家計・ライフプラン

純資産と「使えるお金」は違う

自宅を持っていると純資産は大きくなりますが、それを売らなければ生活費には使えません。

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この記事の要点

  • 純資産は持っているもの全部の合計から、負債を引いた額です。
  • 使えるお金は、そこから不動産・現物資産・保険を除いた額です。
  • 自宅は住んでいるかぎり売れないので、生活費には回せません。
  • 純資産だけを見ていると、生活費が尽きる年に気づけません。
  • 老後に自宅を売る前提を置くなら、住む場所の費用も同時に書く必要があります。

資産の合計が5,000万円あると聞けば、余裕があるように思えます。 ですがそのうち4,000万円が自宅なら、生活費に回せるのは1,000万円だけです。 この差を見落とすと、見通しが根本からずれます。

純資産は持っているもの全部の合計から負債を引いた額。 使えるお金は、そこから不動産・現物資産・保険を除いた額です。 同じ資産でも、目的によって数え方が変わります。

資産管理のアプリや家計の本では、たいてい純資産のほうが前に出ます。 全体の規模を1つの数字で言えるからです。 ですが生活の判断に使うのは、ほとんどの場面でもう片方のほうです。

同じ資産に、2つの見方がある

純資産と「使えるお金」は別もの純資産自宅・保険など預金・投資使えるお金生活費に回せる売らないと使えない
不動産・現物資産・保険は、売らなければ生活費には使えません。純資産が増えていても、生活費に回せる額は増えていないことがあります。棒の長さは仕組みを示すための例です。

純資産は、その人がいくら持っているかを表します。 相続で分けるとき、担保に入れるとき、 全体の規模を知りたいときは、こちらで見ます。

使えるお金は、いま生活費に回せる額を表します。 今月払えるか、この先何年もつか、という見方をするときは、こちらです。どちらかが正しいのではなく、聞いている問いが違います。

この2つを混同すると、判断が反対を向くことがあります。 純資産で見れば十分に余裕があるので、もっと投資に回せると考える。 ところが使えるお金で見ると手元は薄く、 収入が止まった月に売る以外の選択肢がありません。同じ人の同じ資産で、逆の結論が出ます。

純資産使えるお金
預金・投資入る入る
不動産(自宅)入る入らない
保険(返戻金)入る入らない
現物資産入る入らない
負債引く引く

自宅は、住んでいるかぎり使えない

持ち家がある人の純資産は、賃貸の人より大きく出ます。 ですが自宅は、住んでいるかぎり売れません。 売れば住む場所が無くなるので、生活費のために売る、という選択肢が実質ありません。

しかも自宅は、持っているだけでお金が出ていく側でもあります。 固定資産税、火災保険、修繕。マンションなら管理費と修繕積立金。 資産として大きく計上されているものが、毎年の支出も生んでいます。

賃貸に出している不動産は、少し扱いが違います。 家賃が入ってくるので、収入としては使えるお金に効きます。 ただし物件そのものは、売らなければ生活費にはなりません。入ってくる家賃は使えるお金、物件の価値は純資産、と分けて数えます。

マネック案内役):「持ち家があるから老後も安心」は、半分だけ当たっているんだ。 住む場所の心配は減るけど、生活費に回せるお金が増えるわけじゃないよ。

保険を解約すると、保障が消える

貯蓄型の保険には解約返戻金があるので、資産として計上できます。 ですがこれも、いつでも使えるお金ではありません。

解約すれば返戻金は入りますが、そのあとの保障が無くなります。 生活費が足りなくなって保険を解約した人は、 同時に入院や死亡への備えも失っています。いちばん困っているときに、備えまで手放すことになるという順番です。

学資保険も同じです。子どもの学費のために積んでいるものを、 その前に生活費で使ってしまうと、 いちばん要る年に手元に無い、ということが起こります。 目的が決まっているお金は、使えるお金から外して数えるほうが安全です。

解約せずに借りる方法(契約者貸付)もありますが、利息がかかり、 返さなければ保険金から差し引かれます。 使えるお金として数えないほうが、見通しは安全側になります。

掛け捨ての保険には返戻金がないので、そもそも資産に計上されません。 この場合は迷いようがなく、保険料は毎月の支出として出ていくだけです。 貯蓄型と掛け捨てで、資産の見え方がまったく変わるということでもあります。

なぜ分けないと危ないのか

純資産だけで線を引くと、多くの場合その線は右上がりになります。 自宅の価値が計上され、ローンが減っていくからです。線が上がっているのに、生活費が払えなくなるということが起こります。

線が曲がるところには、理由がある年齢学費退職年金開始どの出来事が見通しを曲げているかが、その場で分かる
学費や退職といった出来事を置くと、線のどこが曲がるのかが分かります。線の形は仕組みを示すための例で、額は入力した数字から出ます。

