結論から
金は買い方が何通りもあり、それぞれ費用も税金も違います。 どれも「金を買う」と言えるので、比べにくくなっています。
ここでは、費用がなぜ他の資産以上に効くのかを先に押さえ、 そのうえで方法ごとの向き不向きを見ます。
何も生まないので、費用がそのまま効く
方法を比べる前に、金という資産の性質を思い出しておきます。
金は持っているあいだ、配当も利息も生みません。 株式なら、多少の費用がかかっても配当が入ってきます。金では、費用を埋めてくれる収入がありません。
つまり、かかった費用はそのまま結果から引かれます。 年0.4%の経費がかかる商品を10年持てば、 値段が変わらなくても4%近く目減りしている計算になります。
もう一つ、円で見る場合は為替も掛かります。
金は世界では米ドル建てで取引されます。 円建ての商品を買っていても、中身がドル建てなら為替の影響は入ります。 「円で買ったから為替は関係ない」とはなりません。
費用の見え方も、方法によって違います。 率で示されているものは比べやすいのですが、 買値と売値の差のように、表に出てこない形の費用もあります。目に見える手数料だけを比べると、実際の負担を取り違えます。何が引かれるのかを、率と差額の両方で確かめてください。
現物で持つ
地金やコインを買って、自分で保管する方法です。 手元に置ける、という点はほかの方法にはありません。
費用のかかり方が独特です。 店が売る値段と買い取る値段には差があり、買った瞬間から、その差の分だけ含み損を抱えた状態で始まります。
この差は、お店によっても変わります。 同じ日に同じ量を買っても、 どこで買うかで支払う額が違うということです。 株式のように1つの市場で値段が決まる資産とは、そこが違います。買う前に複数の店の値段を見る意味があるのは、この理由からです。
この差は、少額ほど不利になります。 小さな地金やコインは加工の手間がかかるぶん、 1グラムあたりの上乗せが大きくなるためです。
| 現物(地金・コイン) | |
|---|---|
| 買うときの上乗せ | 少額ほど大きい |
| 持っている間の費用 | 保管料または自宅保管の心配 |
| 売るとき | 店に持ち込む。買取価格は売値より低い |
| 向いている人 | 手元に置くこと自体に意味を見いだす人 |
売るときにも、買った店の記録が要ることがあります。 いくらで買ったかを示せないと、 利益の計算で不利になる扱いを受けることがあります。買ったときの明細は、売るまで保管してください。
保管も自分で考える必要があります。 自宅に置けば盗難の心配があり、 貸金庫を借りれば、その費用が毎年かかります。
その一方で、現物にしかない性質もあります。 証券会社の口座を通さずに持てるので、 市場が閉まっていても手元にあり続けます。 金融の仕組みそのものが揺らぐ場面を想定するなら、 この点はほかの方法では代えられません。 何を心配して持つのかで、評価が変わる部分です。
積立で買う
毎月一定額を買い続ける方法です。 地金商や証券会社が扱っています。
時期を分けて買うので、 高いところでまとめて買ってしまう危険は薄まります。 少額から始められるのも利点です。
ただし手数料の付き方に注意が要ります。 買うたびに数%の手数料がかかる商品や、 年会費が必要な商品があります。毎月かかるものは、回数が多いぶん積み上がります。
一定量まで貯まると現物で受け取れる仕組みを持つものもあります。 手元に置きたいが最初から大きな額は出せない、 という場合には合っています。
- 少額から始められ、時期を分けられる
- 買うたびの手数料と年会費を、率で確かめる
- 貯まった分を現物で受け取れるかは商品による
毎月の額を決めたら、あとは自動で買い続けられるのも利点です。 値段が高いか安いかを判断する必要がなくなります。 金には利益や利回りのような手がかりが無いぶん、いつ買うべきかを自分で決めるのが難しい資産です。 判断の回数を減らせること自体が、この資産では意味を持ちます。
運営する会社が破綻したときの扱いも、商品によって違います。 自分の金として分けて保管されているのか、 会社の資産と混ざっているのかは、契約の前に確かめてください。
ETF・投資信託で持つ
証券口座で買う方法です。金を裏付けにした商品を、株式と同じように売買します。
費用はいちばん分かりやすい形になります。 毎年の経費が率で示されていて、 その分が基準価額から引かれていきます。
国内で買える商品には、円建てのものと、 為替ヘッジありのものがあります。ヘッジありを選べば 為替の動きを抑えられますが、その費用が別にかかります。 金そのものが収入を生まないぶん、この費用も結果からそのまま引かれることになります。
売買もしやすく、必要な分だけ売れます。 現物のように、まとめて手放す必要がありません。
| 国内の投資信託 | 海外のETF | |
|---|---|---|
| 買うときの通貨 | 円のまま | ドルに換える |
| 毎年の経費 | やや高め | 低め |
| 為替の手数料 | 商品の中に含まれる | 自分で両替する |
| 少額での積立 | しやすい | しにくい |
NISAの対象になっている商品もあります。 利益に税金がかからない枠を使えるので、 長く持つつもりなら、対象かどうかは確かめる価値があります。 ただし対象になっている商品の中でも、 中身や費用には差があるので、枠が使えることだけで選ばないでください。
注意したいのは、同じ「金の投資信託」でも中身が違うことです。 金そのものを裏付けに持つものと、 金鉱株を集めたものが、どちらも金の商品として並んでいます。
金鉱株は、金を掘る会社の株です。 その会社の業績や借入の状況にも左右されるので、 金の値段が上がっても株価が下がることがあります。 名前だけでは区別がつかないので、目論見書で確かめてください。
何を重く見るかで決まる
方法ごとの違いを並べると、選び方の軸が見えてきます。
| 重く見ること | 向いている方法 |
|---|---|
| 費用の低さ | ETF・投資信託 |
| 手元に置くこと | 現物(地金・コイン) |
| 少額から続けること | 積立 |
| 売買のしやすさ | ETF・投資信託 |
税金の扱いも方法によって変わります。 現物や積立で得た利益は譲渡所得として扱われることが多く、 持っていた期間によって計算が変わります。 証券口座で買う商品とは、計算のしかたが別です。
相続や贈与のことまで考えるなら、また見え方が変わります。 現物は分けにくく、誰がどれを受け取るかで揉めやすい資産です。 証券口座の商品なら金額で分けられます。 長く持って次の世代に渡すつもりなら、分けられるかどうかも選ぶ材料になります。
売る前に、自分の持ち方の扱いを確かめてください。同じ金額の利益でも、持ち方によって手元に残る額が変わります。
方法を途中で変えることもできます。 積立で少額から始めて、まとまってからETFに移す、 といった進め方もあります。ただし移すときには いったん売ることになるので、そこで利益が出ていれば税金がかかります。 最初から長く続ける方法を選んでおくほうが、無駄が出ません。
手元にどれだけあるかを把握しておくことも大事です。 持ち方を分けるほど、全体の量が見えにくくなります。 資産の一覧に金がいくらぶんあるのかを記録しておくと、 割合で決めた上限を超えていないかを確かめられます。
そしてどの方法を選んでも、 金が何も生まない資産であることは変わりません。 増えるのは値段が上がったときだけで、 費用はその分から確実に引かれます。
いくらまで持てるかは、自分の金額で試算すると、過去にいちばん下げた局面での減り方が円で出ます。 方法を決める前に、額を決めるほうが先です。
