「預金」という名前がついている以上、破綻したときも守られるはずだ—— そう考えるのが自然です。ただ、外貨預金についてはそうなっていません。 まず結論から確認します。例外的な扱いではなく、制度としてそう決まっています。
外貨預金は預金保険の対象外
預金保険は、金融機関が破綻したときに預金者を保護する制度です。 対象になる預金には上限があり、同じ金融機関の対象預金を預金者ごとに合算して判定されます。
外貨預金は、この枠の外にあります。外貨普通預金でも外貨定期預金でも同じです。 同じ銀行の同じ口座から預け入れていても、円の預金とは別扱いになります。 預入期間の長さも、預けている金額の大きさも、この扱いを変えません。 金融庁も、外貨預金が預金保険の対象とならないことを利用者向けの案内で明示しています。 預け入れの手続きの中で説明を受けているはずですが、 画面上の確認事項として流れてしまうことも多いところです。
なぜ対象外なのか
預金保険は、決済や生活資金として使われる預金を守るための制度です。 保険料は金融機関が負担しており、その原資には限りがあります。守る対象を、生活の基盤にあたる預金に絞っているという位置づけです。
外貨預金は、為替の変動によって円ベースの元本が動く商品です。 預けた時点で、円で見た元本はもともと保証されていません。 破綻しなくても元本を割ることがある商品を、破綻したときだけ元本保証の対象にする、 というのは制度の考え方と噛み合いません。
この図が示しているのは、破綻とは関係のない、ふだんの値動きの話です。 いちばん下の棒のように、銀行が健全でも円ベースでは元本を割ることがあります。 外貨預金は、そういう性質の商品として扱われています。
対象外だと、破綻したとき何が起きるのか
対象外というのは、「1円も戻らない」という意味ではありません。 破綻した金融機関の財産の状況に応じて支払われる可能性はあります。 ただし、いくらまで戻るという上限が制度として決まっていないという点が違います。
| 円の普通預金・定期預金 | 外貨預金 | |
|---|---|---|
| 預金保険の対象 | 対象 | 対象外 |
| 保護される額 | 制度で上限が決まっている | 制度上の保証はない |
| 戻るかどうか | 上限までは制度で保護される | 破綻した金融機関の財産次第 |
| 戻る時期 | 制度に沿って進む | 手続きの状況による |
具体的な上限額と対象範囲は制度で定められています。金額は改定される可能性があるため、ここには記載していません。
円の預金の保護範囲については預金保険制度のデータにまとめています。
もうひとつ、時間の違いもあります。 対象となる預金は、制度に沿って比較的早く払い戻しが始まります。 対象外の預金は、破綻した金融機関の財産を整理していく過程のなかで扱われるため、どれだけ戻るのかも、いつ戻るのかも、その時点では分かりません。手元の資金が必要な場面で、これは大きな違いになります。
とはいえ、国内の銀行が破綻する頻度は高くありません。 この点だけを理由に外貨預金を避ける必要はないと考える人もいます。 重要なのは、守られていないことを知ったうえで金額を決めることです。 知らずに「預金だから大丈夫」と考えていた場合とは、同じ残高でも意味が違います。
円預金との合算はどうなるか
預金保険の判定では、同じ金融機関の対象となる預金だけを合算します。 外貨預金は対象外なので、この合算には入りません。
ここで誤解が起きやすいところがあります。 「外貨預金があるぶん、円預金の保護される枠が減る」と考えてしまう場合です。 そうではありません。外貨預金は枠の外にあるので、円預金の枠を圧迫することはありません。
ただし逆に、外貨預金が守られることもありません。 円預金が上限まで守られていても、外貨預金の部分は別に考える必要があります。 預け先を分けるかどうかを検討するときは、この二つを分けて数えてください。
実務的には、残高一覧を二段に分けて書き出すのがいちばん確実です。 上の段に対象となる円の預金を金融機関ごとに並べ、 下の段に外貨預金を並べます。上の段は上限を超えていないかを見て、 下の段は一つの金融機関に寄りすぎていないかを見ます。 判断の基準が違うので、同じ表に混ぜて合計を出すとどちらも読めなくなります。
なお、外貨預金を円に戻して円預金に置いた場合は、その時点から対象になります。 満期を迎えて円で受け取ったお金は、通常の円預金として扱われるということです。 円に戻すかどうかの判断には、為替のほかにこの点も関わってきます。
外貨建ての他の商品はどうか
外貨建ての商品は外貨預金だけではありません。 制度上の位置づけは商品によって違います。
- 外貨預金は銀行の預金ですが、預金保険の対象外です
- 外貨建てMMFなどの投資信託は預金ではなく、証券会社の分別管理の対象になります
- 外国債券は発行体の信用リスクを直接負います
- 外貨建て保険は保険会社の制度が別にあります
「元本保証がない」という点は共通していても、守られ方の仕組みは別々です。どれかひとつの理解を、他の商品にそのまま当てはめないでください。
残高が大きくなってきたら
少額のうちは、預金保険の話はあまり気になりません。 気にすべきかどうかの分かれ目は、その残高が失われたときに、生活や計画が変わるかどうかです。 金額そのものより、自分の資産全体に占める割合で考えるほうが判断しやすくなります。
残高が増えてきたときにできることは、大きく二つあります。 ひとつは預け先を分けること、もうひとつは通貨を分けることです。 この二つは効く相手が違います。預け先を分けても通貨が同じなら、 為替が動いたときには全部が同じ方向へ動きます。
逆に、通貨を分けても同じ銀行にまとめていれば、 その銀行が破綻したときには全部が同じ扱いになります。どちらか一方だけでは、片方のリスクしか下がりません。自分がどちらを気にしているのかを先に決めると、打ち手を選びやすくなります。
また、外貨預金を減らすという選択肢もあります。 円に戻した分は通常の円預金として扱われるため、預金保険の対象になります。 ただし戻すタイミングによっては為替差損が出ます。 制度上の安心と、そのために払うコストを見比べて決めることになります。
確認する順番
1. 為替のリスクを先に見る
破綻はめったに起きませんが、為替は毎日動きます。先に確認すべきは、円高になったときに自分がいくら受け取ることになるかです。 ToMiでは自分の元本割れラインを計算することができます。
2. 預け先ごとの残高を数える
円預金は上限まで守られますが、外貨預金は別に考えます。 一つの金融機関に外貨預金が偏っていないかを見てください。
円預金と外貨預金を同じ口座画面で見ていると、 合計だけが目に入って区分が意識から外れます。 残高を確認するときは、対象になる部分とならない部分を分けて数える習慣をつけてください。
3. 通貨の偏りも見る
預け先を分けても、全部が同じ通貨なら為替のリスクは分散されません。 預金保険の話と通貨の分散は別の問題です。混ぜて考えないでください。 預け先を3行に分けても、3行とも米ドルであれば、円高になったときには同じように目減りします。 守りたいものが「銀行が破綻したとき」なのか「為替が動いたとき」なのかで、 打つべき手はまったく違います。
外貨預金そのものの仕組みは外貨預金とは?で、円高になったときの動きは外貨預金は円高になるとどうなる?で扱っています。
