米国債は、アメリカが借りるために発行する債券です。 国債という言葉から日本の個人向け国債を思い浮かべると、 いくつか噛み合わないところが出てきます。いちばん違うのは、お金の単位がドルであることです。
米国債とは何か
国がお金を借りるときに出す証書です。 買った人は貸した側になり、決まった利息を受け取って、 満期に貸した額が戻ってきます。この骨格は日本の国債と同じです。
違うのは通貨です。額面もクーポンもドルで決まっているので、 日本に住んでいる人が買うときは、まず円をドルに替えることになります。この一手が入るぶん、見るものが1つ増えます。
もう1つ、日本の国債と違って発行の量が桁違いに多く、 売り買いする人も世界中にいます。だから途中で売りたいときに買い手がつきやすく、 いくらで売れるかも市場で決まります。売れないから困る、という形の詰まり方はしにくい商品です。 ただし「売れる」ことと「損せずに売れる」ことは別です。
もう1つ、日本の個人向け国債との違いがあります。 個人向け国債は途中で換金しても額面が戻る仕組みになっていますが、 米国債にその仕組みはありません。売るときは市場の価格になります。
発行しているのはアメリカ財務省です。買い方は2つあり、 財務省が直接売っているものを買う方法と、日本の証券会社を通す方法があります。 日本に住んでいる人が現実に使うのは後者で、その証券会社が在庫として持っている銘柄の中から選ぶことになります。 どの年限のものが並んでいるかは会社によって違います。
受け取り方で3つに分かれる
期間で名前が変わりますが、分け目は期間そのものではなく、利息をどう受け取るかです。
| 種類 | 期間 | 利息の受け取り方 |
|---|---|---|
| Bills | 4週〜52週 | 受け取りなし。安く買って額面が戻る |
| Notes | 2・3・5・7・10年 | 半年ごとに現金で |
| Bonds | 20年・30年 | 半年ごとに現金で |
Billsだけ形が違います。利息を払うかわりに、 額面より安い価格で売り出され、満期に額面が戻ります。 その差額が利息にあたる、という組み立てです。
ToMiが比較に使っているのはNotesの2年・5年・10年です。 Billsは1年以内で、円預金と何年も置き換えて比べる相手になりません。 Bondsの20年・30年は、途中で売るときの価格の振れ方が大きくなり、 満期まで持ち切る前提そのものが置きにくくなります。
利息は半年ごとに現金で入る
NotesとBondsは、満期までのあいだ半年ごとに利息が入ります。 満期にまとめて受け取るのではありません。
ここは見落とされやすいところです。 「利回り4%」と聞くと、預けた額が毎年4%ずつ膨らんでいく絵を思い浮かべますが、入ってくるのは現金で、元本のほうは増えません。 膨らませたければ、受け取った利息をまた何かに回す必要があります。
利息の額は、額面に表面利率をかけて半分にしたものです。 半年ごとなので1回あたりは年の半分になります。 買った価格ではなく額面を基準に計算されるので、 安く買った人も高く買った人も、受け取る利息の額は同じです。
受け取るたびにドルが手元に増えていく、という形も見落とされます。 円で使うつもりなら、そのたびに円へ戻すか、ドルのまま置いておくかを決めることになります。半年ごとに為替の判断が来ると考えると、実際の使い勝手に近くなります。
満期になると何が起こるか
満期日に、額面が戻ります。買った価格ではなく額面です。
ここが債券の分かりにくいところで、買う価格と戻る額は別です。 額面100の債券を98で買えば、満期には100が戻ります。 102で買えば、満期に戻るのは100までです。
もう1つ、満期日は買う前から決まっています。 「そろそろ売ろうか」と考える余地がないぶん、予定を立てやすい商品です。 使う時期が決まっているお金なら、その時期に近い年限を選ぶことで、 途中で売る場面そのものを避けられます。
なぜ額面ちょうどで買えないことがあるのかは、利回りと価格の関係で扱います。ここでは「戻るのは額面」とだけ覚えておけば足ります。
利率は買ったあと変わらない
債券の利率は入札で決まり、そのあとは満期まで変わりません。 決まった額が半年ごとに入り続けます。
変動金利のように見直される仕組みではないので、受け取る利息の額は、買った時点で最後まで決まります。 これは強みでもあり、弱みでもあります。 市場の金利が上がっても、自分の受け取る額は増えません。
円預金と比べると、この性質は逆向きに働きます。 普通預金の金利は上がることも下がることもありますが、 米国債は買った時点で固定されます。先が読める代わりに、いい方向にも動かないという組み合わせです。 どちらが向いているかは、金利の予想ではなく、 決まっていることが役に立つ場面かどうかで決まります。
変わるのは価格のほう
利率が動かないぶん、市場の金利が動くと価格が動きます。 金利が上がれば、いま持っている債券の価格は下がります。 満期まで持ち切るなら関係のない話ですが、 途中で売るなら、ここがそのまま受取額になります。
逆に、金利が下がれば価格は上がります。 自分の受け取る利息は変わらないのに、その債券を欲しがる人が増えるためです。 ただし価格が上がったからといって、売って利益にするのが得とは限りません。売ったあと、同じ利回りで買い直せるとは限らないからです。
満期を待たずに売ることもできる
米国債は満期前でも売れます。ただし戻るのは額面ではなく、そのときの市場価格です。
日本の個人向け国債は、発行から1年たてば額面で買い取ってもらえます。 同じ「国債」でも、この点は正反対です。 個人向け国債の中途換金は額面が守られ、米国債の途中売却は守られません。
守られないぶん、価格が上がっているときに売れば額面より多く受け取れます。 個人向け国債では起こらないことです。上にも下にも振れるのが、市場で売買される債券の性質になります。
ドルで見るか、円で見るか
ここまでの話は全部ドルの中で完結しています。 ドルで買い、ドルで利息を受け取り、ドルで額面が戻る。
ですが日本で暮らしていれば、使うのは円です。 円をドルに替えて買い、戻ったドルをまた円に替えることになります。為替は入口と出口の2回かかります。
この2回に加えて、半年ごとの利息にも為替がかかります。 受け取るのはドルなので、円で使うならそのたびに替えることになります。 回数が増えるほど、平均すると1回のレートに振り回されにくくなりますが、 手間のほうは増えます。
円に戻す前提でないなら、話は変わります。 留学の費用や海外への支払いなど、ドルのまま使う予定があるなら、 見るのは円換算ではなく、満期に手元へ残るドルの額です。 自分がどちらなのかを先に決めておくと、比べる相手が決まります。
そのため、ドル建てで増えていても円では減っていることがあります。 利回りの高さだけを見て判断すると、この部分が抜けます。 くわしくは米国債の為替リスクで扱います。
自分の金額で確かめる
仕組みが分かっても、自分の金額でいくらになるかは別の話です。 金額と年数が決まれば、そこは計算できます。
ToMiでは円預金のままにした場合と、円換算で並べて比べることができます。 利回りとドル円は公表値を入れてあるので、金額と年数だけで結果まで出ます。
登録は要りません。入力したデータはブラウザの中だけに残ります。 いま何%かは米国債の参考利回りで見られます。
