ボーナスにも控除がある
賞与も給与と同じく、社会保険料と所得税が引かれてから振り込まれます。 「支給額◯万円」と伝えられていても、口座に入るのはそれより少ない額です。 支給額をそのまま使う前提で予定を立てると、 振り込まれた日に足りないことに気づくことになります。
引かれる項目は月々の給与とほぼ同じですが、住民税は賞与から引かれません。 住民税は年間の税額を12回に分けて毎月の給与から引く仕組みなので、 賞与の月に上乗せされることはありません。
ただし、住民税がかからないわけではありません。 賞与も含めた1年間の所得に対して住民税は計算され、 その税額が翌年の毎月の給与から引かれます。 賞与の月の明細に出てこないだけで、負担は翌年に回っています。
「賞与は税金で半分持っていかれる」という言い方を見かけますが、 手取りの割合は月々の給与とそれほど変わりません。 住民税が引かれないぶん、むしろ月給より手取り率が高くなることもあります。 そう感じるのは、まとまった金額から引かれるため、 引かれた額そのものが大きく見えるからです。
| 毎月の給与 | 賞与 | |
|---|---|---|
| 健康保険・介護保険 | 標準報酬月額にかける | 標準賞与額にかける |
| 厚生年金 | 標準報酬月額にかける | 標準賞与額にかける |
| 雇用保険 | 支払われた賃金にかける | 支払われた賞与にかける |
| 所得税 | 月額表で源泉徴収 | 前月の給与をもとにした率で源泉徴収 |
| 住民税 | 年税額を12回に分けて引く | 引かれない |
賞与の所得税
賞与の所得税は、月々の給与とは別の方法で計算されます。前月の給与から社会保険料を引いた額と、扶養親族の人数をもとに率を決め、 その率を賞与の課税対象額にかけます。
前月の給与を基準にするのは、その人のおおよその所得水準を推定するためです。 「その月にたまたま大きな金額が入ったから高い税率をかける」という仕組みではありません。 月々の給与と同じように月額表で計算してしまうと、 賞与の月だけ極端に高い税率が当てはまってしまうため、別の方法を使います。
扶養している家族の人数も、この率に影響します。 年の途中で扶養が増えた場合は勤務先に届け出ておくと、 その後の賞与から反映されます。届け出が遅れても、 年末調整で1年分がまとめて精算されるため、最終的な税額は変わりません。
給与と賞与を分けて計算する理由
手取りの計算で「年収 ÷ 12」を月給とみなすと、社会保険料がずれます。 賞与には上限があるため、賞与の割合が大きい人ほど、 まとめて計算した額より実際の保険料は少なくなります。
逆向きのずれもあります。 年収を12等分すると月給が実際より大きく見えるため、 標準報酬月額の等級が本来より高く出ることがあります。 等級が1段違うだけでも、年間では数千円から数万円の差になります。 賞与を分けて入れる意味は、この2つのずれをどちらも避けられる点にあります。
| 年収を12等分して計算 | 月給と賞与を分けて計算 | |
|---|---|---|
| 社会保険料 | 上限が効かず、多めに出る | 上限が効いて、実際に近づく |
| 賞与の割合が小さい人 | ほぼ同じ | ほぼ同じ |
| 賞与の割合が大きい人 | 実際よりかなり重く出る | 実際に近い |
ToMiの計算では、賞与を分けて入れられるようにしています。 入れない場合は年収を12等分した月給として扱い、その旨を画面に出します。賞与も含めた年間手取りを確認すると、どちらの前提で計算したかが分かります。
年間の手取りにどう反映するか
家計を組むときに気をつけたいのは、賞与を毎月の生活費の前提に入れないことです。 賞与は業績や評価で変動し、支給されない年もありえます。 給与のように毎月確実に入るものとは、性質が違います。 就業規則で支給が約束されている場合でも、金額まで固定されていることは多くありません。
- 毎月の固定費は、賞与を除いた月々の手取りで組む
- 賞与は、貯蓄・一時的な支出・繰上げ返済など、止めても暮らしが崩れない使い道に充てる
- 年間の家計を見るときだけ、賞与を含めた手取り年収を使う
賞与を含めた年間の手取りが分かると、 「1年で何円貯められるか」の基準ができます。 そこから生活防衛資金や余裕資金を出すと、額面で計算するよりずれません。
月々の手取りと賞与を分けて把握しておくと、 収入が途切れたときに何が起こるかも見通しやすくなります。 毎月の生活が月々の手取りで完結していれば、 賞与が出なかった年でも暮らしそのものは崩れません。 崩れるのは、賞与を前提に固定費を組んでいた場合です。
住宅ローンのボーナス返済も、同じ考え方で見ておきたいところです。 毎月の返済を軽くできる一方で、賞与が減った年や出なかった年に、 まとまった返済だけが残ります。 設定するとしても、賞与が出なくても払える範囲に抑えておくのが無難です。
賞与の使い道を決めるときは、 先に「何に充てるか」を決めてから振り込みを待つほうがうまくいきます。 振り込まれてから考えると、生活費の口座に混ざって、 何に使ったのか分からないまま消えていきます。
転職や退職を考えるときも、賞与の扱いは確認しておく価値があります。 支給日に在籍していることが条件になっている勤務先が多く、 その場合、退職日が支給日より前だと賞与は出ません。 支給日の直後に退職すると返還を求められる規程を持つ勤務先もあります。 年収の見込みが大きく変わるところなので、就業規則を先に見ておくと判断しやすくなります。
社会保険料が「月給 × 料率」で決まらない理由は標準報酬月額とは?で扱っています。上限の具体的な金額は会社員の社会保険料率にまとめました。
賞与の社会保険料
賞与の社会保険料は、支給額から1,000円未満を切り捨てた標準賞与額に料率をかけて計算します。 料率そのものは毎月の給与と同じで、健康保険・介護保険・厚生年金のいずれも、 月々と別の率が使われるわけではありません。
月々の給与と大きく違うのは、等級に丸めない点です。 毎月の給与は標準報酬月額の等級に当てはめますが、 賞与は支給額そのものを使います。 このため、賞与が少し増えれば保険料も少し増える、という素直な関係になります。
雇用保険も賞与にかかりますが、こちらは標準賞与額ではなく、 実際に支払われた賞与の額に料率をかけます。 社会保険と雇用保険で、対象にする金額の取り方が違う点も、 明細を細かく検算するときに引っかかりやすいところです。
上限がある
標準賞与額には上限があり、健康保険と厚生年金で数え方が違います。 片方は年度の累計に対して、もう片方は1回の支給ごとに上限が設けられています。 年度の累計で数えるほうは、途中で上限に達すると、 それ以降に支給された賞与には保険料がかからなくなります。
この違いのため、同じ年間賞与でも支給回数によって保険料が変わります。 1回あたりの上限がある保険では、まとめて1回で支給されるより、 2回に分けたほうが対象になる額が大きくなることがあります。
もうひとつ知っておきたいのが、年3回以下という区切りです。 年に4回以上支給されるものは、賞与ではなく報酬として扱われ、 標準報酬月額の計算に含まれます。 「毎月の給与とは別に、年に何度も支給がある」場合、 その扱いが賞与なのか報酬なのかで保険料の計算が変わります。
退職の直前に支給された賞与についても、扱いが変わることがあります。 資格を失った月に支給された賞与は保険料の対象にならない場合があるため、 退職の時期と賞与の支給日が近いときは、勤務先に確認すると確実です。