退職金・退職後

退職所得控除とは?

退職金がそのまま課税されることはありません。まず退職所得控除を引き、残った額の半分だけが課税の対象になります。この二段構えが、退職金の税を軽くしています。

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この記事の要点

  • 退職所得控除は、勤続20年までが1年40万円、20年を超えた分が1年70万円です。20年のところで単価が変わります。
  • 勤続年数は1年未満を切り上げます。34年と1か月なら35年で数えます。
  • 控除を引いた残りの2分の1だけが課税の対象です。同じ額の給与や年金より税が軽くなるのはこのためです。
  • 勤続5年以下だと2分の1にできる範囲に制限があります。役員等はそもそも2分の1にできません。
  • 退職所得は他の所得と分けて計算します。その年の給与が高くても税率が上がりません。
  • 「退職所得の受給に関する申告書」を出さないと、控除を使わずに源泉徴収されます。

税は二段構えで軽くなる

退職金は、受け取った額にそのまま税金がかかるわけではありません。まず退職所得控除を引き、残った額の2分の1だけが課税の対象になります。 この二段構えがあるため、同じ額の給与や年金より税がかなり軽くなります。

控除を引いて、残りの半分だけが課税される退職金2,000万円控除を引く退職所得控除 1,800万円課税の対象残り200万円の半分=100万円だけ
退職金がそのまま課税されるわけではありません。まず退職所得控除を引き、残った額の2分の1だけが課税の対象になります。この二段構えがあるため、同じ額の給与や年金より税が軽くなります。勤続5年以下の場合は、この2分の1に制限があります。

長く勤めた人ほど控除が大きくなる仕組みなので、 勤続年数が長ければ退職金の全額が控除に収まり、 税金がまったくかからないことも珍しくありません。 逆に勤続が短いと控除が小さく、思ったより引かれます。

税額を左右するのは、退職金の額と勤続年数の2つです。 額だけを見ても、どれくらい引かれるかは決まりません。

なぜここまで優遇されているのか。退職金は、長年働いた対価が一度に支払われるものだからです。 その年の所得として普通に課税すると、累進課税のせいで一度きりの収入に高い税率がかかります。 働いていた年数に分けて受け取っていれば、もっと低い税率で済んだはずのものです。 その不都合をならすために、控除と2分の1という2つの仕組みが置かれています。

この考え方が分かると、勤続年数が効いてくる理由も納得できます。 長く働いた人ほど「本来なら何年にも分けて受け取っていたはずの額」が大きいので、 その分だけ差し引く枠も大きくなります。逆に短期間で受け取る場合は、 ならす必要がそもそも小さいため、控除も小さく、後で見る例外規定も付いています。

勤続20年で、単価が変わる

退職所得控除は「勤続年数 × 一定額」だと思われがちですが、20年のところで単価が変わります。 20年までは1年あたり40万円、20年を超えた分は1年あたり70万円です。

退職所得控除は、勤続20年で単価が変わる20年1年40万円1年70万円800万円2,060万円控除額勤続年数
勤続20年までは1年あたり40万円、20年を超えた分は1年あたり70万円で計算します。直線ではなく、20年のところで角度が変わります。長く勤めた人ほど、この折れ目のぶん控除が大きくなります。
勤続年数計算控除額
10年40万円 × 10年400万円
20年40万円 × 20年800万円
30年800万円 + 70万円 × 10年1,500万円
38年800万円 + 70万円 × 18年2,060万円

勤続年数と退職所得控除額

この折れ目を知らないと、長く勤めた人ほど控除を少なく見積もります。 勤続38年なら控除は2,060万円で、退職金がそれ以下なら税金はかかりません。 「退職金には2割くらい税金がかかる」という感覚は、 多くの会社員にとって当てはまりません。

折れ目より前と後で、1年の重みが1.75倍になります。 勤続19年から20年になると控除は40万円増えますが、 20年から21年になると70万円増えます。 あと1年勤めるかどうかを金額で考えるとき、この差は無視できません。

勤続2年未満で計算した控除額が80万円に満たない場合は、80万円になります。 短期間で辞めた場合の下限です。

勤続年数は切り上げる

勤続年数は1年未満の端数を切り上げます。 34年1か月なら35年です。1か月の差で控除が70万円変わるので、 退職日が年度末をまたぐかどうかで結果が動くことがあります。

数え方そのものは会社の退職金規程によります。 休職していた期間を含めるか、前の会社から転籍したときに通算するか、 といったところは制度ごとに違います。自分の勤続年数が何年として扱われるのかは、 規程か人事に確かめてください。ここがずれると、控除額が丸ごとずれます。

マネック案内役):1か月足りないだけで70万円ぶんの控除が消えるって、知らないと気づけないやつだよね。 退職日が選べるなら、そこも計算に入る話だと思う。

残りの半分だけが課税される

控除を引いても、まだ残りがある場合。その残った額の2分の1だけが課税の対象になります。 退職金2,000万円で控除が1,800万円なら、残りは200万円。 課税されるのはその半分の100万円です。

この100万円に、所得税の速算表と住民税10%がかかります。 所得税の税率は課税所得が小さいほど低いので、 半分にする効果はそのまま税率を下げる効果にもなります。 2,000万円という額に対して、実際の税額はごく小さくなります。

