退職金・退職後

退職金とiDeCoを受け取る年をずらすと何が変わる?

会社の退職金とiDeCo・企業型DCの一時金を同じ年に受け取ると、2つを足した額に対して退職所得控除を1回だけ使います。控除を2回使えるわけではありません。

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この記事の要点

  • 同じ年に受け取る退職手当等は合算し、1つの退職所得として計算します。控除は1回だけです。
  • 別の年に受け取っても、一定の期間内なら勤続期間の重なりぶん控除が減らされます。1年ずらせば分かれるわけではありません。
  • さかのぼる期間は、どちらを先に受け取るかで違います。順番によって結論が変わります。
  • DC一時金を先に受け取ってから退職金を受け取る場合の期間は、令和8年1月以後に支払われる退職手当等について延びました。
  • 会社の退職金を年金で受け取ると、それは退職所得になりません。その場合、退職所得控除はDC一時金がまるごと使えます。
  • 受け取る年を変えるだけなので、受け取り方そのものを変えなくても税額が動きます。

同じ年なら、控除は1回だけ

会社の退職金と、iDeCo・企業型DCの一時金。 どちらにも退職所得控除が使えると聞いて、2回使えると思っている人が多くいます。使えません。

同じ年に受け取る退職手当等は、合算して1つの退職所得として計算します。 退職金2,000万円とiDeCo800万円を同じ年に受け取ったら、 2,800万円に対して控除を1回だけ使います。

同じ年に受け取ると、合算して1件として課税される同じ年に受け取る退職金 2,000万iDeCo 800万合わせて2,800万円に、控除は1回だけ年をずらす退職金(2026年)iDeCo(別の年)さかのぼる期間の外なら、それぞれで控除を使える
会社の退職金とiDeCo・企業型DCの一時金を同じ年に受け取ると、2つを足した額に対して退職所得控除を1回だけ使います。別々の年に受け取れば、それぞれで控除を使える場合があります。ただし、さかのぼって調整される期間があるので、1年ずらせば必ず分かれるわけではありません。

なぜこうなっているのか。退職所得控除は「長年の勤労に対する対価をならす」ための枠なので、 同じ勤労期間に対して二重に使えては筋が通りません。 会社に勤めた期間とiDeCoに加入していた期間は多くの場合重なっているので、 そこを1回分として扱う、という考え方です。

勤続34年なら控除は1,780万円です。2,800万円から引くと1,020万円が残り、 その半分の510万円が課税されます。 もし控除を2回使えるなら税はゼロですが、実際にはそうなりません。

ずらしても、さかのぼって調整される

では年をずらせば分かれるのか。1年ずらせば済む、という話ではありません

前に受け取った退職手当等がある場合、一定の期間内なら勤続期間が重なっている分だけ控除が減らされます。 会社に34年勤め、そのうち20年はiDeCoにも入っていた、という場合、 その20年ぶんが重なりとして扱われます。

退職所得控除は、勤続20年で単価が変わる20年1年40万円1年70万円800万円2,060万円控除額勤続年数
勤続20年までは1年あたり40万円、20年を超えた分は1年あたり70万円で計算します。直線ではなく、20年のところで角度が変わります。長く勤めた人ほど、この折れ目のぶん控除が大きくなります。

重なりの調整は、期間の重なりで決まります。 期間がまったく重なっていなければ、さかのぼる年数の中で受け取っても調整はありません。「同じ年かどうか」ではなく「期間が重なっているか」で決まる、 というところが分かりにくいポイントです。

調整のされ方は、重なった年数ぶんの控除額を引く形です。 20年重なっているなら、20年ぶんの控除額(800万円)が差し引かれます。 勤続34年で控除が1,780万円あっても、 そこから800万円引かれて980万円しか使えない、ということになります。

この計算は年数ではなく期間そのもので行うので、 「いつからいつまで会社にいたか」「いつからいつまでiDeCoに入っていたか」を 年単位で押さえておく必要があります。 年数だけをメモしていると、重なりが何年なのか出せません。

順番で、さかのぼる年数が違う

さかのぼる期間は、どちらを先に受け取るかで違います。 ここが制度の中でいちばん間違えやすいところです。

先に受け取るものあとで受け取るものさかのぼる期間
会社の退職金DC一時金長い(19年)
DC一時金会社の退職金短い

さかのぼって調整される期間

つまり、DC一時金を先に受け取ってから退職金を受け取るほうが、 調整を受けずに済む可能性が高いということです。 逆の順番だと、かなり長い期間さかのぼって調整されます。

この非対称さが、制度の分かりにくさの中心にあります。 「◯年空ければよい」という覚え方ができず、 どちらを先に受け取るかを決めてから年数を調べることになります。 しかも会社の退職金は退職日で決まるので、 実際に動かせるのはDC側の受取時期だけ、ということが多くあります。

DC一時金を先に受け取ってから退職金を受け取る場合の期間は、令和8年1月以後に支払われる退職手当等について延びました。 「5年空ければ大丈夫」という以前の説明が、そのままでは当てはまりません。 古い記事を読んで判断すると外れます。国税庁のページで現在の年数を確かめてください。
マネック案内役):順番で年数が変わるうえ、その年数が改正で動いたんだよね。ネットの解説記事が一番あてにならないタイプの論点だと思う。

年金にすると、控除枠がDCに残る

もう1つ、あまり知られていない効き方があります。会社の退職金を年金で受け取ると、退職所得控除を使いません。 年金は雑所得なので、退職所得の枠に入らないためです。

その結果、退職所得控除はiDeCo・企業型DCの一時金がまるごと使えます。 勤続34年ぶんの控除1,780万円を、800万円のDC一時金だけで使うことになるので、 DC側の税はゼロになります。

