ふるさと納税

ふるさと納税の上限を超えたらどうなる?

上限を超えた額が、そのまま自己負担になるわけではありません。控除は3つに分かれていて、頭打ちになるのはそのうち1つだけだからです。何がどこまで効くのかを分けて見ていきます。

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この記事の要点

  • 控除は所得税・住民税の基本分・住民税の特例分の3つに分かれます。上限に当たるのは特例分だけです。
  • 上限を超えた部分でも、所得税の控除と住民税の基本分は効き続けます。
  • だから「上限を1万円超えた=1万円の損」にはなりません。増えるのは超えた額の一部です。
  • 増える割合は課税所得で変わります。所得が高い人ほど、超えたときに増える自己負担は小さくなります。
  • 寄附額が収入に対して大きくなると、所得税の控除にも対象上限があるため、この関係は成り立たなくなります。
  • 返礼品の価値を含めた損得は計算していません。人によって価値が違うためです。

寄附そのものは成立する

上限を超えて寄附しても、寄附そのものは問題なく成立します。 自治体は受け取りますし、返礼品も届きますし、受領証明書も発行されます。 「上限を超えると寄附が無効になる」ということはありません。

変わるのは税金の側です。上限を超えた部分は控除の枠に収まらないため、 その分だけ自己負担が増えます。つまり自己負担が2,000円では済まなくなるということです。

ここでよくある誤解が「上限を1万円超えたら、1万円まるごと損」というものです。 結論から書くと、そうはなりません。この記事はその理由と、 実際にいくら増えるのかを順に説明します。

頭打ちになるのは1本だけ

なぜそうならないのかを理解するには、控除がどう組み立てられているかを見る必要があります。 ふるさと納税の控除は1本の大きな枠があるのではなく、 性質の違う3本が積み重なってできています。上限という言葉が指しているのは、 そのうち1本にかかっている枠のことです。

ふるさと納税の控除は、所得税からの控除・住民税の基本分・住民税の特例分の3つに分かれています。 そして所得割額の20%という枠がかかるのは、3本目の特例分だけです。

控除は3つに分かれ、上限に当たるのは1つだけ寄附額 −2,000円 の行き先所得税から寄附額 − 2,000円 × 所得税の税率住民税・基本分寄附額 − 2,000円 × 10%住民税・特例分ここで頭打ち残り。ここだけ所得割額の20%が上限上限を超えても、上の2本は効き続けます
ふるさと納税の控除は、所得税・住民税の基本分・住民税の特例分の3つに分かれます。頭打ちになるのは特例分だけで、所得税の控除と住民税の基本分は上限を超えた寄附にも効きます。だから上限を超えた額が、そのまま自己負担になるわけではありません。

上限を超えた部分がどうなるかを、この3本で見てみます。 所得税からの控除は「寄附額 − 2,000円 × 所得税の税率」で計算されるので、 超えた部分にもそのまま効きます。住民税の基本分も「寄附額 − 2,000円 × 10%」なので、 こちらも効きます。効かなくなるのは特例分だけです。

上限を超えた部分でも、3本のうち2本は効き続けます。 消えるのは住民税の特例分だけなので、超えた額がそのまま自己負担になることはありません。

では、いくら増えるのか

増える自己負担は、おおよそ超えた額 × 特例分の割合です。 特例分の割合は「100% − 10%(基本分)− 所得税の税率」で決まります。

上限を1万円超えても、1万円まるごと自己負担にはならない上限目安80,000円寄附した額100,000円超えた額10,000円増える自己負担13,916差は、所得税の控除と住民税の基本分が残るぶん
上限を超えた部分で効かなくなるのは住民税の特例分だけです。所得税の控除と住民税の基本分は残るので、増える自己負担は超えた額より小さくなります。割合は課税所得で変わるため、実際の額は自分の条件で計算する必要があります。

具体的に見てみます。上限目安が8万円の人が10万円寄附した場合、超えた額は2万円です。 この人の所得税の税率が20%だとすると、特例分の割合はおよそ69.6%になります (復興特別所得税を含めた率で計算します)。 すると増える自己負担は2万円の約69.6%で、およそ1万3,900円です。 残りの約6,100円は、所得税の控除と住民税の基本分が引き受けてくれます。

項目
上限目安80,000円
寄附した額100,000円
上限を超えた額20,000円
増える自己負担(所得税率20%の場合)約13,900円
自己負担の合計約15,900円(2,000円+約13,900円)

上限を2万円超えた場合の目安

「2万円損した」と「約1万3,900円増えた」では、受け取り方がだいぶ違います。 もちろん増えないに越したことはありませんが、返礼品を受け取っていることを考えると、致命的な失敗ではありません。 この記事では返礼品の価値を金額にしていませんが、それは人によって価値が違うためで、 価値がないという意味ではありません。

マネック案内役):「超えちゃった!」って焦る前に、いくら増えるのかを実際に計算してみるのがいいと思う。 思っているより小さいことが多いよ。

所得が高い人ほど、超えたときの増え方は小さい

少し意外に思えるかもしれませんが、所得税の税率が高い人ほど、上限を超えたときに増える自己負担の割合は小さくなります

理由は特例分の割合の式にあります。特例分は「100% − 10% − 所得税の税率」なので、 所得税の税率が高いほど特例分の割合は小さくなります。 超えた部分で消えるのはこの特例分なので、割合が小さいほど失うものも小さいわけです。