2分の1の効果は、控除を超える額が大きいほど強く効きます。 控除を1,000万円超えたとしても、課税されるのは500万円です。 所得税は課税所得が増えるほど税率が上がる仕組みなので、 半分にすることで掛かる税率そのものが一段下がることが多くあります。 控除で額を減らし、2分の1で税率も下げる。二重に効いているわけです。

この2つがあるおかげで、退職金は同じ額の給与や年金よりはるかに軽く済みます。 たとえば年収2,000万円の給与なら数百万円の税になりますが、 勤続の長い人の退職金2,000万円なら数万円か、ゼロで済みます。 「退職金にも税金がかかる」と身構えている人ほど、 実際の額を計算すると拍子抜けすることになります。

課税退職所得金額は1,000円未満を切り捨てます。 源泉徴収される所得税は1円未満切り捨て、住民税は100円未満切り捨てです。 細かい端数の扱いですが、源泉徴収票と突き合わせるときにずれる原因になります。

勤続5年以下には制限がある

2分の1にできるのは原則で、例外があります。勤続5年以下の場合です。

立場2分の1にできるか
役員等できない。控除を引いた全額が課税の対象
役員等以外300万円までの部分はできる。超える部分はできない

勤続5年以下の場合の扱い

短期間で高額の退職金を受け取る形にして税を軽くすることを防ぐための決まりです。 役員として就任して数年で退職する場合や、 転職を繰り返して各社から退職金を受け取る場合に効いてきます。

役員等以外の場合は、控除を引いた残りのうち300万円までは2分の1にできます。 超える部分だけが半分にならない、という段階的な作りです。 勤続5年以下でも、退職金がそれほど大きくなければ影響はありません。 一方、役員等は金額にかかわらず2分の1にできないので、同じ勤続年数・同じ額でも、立場によって税額が変わります

ここでいう「役員等」には、法人の役員のほか、国会議員・地方議会議員、 国家公務員・地方公務員が含まれます。 自分が該当するかどうかで税額が大きく変わるので、 勤続5年以下で受け取る場合は必ず確かめてください。

他の所得と分けて計算する

退職所得は分離課税です。給与や年金と合算しません。

これは軽視できない利点です。日本の所得税は累進課税なので、 所得が増えるほど税率が上がります。もし退職金がその年の給与と合算されたら、 退職した年だけ税率が跳ね上がることになります。 分離課税なので、そうなりません。

さらに、退職所得は健康保険料や介護保険料の算定にも含まれません。 一時金で受け取っても、翌年の保険料は上がらないということです。 年金で受け取る場合との差が、いちばん大きく出るのがここです。 詳しくは退職金を年金で受け取ると社会保険料が上がるに書いています。

申告書を出さないと、控除が使われない

ここまでの控除は、自動では使われません。「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に出す必要があります。

出さなかった場合、退職所得控除も2分の1も使わずに、 収入金額に対して一律20.42%が源泉徴収されます。 勤続38年で退職金2,000万円なら、本来は税額ゼロのところ、 400万円以上が引かれることになります。

出し忘れても取り戻せる

引かれすぎた分は、確定申告をすれば戻ります。 ただし自分から動かないと戻ってこないので、 源泉徴収票を見て、控除が使われているかを確かめてください。

確かめ方は簡単です。退職所得の源泉徴収票に、 支払金額と源泉徴収税額が並んでいます。 支払金額に対して税額が2割前後なら、申告書が処理されていない可能性があります。 勤続が長く、控除の範囲に収まる額なのに税が引かれていたら、そこを疑ってください。

この申告書は、退職金を受け取るまでに勤務先へ出すものです。 複数の会社から同じ年に退職金を受け取る場合は、それぞれに出す必要があります。 転職して短期間で辞めた場合など、忘れやすい場面があります。

自分の場合にいくら引かれるのか、年金で受け取る選択肢があるならどちらが多いのかは、退職金、一時金と年金どちらで受け取ると手取りが多い?で金額として出せます。

マネック案内役):退職金は受け取り方を一度しか選べないんだ。 しかも書類が来てから決めるまでが短い。 先に仕組みを知っておくと、そのとき慌てずに済むよ。

よくある質問

退職所得控除はいくらですか?
勤続20年までは1年あたり40万円、20年を超えた分は1年あたり70万円で計算します。勤続20年なら800万円、勤続34年なら800万円に70万円かける14年を足して1,780万円です。勤続2年未満で控除額が80万円に満たない場合は80万円になります。勤続年数は1年未満を切り上げて数えます。
退職金にはどのくらい税金がかかりますか?
退職金から退職所得控除を引き、残った額の2分の1が課税の対象になります。控除の範囲に収まれば税金はかかりません。課税の対象が出た場合は、そこに所得税の速算表と住民税10%がかかります。他の所得とは分けて計算するため、その年の給与が高くても税率は上がりません。
勤続年数はどう数えますか?
会社に勤めた期間で数え、1年未満の端数は切り上げます。34年1か月なら35年です。休職期間の扱いや、前の会社の勤続期間を通算できるかは退職金規程によって違います。勤務先に確かめてください。

参照した一次情報

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この記事は商品の仕組みを説明するものであり、 特定の商品の購入を勧めるものではありません。 個別の投資助言でもありません。制度や条件は変わることがあるため、実際のご判断にあたっては国税庁の退職金と税のページや、お取引先の金融機関で最新の条件をご確認ください。