受け取り方の選択が、DC側の税額まで動かすということです。 会社の退職金だけを見て一時金と年金を比べていると、この効果が抜けます。 比較するときはDC一時金も含めた合計の手取りで見てください。

ただし、これで年金受取が有利になると決まるわけではありません。 会社の退職金を年金にすると、そちらには毎年の税と社会保険料がかかります。 DC側で浮いた税額より、年金側で増える負担のほうが大きければ、合計では一時金が残ります。 片方だけを見て判断せず、両方を足した手取りで比べる必要があります。

言い換えると、この論点は「年金受取の隠れた利点」であって、 「年金受取を選ぶ理由」ではありません。 比較の材料が1つ増える、という位置づけで扱ってください。

どれくらい変わるのか

金額の感覚をつかむために、条件を固定して比べます。 勤続34年、退職金2,000万円、iDeCo800万円、iDeCoの加入期間は20年とします。

受け取り方税額手取り
両方を同じ年に一時金111.5万円2,688.5万円
一時金だが、DCを12年ずらす94.6万円2,705.4万円

受け取り方と受け取る年による税額(例)

受け取り方はどちらも一時金のままで、DCを受け取る年をずらしただけで約17万円変わります。 手続きとしては受け取る時期を選ぶだけなので、負担のわりに効きます。

内訳を見ると、同じ年に受け取った場合は2,800万円に対して控除1,780万円、 残り1,020万円の半分の510万円が課税されています。 12年ずらした場合は、勤続期間の重なりぶんだけ控除が減らされたうえで、 それぞれ別の退職所得として計算されます。 完全に分かれるわけではありませんが、それでも税額は下がります。

この例で差がこの程度に収まっているのは、 勤続34年ぶんの控除が1,780万円あり、 同じ年にまとめても課税される額がそれほど大きくならないためです。 勤続が短い人や、DCの額が大きい人では、差はもっと開きます。 逆に、退職金とDCを合わせても控除に収まる人なら、ずらしてもずらさなくても税はゼロで、考える必要がありません。

自分がどちらなのかは、控除額と合計額を並べればすぐ分かります。 勤続年数から控除額を出し、退職金とDCの合計と比べる。 合計が控除に収まっていれば、この論点は関係ありません。 超えているなら、ずらす価値を金額で確かめる意味があります。

この数字は形を見せるための例です。勤続年数、DCの加入期間、それぞれの額、 受け取る順番と年数が変わると結果も変わります。 自分の場合の額は、実際の数字を入れて計算してください。

確かめること

受け取る年をずらす余地があるかは、次を確かめると分かります。

  • iDeCo・企業型DCの受取可能な期間。いつからいつまで選べるのか。運営管理機関に聞きます。
  • 会社の退職金の支給時期。退職日と支給日は同じとは限りません。
  • それぞれの加入期間・勤続期間。重なりの判定に使います。年数ではなく「いつからいつまで」が要ります。
  • 受け取る順番。どちらを先にするかで、さかのぼる年数が変わります。

このうち3つ目が抜けやすいところです。 「勤続34年」「iDeCo20年」という年数だけをメモしていても、 重なりが何年なのかは出せません。いつからいつまでかという期間で押さえる必要があります。 源泉徴収票や年金の記録を見れば分かるので、先に控えておいてください。

4つ目の順番も、自分で選べる場合があります。 iDeCoは受け取れる年齢の範囲内なら時期を選べるのが一般的なので、 退職金より先に受け取るか、あとにするかを決められることがあります。 さかのぼる期間が順番で違う以上、ここは金額に直結します。

この4つがそろえば、ずらす価値があるかどうかを金額で判断できます。退職金、一時金と年金どちらで受け取ると手取りが多い?では、iDeCo・DCの一時金を含めた手取りを、受け取る年を変えて比べられます。

ここは制度が細かく、改正も入っています。金額が大きく動く場合は、 最終的な判断の前に税理士か、加入している運営管理機関に確かめてください。 ToMiの試算は概算で、個別の適用可否を判定するものではありません。

控除そのものの仕組みは退職所得控除とは?に書いています。先にそちらを読むと、この記事の調整の話が追いやすくなります。

よくある質問

退職金とiDeCoを同じ年に受け取ると損ですか?
同じ年に受け取ると合算して1件として課税され、退職所得控除は1回しか使えません。別々の年に受け取れば、それぞれで控除を使える場合があります。ただし一定の期間内に受け取ると、勤続期間が重なる分だけ控除が減らされます。何年ずらせばよいかは受け取る順番で違うので、規約と国税庁のページで確かめてください。
退職金を年金にすると、iDeCoの控除はどうなりますか?
会社の退職金を年金で受け取ると、それは退職所得ではなく雑所得になります。退職所得控除を使わないため、iDeCo・企業型DCの一時金がその控除をまるごと使えることになります。受け取り方の選択が、iDeCo側の税額にも影響します。
iDeCoの受け取る年は自分で選べますか?
老齢給付金を受け取れる年齢の範囲内であれば、時期を選べるのが一般的です。ただし運営管理機関ごとに手続きの締切や受け取り方の選択肢が違います。受け取れる期限もあるので、いつからいつまで選べるのかを運営管理機関に確かめてください。

参照した一次情報

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この記事は商品の仕組みを説明するものであり、 特定の商品の購入を勧めるものではありません。 個別の投資助言でもありません。制度や条件は変わることがあるため、実際のご判断にあたっては国税庁の退職金と税のページや、お取引先の金融機関で最新の条件をご確認ください。