 残り10年なら20回です。埋め合わせに必要な値下がりも、そのぶん大きくなります。
この性質は、金利が下がる局面では逆に働きます。 長い年限のほうが値上がりも大きくなる。 ただしそれを狙うのは、満期まで持つのとは別のやり方です。 ToMiの試算は満期保有だけを扱っていて、値上がり益は見込んでいません。
だから、長い年限ほど途中で売るときの振れが大きくなります。 満期まで持ち切るつもりなら関係ありませんが、 持ち切れるか自信がないなら、年限を短くするほうが振れは小さくなります。
利回りは長い年限のほうが高いことが多く、そこだけ見ると10年が有利に見えます。 ですが、その高さは長く預けることへの対価でもあります。高い利回りと、途中で売れない不自由さは、同じものの表と裏です。
ToMiの参考利回りは、買える利回りではない
ToMiが試算に使っているのは、米財務省が公表している期間別の参考利回りです。 市場の気配値から算出したもので、実在する1本の約定利回りではありません。
証券会社の画面に出ている利回りは、その会社が持っている銘柄の 価格から計算されたものです。だいたい近い水準になりますが、 一致はしません。銘柄によっても違います。
差が出る理由はいくつかあります。扱っている銘柄の残り期間が きれいに2年・5年・10年とは限らないこと、売買のコストが価格に含まれること、 在庫の量によって条件が変わること。どれも会社ごとの事情です。
そのためToMiでは、証券会社に表示された利回りを入れて 計算し直せるようにしてあります。実際に買う段になったら、 そちらの数字で確かめてください。
それでも参考利回りを置いているのは、おおよその水準を知らないまま証券会社の画面を開くと、 そこに出ている数字が高いのか低いのか判断できないためです。 目安として持っておいて、実際の条件で置き換える。この順番で使ってください。
実際の条件で計算する
価格と利回りの関係が分かっても、円でいくらになるかは別の話です。 そこにはさらに為替が乗ります。
しかも為替は、価格の上下より大きく動くことがあります。 単価が1〜2動くことを気にしていても、 ドル円が1割動けばそちらのほうがはるかに効きます。
ToMiでは実際の購入利回りを入れて、円預金と円換算で比べることができます。 利回りを変えると、円預金と並ぶドル円も一緒に動きます。
登録は要りません。入力したデータはブラウザの中だけに残ります。 いまの参考利回りは米国債の参考利回りで、途中で売る場合の話は途中で売るとどうなる?で扱っています。