所得税の税率特例分の割合(おおよそ)
5%約84.9%
10%約79.8%
20%約69.6%
23%約66.5%
33%約56.3%
40%約49.2%
45%約44.1%

所得税の税率と、超えた分で増える自己負担の割合

この表の割合は、自治体が公表している特例控除の割合と同じものです。 独立した公表値のように見えますが、実際は「100% − 10% − 所得税の税率 × 1.021」を 計算した結果です。1.021は復興特別所得税を含めるための係数で、 令和19年中の寄附までは所得税の税率にこれを掛けた率を使います。

税率5%の人が上限を1万円超えると約8,500円増えますが、 税率33%の人なら約5,600円です。同じ1万円の超過でも、増える額は3,000円近く違います

ただしこれは「所得が高い人は気にしなくていい」という意味ではありません。 所得が高い人ほど上限そのものが大きく、寄附する額も大きくなりがちなので、 超える額自体が大きくなりやすいためです。割合が小さくても、 元の数字が大きければ増える額は大きくなります。

もう1つの上限に当たる場合

ここまでの話には前提があります。所得税の控除と住民税の基本分が、まだ余力を残していることです。この2本にも別の枠があり、 そこに当たると話が変わります。

ここまでは「所得税の控除と住民税の基本分は効き続ける」という前提で書いてきました。 ただしこの2本にも別の上限があります

総務省の説明では、所得税からの控除の対象になるふるさと納税額は総所得金額等の40%が上限、 住民税の基本分の対象になる額は総所得金額等の30%が上限とされています。 寄附額が収入に対してかなり大きくなると、こちらの上限にも当たり始めます。

年収の3割を超えるような寄附をする場合は、この記事の計算がそのまま当てはまりません。超えた額のほとんどが自己負担になっていく領域に入るので、 そこまで寄附する予定があるなら税務署か市区町村に確認してください。

もっとも、年収500万円の人が150万円寄附するといった規模の話なので、 ふつうの使い方をしていて当たることはまずありません。 上限目安の2倍3倍まで寄附しても、40%や30%には届かないのが普通です。

超えてしまったあとにできること

その前に、そもそも超えているかどうかを確かめる必要があります。超えたと思っていて実は超えていないことも、その逆もあります。 年収別の上限表を見て「たぶん超えた」と判断している場合は、 自分の控除を入れて計算し直すと結論が変わることがあります。

自分の条件での上限目安と、上限を超えたときに自己負担がいくら増えるのかは、ふるさと納税、上限はいくら?超えたら自己負担はいくら増える?で計算できます。年収と家族構成から目安を出し、すでに寄附した額を引いて残りを表示します。

結論から書くと、寄附は原則として取り消せません。 自治体に連絡して返金してもらう、ということは基本的にできない仕組みになっています。 だから超えてしまったあとにできるのは、正確に把握して次に生かすことです。

もう1つ、返礼品を含めた損得を計算しようとしないことです。 この記事では返礼品の価値を金額にしていません。 同じ返礼品でも、欲しかった人と興味がなかった人では価値がまるで違うためです。税制の部分だけを見て、返礼品の価値は自分で判断するほうが、 結局は納得のいく結論になります。

まず、いくら増えたのかを計算しておくことです。 「なんとなく損した」で終わらせると、翌年も同じ判断をしがちです。 実際の額が分かれば、来年の寄附額をどのくらい手前で止めるかを決められます。

次に、なぜ超えたのかを見ることです。多いのは去年の上限をそのまま使ったケースと、年末に控除が増えたケースです。 前者は収入が変わっていれば当然ずれますし、後者は医療費控除のように 12月末まで額が決まらないものが原因になります。

寄附先が複数のサイトにまたがっていると、合計額そのものが分からなくなります。ふるさと納税 上限計算ツールで先に上限の目安を出しておけば、超える前に気づけます。

最後に、申告方法を確かめてください。ワンストップ特例を申請していても、 医療費控除などで確定申告をするとワンストップは無効になります。 そのときにふるさと納税の分を申告に入れ忘れると、上限の中に収まっていた寄附まで控除されなくなります。 超過より、こちらのほうが損失は大きくなります。詳しくはワンストップ特例と確定申告の違いに書いています。

よくある質問

ふるさと納税の上限を超えたら、超えた分は全部自己負担になりますか?
なりません。ふるさと納税の控除は所得税・住民税の基本分・住民税の特例分の3つに分かれていて、上限に当たるのは特例分だけです。所得税の控除と住民税の基本分は上限を超えた寄附にも効きます。増える自己負担は、超えた額に特例分の割合を掛けたぶんが目安になります。
上限を少し超えてしまいました。取り消せますか?
寄附は原則として取り消せません。ただし超えた額がそのまま自己負担になるわけではないので、慌てる必要はありません。増える自己負担がいくらかを計算したうえで、来年の寄附額を決めるときの参考にするほうが現実的です。
所得が高いほど、超えたときの損は大きくなりますか?
逆です。上限を超えた部分で効かなくなるのは住民税の特例分で、その割合は所得税の税率が高いほど小さくなります。所得税の税率が高い人ほど所得税からの控除が大きく、超えた部分でもそちらが効くためです。ただし上限そのものは所得が高いほど大きいので、超える額自体は大きくなりやすくなります。

参照した一次情報

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この記事は商品の仕組みを説明するものであり、 特定の商品の購入を勧めるものではありません。 個別の投資助言でもありません。制度や条件は変わることがあるため、実際のご判断にあたっては総務省のふるさと納税の控除のページや、お取引先の金融機関で最新の条件をご確認ください。