米国債は満期前でも売れます。買い手がつかずに困る、という詰まり方はしません。 ただし戻ってくるのは額面ではなく、そのときの市場価格です。
この一点で、日本の個人向け国債とはまったく別の商品になります。 同じ「国債」という言葉で呼ぶので混ざりやすいのですが、 途中でやめたときの扱いが正反対だと考えてください。
売れるが、額面では戻らない
米国債は世界中で売買されていて、売りたいときに買い手が見つかります。 その意味では換金しやすい商品です。
ただし日本の証券会社を通して持っている場合は、 その会社が買い取ってくれるかどうかという話になります。 扱いは会社ごとに違うので、買う前に途中で売れるか、売るときの条件はどうかを確かめておいてください。
問題は値段のほうです。売買される以上、価格は需要と供給で決まります。買ったときと同じ価格で売れる保証はありません。
すでに受け取った利息は、そのままです。 売ったからといって返すことにはなりません。 変わるのは元本にあたる部分の価格だけです。
正確には、前回の利払い日から売る日までの利息も精算されます。 その分は買い手が上乗せして払う形になるので、持っていた期間の利息が消えるわけではありません。 消えるかどうかが問題になるのは、価格のほうだけです。
個人向け国債とは、ここが正反対
日本の個人向け国債は、発行から1年たてば額面で買い取ってもらえます。 直前2回分の利子相当額は差し引かれますが、元本そのものは守られます。
| 個人向け国債 | 米国債 | |
|---|---|---|
| 途中で換金 | できる(1年経過後) | できる |
| 受け取る額 | 額面 | そのときの市場価格 |
| 差し引かれるもの | 直前2回分の利子相当額 | なし(価格に織り込まれる) |
| 額面を上回ることは | ない | ある |
守られないかわりに、価格が上がっていれば額面より多く受け取れます。 個人向け国債では起こらないことです。上にも下にも振れるのが、市場で売買される債券の性質です。
どちらが良いという話ではありません。 個人向け国債は「途中でやめても元本は守る」かわりに、 値上がりで得をすることもない設計になっています。 守りたいのか、振れを受け入れるのか。選ぶのはそこです。
比べるときは、この違いを利回りの差と一緒に見てください。 米国債の利回りが高いのは、通貨が違うことに加えて、 途中でやめたときに守られないことへの対価でもあります。
金利が上がっているとき
買ったあとに市場の金利が上がっていると、価格は下がっています。
理由は、新しく出る債券のほうが高い利息を払うからです。 自分の債券は見劣りするので、その差が埋まるところまで価格が下がります。 くわしくは利回りと価格の関係で扱っています。
もう1つ気をつけたいのが、評価額の見え方です。 証券会社の画面には、そのときの価格で計算した評価額が出ます。 満期まで持つつもりなら、そこがマイナスでも実現しません。見るべきなのは評価額ではなく、満期に戻る額のほうです。
金利が下がっているとき
逆に金利が下がっていれば、価格は上がっています。 そのまま売れば、額面より多く受け取れることになります。
得に見えますが、決める前に一つ確かめてください。売ったあと、そのお金をどこに置くのかです。
金利が下がっているということは、いま買える債券の利回りも下がっています。 同じ条件で買い直すことはできません。 値上がり分を受け取るかわりに、以降の利息が減る形になります。
その意味では、値上がりは「先に受け取っただけ」に近いものです。 満期まで持てば受け取れたはずの利息が、価格に前倒しで乗っている。 売って手にする現金は、将来の利息と入れ替えたものだと考えると、 得をしたかどうかの判断が変わってきます。
残りの期間で、振れ幅が変わる
同じ金利の変化でも、価格の動き方は残りの期間で違います。残りが長いほど、大きく動きます。
残り1年なら、見劣りする利息を受け取るのはあと1〜2回です。 残り10年なら20回。埋め合わせに必要な値下がりも、そのぶん大きくなります。
だから、途中で売る可能性があるなら、年限は短いほうが振れは小さくなります。 利回りは長いほうが高いことが多いのですが、 その高さは長く預けることへの対価でもあります。
途中で売る可能性の大きさは、自分でだいたい分かります。 いつ何に使うかが決まっていない資金ほど、その可能性は高くなります。 決まっていないなら短めを選んでおいて、 満期が来たときにもう一度考えるという進め方もあります。
為替と重なると、二重に効く
ここまでの話は全部ドルの中です。 円で見る場合、これに為替が重なります。
| 満期まで持つ | 途中で売る | |
|---|---|---|
| 見るもの | 為替だけ | 為替と価格 |
| 価格の変動 | 結果に入らない | そのまま乗る |
| 予定の立てやすさ | 立つ | 立たない |
金利が上がっている局面で円高になっていれば、両方が同じ向きに効きます。価格で減り、為替でも減る。満期まで持つ前提の試算が当てにならないのは、この場合です。
逆に、両方が有利な向きに揃うこともあります。 金利が下がって価格が上がり、同時に円安になっていれば、 円換算では大きな差になります。どちらに転ぶかは選べません。それが2つ抱えるということです。
ToMiの試算が満期保有だけを扱っているのは、 途中売却の価格を出すには将来の市場金利が必要になるためです。 それは予想の領域なので、出していません。
言い換えると、ToMiの結果は「満期まで持てた場合の話」に限られます。 持てるかどうかが怪しいなら、その結果は自分の話ではありません。前提が合っていない試算は、精度以前に使えません。
どのお金なら入れてよいか
ここまでを裏返すと、入れる金額の線が引けます。
入れないほうがよいもの
生活防衛資金と、数年内に使う予定が決まっているお金です。 必要になる時期を選べないので、そのときの価格を受け入れるしかありません。
「たぶん使わないと思う」という程度なら、入れないほうが無難です。 使わずに済めば損は出ませんが、使うことになった年に 価格と為替が両方とも不利だと、そこで判断そのものを後悔することになります。
入れてよいもの
満期まで手をつけずにいられるお金です。年限は、利回りではなく持ち切れる年数で選びます。5年なら持てるが10年は分からない、というときは5年にする。
金額を分ける手もあります。全部を1本にせず、 2年と5年に分けておけば、2年後に一度まとまった現金が戻ります。 そこで使うか、買い直すかを選べる。 満期の時期をずらしておくと、途中で売る場面を減らせます。
満期まで持てるか確かめる
持ち切れるかどうかは、商品の性能ではなく自分の資金の性格で決まります。 そこを先に確かめてから、利回りを見るのが順番です。
逆にしてしまうと、利回りの高さに合わせて 「たぶん持てるはず」と後から前提のほうを寄せることになります。 決める順番だけで、結果はずいぶん変わります。
ToMiでは満期まで持てるかを含めて、自分に合うかを確かめることができます。 生活防衛資金が別に残るか、途中で使う可能性があるかを聞いたうえで、 満期保有の試算をそのまま当てにしてよいかを出します。
登録は要りません。入力したデータはブラウザの中だけに残ります。 満期まで持った場合の話は満期まで持てば元本割れしない?で扱っています。