線が上を向いているうちは、誰も危険だと思いません。 気づくのは、実際に払えなくなったときです。 そこから打てる手は、資産を売るか、生活を落とすか、借りるかしかありません。 どれも、早く気づいていれば避けられたものです。

このずれは、退職してから表に出ることが多くなります。 働いているあいだは毎月の収入が入るので、 手元が薄くても回ってしまうためです。収入が止まった瞬間に、使えるお金の薄さがそのまま生活に出ます。

持ち家があって、預金が薄い。この組み合わせがいちばん見落とされます。 純資産では上位に見えるのに、使えるお金では下位、ということが起こるためです。

逆に、賃貸で預金が厚い人は、純資産では小さく見えます。 ですが使えるお金では上位にきます。家を持たない選択は、 純資産を小さくするかわりに、動かせるお金を厚くしている、と読めます。 どちらが良いという話ではなく、見る額を取り違えないことが大事です。

「老後に売る」を前提にするなら

自宅を売って生活費にあてる、という計画自体は成り立ちます。 ただし、その前提を置くなら2つを同時に書いてください

1. 住む場所の費用

売ったあとも、どこかに住みます。 賃貸に移るなら家賃が毎月かかり、住み替えるなら購入費がかかります。 売却額をそのまま生活費に足すと、この費用が消えます。

住み替え先が小さくなるなら差額が残りますが、 その差額から仲介手数料や引っ越し費用、登記の費用が引かれます。 売却額と手取りは違うので、そこも見込んでおいてください。

2. 売れるかどうか

売りたいときに、売りたい額で売れるとは限りません。 場所によっては買い手が付くまで時間がかかりますし、 そのあいだも固定資産税と維持費は出ていきます。売る前提は、売れる前提とセットです。

もう1つ、売ると決めるのが自分だとも限りません。 判断が難しくなってからでは、家を売る手続きそのものが重くなります。 その場合に備えて、売らずに済む額を先に用意しておくほうが確実です。 自宅を最後の備えにすると、いちばん要るときに動かせないことがあります。

どちらの見方をいつ使うか

場面見る額
生活費が足りるか使えるお金
投資に回せる額使えるお金
相続でどう分けるか純資産
全体の規模を知る純資産
借入の担保純資産

迷ったときの基準は、「明日それを使えるか」です。 明日使えるなら使えるお金、 手続きや売却が要るなら純資産にだけ入れる。 この線の引き方が、いちばん実際に近くなります。

迷うのが、すぐ売れる投資信託や株です。 売れば数日で現金になるので、使えるお金に入れて構いません。 ただし、売る時期を選べない状況で売ると損が出ます。 だから生活防衛資金は、投資ではなく預金で持つことになります。 この順番は手取りから、いくら投資に回せるかで扱っています。

自分の「使えるお金」を出す

出し方は簡単です。資産の合計から、 不動産・現物資産・保険を引き、負債を引く。それだけです。

手で計算してもよいのですが、資産が増えると毎回やり直すことになります。 ToMiでは純資産と「使えるお金」を2本の線で出すようにしてあります。 登録した資産の種類から自動で分けるので、どちらも同時に見られます。

出したあとは、その額が生活費の何年分にあたるかを見てください。 金額そのものより、年数のほうが判断しやすくなります。 「1,000万円ある」より「生活費3年分ある」のほうが、 足りているかどうかを自分で決められます。 年数にすると、生活費が増えたときに自動的に短くなるのも分かります。

登録は要りません。入力したデータはブラウザの中だけに残ります。 まず、いま手元で自由に動かせるのがいくらなのか。 そこからライフプラン表を作ると、線の意味が変わって見えます。

もし使えるお金が思ったより薄かったとしても、それ自体は悪いことではありません。 住宅にお金を回した結果として、そうなっているだけのこともあります。問題なのは、薄いことではなく、薄いと気づいていないことです。 気づいていれば、預金を厚くする、支出を見直す、といった手を先に打てます。

よくある質問

自宅は資産に数えないほうがよいですか?
数えます。ただし「使えるお金」からは外します。相続や売却では価値を持つので純資産には入れ、生活費に回せるかという見方では外す。同じ資産を目的によって別に扱う、ということです。
保険はなぜ使えるお金に入らないのですか?
解約返戻金として価値はありますが、解約すれば保障が無くなります。生活費のために解約すると、そのあとの入院や死亡に備えがなくなるので、いつでも使える資金としては数えません。
自宅を売れば解決しますか?
売れば使えるお金に変わりますが、住む場所の費用が新しく発生します。賃貸に移るなら家賃が、住み替えるなら購入費がかかります。売却額をそのまま生活費に足すと、その分を見落とすことになります。

参照した一次情報

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この記事は商品の仕組みを説明するものであり、 特定の商品の購入を勧めるものではありません。 個別の投資助言でもありません。制度や条件は変わることがあるため、実際のご判断にあたっては総務省統計局の家計調査のページや、お取引先の金融機関で最新の条件をご確認ください。