グラフを見て「だいたい足りそう」と思ったあと、 では何年目にいくら足りないのかと聞かれると答えられない。 キャッシュフロー表は、そのいくらを読むための表です。
キャッシュフロー表とは何か
年ごとに、入ってくるお金と出ていくお金、その差、 そして手元に残る額を並べた表です。 家計の収支を将来へ伸ばしたもの、と考えると分かりやすくなります。
過去の記録ではありません。家計簿が「使った記録」を集めるのに対して、 こちらはこれから起こることの見込みを並べます。 だから1円単位で合わせる必要はなく、 合わせようとすると作ること自体が止まります。
作る目的は、当てることではありません。手を打つ年を見つけることです。 10年後の生活費が月1万円ずれていても、 残高が尽きる年が20年後か25年後かは変わりません。 その粗さで十分に判断できます。
ライフプラン表と呼ばれるものと中身はほぼ同じです。 ライフプラン表が家族の年齢やライフイベントも一緒に並べるのに対し、 キャッシュフロー表はお金の出入りに絞った表を指すことが多くなります。
グラフと表は、目的が違う
同じデータから作るのに、なぜ2つ要るのか。 読み取れるものが違うからです。
| グラフ | 表 | |
|---|---|---|
| 得意なこと | 形をつかむ | 額を読む |
| 分かること | どの年に曲がるか | その年にいくらか |
| 向いている場面 | 全体を眺める | 手を打つ年を決める |
グラフでは、線が下を向いた年はすぐ分かります。 ですが、その年にいくら足りないのかは読めません。目盛りから読み取れる精度では、判断できないためです。
逆に、表だけを見ても全体の形はつかみにくくなります。 数字が並んでいると、どこが山でどこが谷なのかを目で追うことになります。 20年分の数字を上から読んで傾向をつかむのは、人には向いていません。
並べるのは4行
| 行 | 中身 |
|---|---|
| 収入 | 手取り。退職後は年金。資産からのインカムも |
| 支出 | 生活費・住居費・税金社会保険・その年のイベント |
| 収支 | 収入 − 支出。その年に増えたか減ったか |
| 残高 | 前年までの残高に、その年の収支を足したもの |
見るべきはいちばん下の残高です。 収支は単年の話なので、1年だけマイナスでも問題とは限りません。 残高が減り続けているかどうかが、判断の材料になります。
この4行のうち、手で入れるのは上の2行だけです。 収支と残高は、そこから計算で出ます。入れる場所と、出てくる場所を分けておくと、 あとで前提を変えたときに、どこを直せばよいか迷いません。
収入に書くのは手取りです。額面ではありません。 ここを額面にすると、実際には使えない2割ほどを 使える前提で計算することになります。
支出には、毎年出ていくものだけでなく、 その年だけの大きな支出(住宅・車・学費)も同じ行に入れます。 分けて書きたくなりますが、残高を出すには合計が要ります。 何が入っているかは、その年の欄に一言添えておけば足ります。
忘れやすいのが、税金と社会保険料です。 手取りで収入を書いていれば、働いているあいだの分は差し引き済みですが、 退職後は年金からも引かれます。 健康保険料や介護保険料は、年齢とともに扱いが変わるところなので、 支出の側に入れておかないと、退職後の絵が甘くなります。
どの年を探すか
表を作ったあと、何を探すのか。見るところは3つです。
1. 収支がマイナスに転じる年
それまで増えていた手元のお金が、減り始める年です。 多くの場合、退職した年か、その少しあとになります。
2. 残高が減り始める年
収支のマイナスが続くと、残高が減り始めます。 ここから先は取り崩しの期間です。
収支のマイナスと残高の減少は、同じ年に始まるとは限りません。 その年の収入で足りなくても、前年までの余りで埋められることがあるためです。 残高が減り始める年のほうが、たいてい何年か後ろにずれます。
3. 残高が尽きる年
あるとすれば、いちばん重要な年です。そこまでに手を打てば済むので、期限が決まったことになります。
この3つが見つかったら、そこから逆算します。 尽きる年が20年後なら、20年かけて直せばよいということです。期限が分かると、打ち手の大きさも決まります。いますぐ生活を切り詰める必要があるのか、 少しずつ積み増せば足りるのかが、そこで分かれます。
尽きる年が見つからなければ、そこで終わりです。 その場合は、余っている分をどう使うかという別の話に移れます。足りるかどうかが決着すると、次の問いに進めます。
マイナスの年があっても問題とは限らない
収支がマイナスの年を見つけると、不安になります。 ですが、はじめから大きく出ると分かっている年もあります。
住宅を買った年、車を買い替えた年、子どもが大学に入った年。 これらは計画してマイナスにしている年です。 見るべきは、その年のマイナスではなく、そのあと残高が戻るかどうかです。
もう1つ見ておきたいのが、マイナスの年が連続しているかどうかです。 1年おきに出入りしているなら、大きな支出のタイミングの問題です。 何年も続いているなら、毎月の収支そのものが合っていません。 同じマイナスでも、打つべき手がまったく違います。
何年分を作るか
近いところは1年ずつ、遠いところは粗くて構いません。
5年先までは、収入も支出もある程度見当がつきます。ここは細かく。 そこから先は前提の影響が大きくなるので、細かくしても精度は上がりません。5年ごとでも形は分かります。
先を細かくしても意味がないのは、前提の幅のほうが大きいからです。 25年後の生活費は、物価の置き方ひとつで何割も動きます。 その上で1年単位に刻んでも、精度が上がったことにはなりません。刻みの細かさより、前提を変えて何度も引き直すほうが役に立ちます。
資産とつなぐと、取り崩しが見える
収支だけの表でも役に立ちますが、 いま持っている資産をつなぐと、見えるものが増えます。
収支がマイナスの年は、その分だけ資産から取り崩すことになります。 資産の額を出発点に置いておけば、何年目に取り崩しが始まり、何年もつのかまで表の上で分かります。
ローンの返済と、資産から入る利息や配当も、資産の側から作れます。 手で入れ直すと、ローンを繰上げ返済したときに 表だけ古い返済額が残ることになります。
資産をつなぐときは、純資産ではなく使えるお金のほうを出発点にしてください。 自宅は売らなければ生活費に回せないので、 そこを足すと、取り崩せる額を実際より大きく見積もることになります。
売る前提で組み込むこと自体は問題ありません。 その場合は、売る年を決めて、その年の収入に入れます。 あいまいなまま資産に足しておくのがいちばん危ない形です。
作って、毎年引き直す
表計算ソフトでも作れますが、続かないことが多いところです。 収入が変わるたびに全部の年を直すことになるためです。
ToMiでは家計の収支から年ごとのキャッシュフロー表を出すことができます。 10年・20年・すべてを切り替えて見られるので、 近いところを細かく、遠いところを粗く見る使い方ができます。
作ったら終わりではありません。 収入が変わった年、家族構成が変わった年、大きな買い物をした年。 そのたびに引き直すと、線が前とどう変わったかが分かります。1回の答えより、変化のほうに意味があります。年に1度、決まった時期に見直す形にしておくと続きます。
登録は要りません。入力したデータはブラウザの中だけに残ります。 形を先につかみたい場合はライフプラン表とは?から読んでください。
