「入りすぎ」とは何を指すのか
保険を5本持っている人は入りすぎで、2本の人は適正、ということはありません。本数は、入りすぎかどうかを決めません。
決めるのは2つです。ひとつは、同じ場面で出るお金がどれだけあるか。 もうひとつは、その場面で本当にお金が要るかどうか。 前者は契約を並べれば分かりますが、後者は家族・貯金・公的な保障を見ないと分かりません。
保険は毎月の固定費なので、月5,000円でも年6万円、3本あれば年18万円になります。 金額としては大きいのですが、大きいことと無駄であることは別です。 まず、何に払っているのかを見えるようにするところから始めます。
ここでいう「同じ場面」とは、入院した、がんと診断された、亡くなった、といった お金が出るきっかけのことです。同じきっかけで2つの契約からお金が出るなら、 そこは確かめる価値があります。逆に、片方が入院で、もう片方が死亡なら、 金額がどれだけ大きくても、そこは重なっていません。
もうひとつ、契約が多いことには、たいてい理由があります。 就職したとき、結婚したとき、子どもが生まれたとき、家を買ったとき。 そのたびに必要だと思ったものを足していけば、契約は自然に増えます。 増えたこと自体が間違いだったわけではなく、 そのあと全体を見直す機会がなかっただけ、ということがほとんどです。 だから、まず全体を1枚に並べるところに戻ります。
商品名では比べられない
「医療保険」という同じ名前でも、中に入っている給付は契約ごとに違います。 入院した日数ぶん出るもの、入院1回につき一時金が出るもの、手術に出るもの、 がんと診断されたときに出るもの。名前は同じでも、お金が出る場面が違います。
だから、商品名のまま並べても重なりは見えません。給付の単位まで分けて初めて、同じ場面で出るものがどれなのかが分かります。
| 給付の単位 | 何が起きたときに出るか | 単位 |
|---|---|---|
| 死亡 | 亡くなったとき | 円 |
| 入院日額 | 入院した日数ぶん | 円/日 |
| 入院一時金 | 入院1回につき | 円/回 |
| 手術 | 所定の手術を受けたとき | 円/回 |
| がん診断一時金 | がんと診断されたとき | 円/回 |
| 就業不能 | 働けなくなったとき | 円/月 |
分けて並べる単位の例
ここまで分けると、契約の名前が違っていても、同じ行に並ぶものが出てきます。 「医療保険」と「がん保険」の両方に入院日額が入っていることがあります。 「終身保険」と「収入保障保険」は、どちらも死亡したときに出るお金です。 商品名のまま眺めていると気づきませんが、 給付の単位に分ければ、同じ行に来ます。
単位の違う保障を足さない
分けたあとに、もうひとつ気をつけることがあります。単位の違うものを足さないことです。
入院日額5,000円と入院一時金10万円を足して「10.5万円の医療保障」と書くのは、 長さと重さを足すようなものです。日額は入院した日数だけ伸び、 一時金は入院1回につき1度しか出ません。足した数に意味がありません。
重なっていても、無駄とは限らない
ここが、この話でいちばん誤解されるところです。 同じ種類の保障が2つの契約にあっても、片方が無駄とは限りません。
生命保険の給付金は、実際にかかった費用に合わせて調整されるものではありません。 それぞれの契約の支払条件を満たせば、複数の契約から給付を受けられる場合があります。 生命保険文化センターも、複数の契約や特約から給付を受けられる可能性があることを示しています。
そもそも重なっていないこともある
もうひとつ、支払条件が違えば出る場面も違います。 どちらも「入院日額5,000円」でも、片方が入院1日目から、 もう片方が5日目からなら、4日で退院したときには片方しか出ません。
- 免責期間(何日目から出るか)
- 1入院あたりの給付日数の限度
- 通算の給付日数の限度
- 支払事由(どういう状態なら出るか)
この4つを見比べて、初めて「重なっている」かどうかが決まります。保障の名前が同じというだけでは、まだ何も分かっていません。
しかも、重なり方は場面によって変わります。 片方が60日型、もう片方が120日型なら、短い入院ではどちらからも出ますが、 61日を超えたところからは120日型だけが残ります。 この2つは、前半では重なっていて、後半では重なっていません。 「重なっているかどうか」は、はい・いいえで答えられないことがあるということです。
民間の保険は、いちばん外側にある
民間の保険だけを見て、多いか少ないかは判断できません。 その内側に、公的な保障と勤務先の保障があるからです。
医療費には高額療養費があり、1か月の自己負担に上限があります。 会社員が病気で働けなくなったときは、健康保険から傷病手当金が出ます。 住宅ローンに団信が付いていれば、亡くなったときに残債は無くなります。 勤務先に団体保険や弔慰金の制度があることもあります。
金融庁も、公的な保険には民間の保険を補完する面があり、 公的な保障の内容を理解したうえで、必要に応じて民間の保険に加入することが重要だとしています。
詳しくは公的保険と民間保険の違いに整理しています。
確認する順番
並べたあと、何から確認するか。順番があります。 この順番を守らないと、何度もやり直すことになります。
- 手元にいくら残すかを決める。貯金で何か月持つかで、保険に頼る範囲が変わります。
- 住宅ローンと団信を確認する。団信があれば、その分の死亡保障は要りません。
- 勤務先の保障を確認する。団体保険・弔慰金・見舞金。退職後も続くかも合わせて。
- 公的な保障を確認する。高額療養費・傷病手当金・遺族年金。
- そのうえで、民間の保険を見る。ここがいちばん最後です。
自分の契約を並べるところは保険保障マップでできます。保険会社名も商品名も要りません。保険料と、どんな保障があるかだけです。
そのうえで「自分の場合はどうか」まで見るなら、保険料、似た保障に何重にも払っていない?で、家族・貯金・勤務先の保障・団信を5問訊いて、何から確認すればよいかを出します。

