保険と税

保険の入りすぎとは?

契約が何本あるかは、入りすぎかどうかを決めません。決めるのは、同じ場面で出るお金がどれだけあるかと、その場面で本当にお金が要るかどうかです。

読了めやす8更新4回読まれています

この記事の要点

  • 契約数の多さは「入りすぎ」を意味しません。同じ場面で出る保障が重なっているかどうかで見ます。
  • 商品名(医療保険・がん保険)では比べられません。死亡・入院日額・入院一時金・がん診断など、給付の単位まで分けます。
  • 入院日額と入院一時金は足せません。片方は日数で伸び、片方は1回きりで、足した数に意味がありません。
  • 重なっていても不要とは限りません。条件を満たせば、複数の契約から給付を受けられる場合があります。
  • 支払条件(免責期間・給付限度)が違えば、同じ名前の保障でも出る場面が違います。
  • 勤務先の団体保険、住宅ローンの団信、公的な保障を確認しないうちは、民間の保険だけで判断できません。

「入りすぎ」とは何を指すのか

保険を5本持っている人は入りすぎで、2本の人は適正、ということはありません。本数は、入りすぎかどうかを決めません

決めるのは2つです。ひとつは、同じ場面で出るお金がどれだけあるか。 もうひとつは、その場面で本当にお金が要るかどうか。 前者は契約を並べれば分かりますが、後者は家族・貯金・公的な保障を見ないと分かりません。

この記事で扱うのは、前者の「並べ方」です。 後者の「必要かどうか」は、並べたあとにしか判断できません。 順番を逆にすると、必要なものを削ることになります。

保険は毎月の固定費なので、月5,000円でも年6万円、3本あれば年18万円になります。 金額としては大きいのですが、大きいことと無駄であることは別です。 まず、何に払っているのかを見えるようにするところから始めます。

ここでいう「同じ場面」とは、入院した、がんと診断された、亡くなった、といった お金が出るきっかけのことです。同じきっかけで2つの契約からお金が出るなら、 そこは確かめる価値があります。逆に、片方が入院で、もう片方が死亡なら、 金額がどれだけ大きくても、そこは重なっていません。

もうひとつ、契約が多いことには、たいてい理由があります。 就職したとき、結婚したとき、子どもが生まれたとき、家を買ったとき。 そのたびに必要だと思ったものを足していけば、契約は自然に増えます。 増えたこと自体が間違いだったわけではなく、 そのあと全体を見直す機会がなかっただけ、ということがほとんどです。 だから、まず全体を1枚に並べるところに戻ります。

商品名では比べられない

「医療保険」という同じ名前でも、中に入っている給付は契約ごとに違います。 入院した日数ぶん出るもの、入院1回につき一時金が出るもの、手術に出るもの、 がんと診断されたときに出るもの。名前は同じでも、お金が出る場面が違います。

商品名ではなく、給付の単位まで分けて比べる商品名医療保険A医療保険B給付の単位入院日額入院日額手術がん診断重なっているのは、入院日額だけ手術とがん診断は、片方にしかない
同じ「医療保険」でも、中に入っている給付は契約ごとに違います。商品名のまま並べると、重なっていないものが重なって見えます。何が起きたときに、いくら、どの単位で出るかまで分けると、初めて比べられます。

だから、商品名のまま並べても重なりは見えません。給付の単位まで分けて初めて、同じ場面で出るものがどれなのかが分かります。

給付の単位何が起きたときに出るか単位
死亡亡くなったとき
入院日額入院した日数ぶん円/日
入院一時金入院1回につき円/回
手術所定の手術を受けたとき円/回
がん診断一時金がんと診断されたとき円/回
就業不能働けなくなったとき円/月

分けて並べる単位の例

ここまで分けると、契約の名前が違っていても、同じ行に並ぶものが出てきます。 「医療保険」と「がん保険」の両方に入院日額が入っていることがあります。 「終身保険」と「収入保障保険」は、どちらも死亡したときに出るお金です。 商品名のまま眺めていると気づきませんが、 給付の単位に分ければ、同じ行に来ます。

この分け方は、生命保険協会が契約内容の登録制度で扱っている項目の考え方と同じ方向です。 死亡保険金、入院給付金、がん一時金、就業不能保障といった単位で扱われています。 商品の名前ではなく、給付の中身で見るのが業界側の整理でもあります。

単位の違う保障を足さない

分けたあとに、もうひとつ気をつけることがあります。単位の違うものを足さないことです。

単位の違う保障を、足し合わせない入院日額日数だけ伸びる入院一時金1回入院1回につき1度だけこの2つを足した金額には、意味がありません
入院日額は入院した日数だけ伸び、入院一時金は入院1回につき1度だけ出ます。足した数に意味はありません。同じ「入院」で出るものでも、単位が違えば別のものとして並べます。

入院日額5,000円と入院一時金10万円を足して「10.5万円の医療保障」と書くのは、 長さと重さを足すようなものです。日額は入院した日数だけ伸び、 一時金は入院1回につき1度しか出ません。足した数に意味がありません。

保険の比較記事で「保障額の合計」が出てくることがありますが、 その中身が日額と一時金を足したものなら、その数字は使えません。何が、いつ、いくら出るのかを分けたまま見てください。
マネック案内役):同じ「入院」でも、日数で伸びるものと1回きりのものがあるんだよね。足せないものを足した合計を見ても、 多いのか少ないのか分からないんだ。

重なっていても、無駄とは限らない

ここが、この話でいちばん誤解されるところです。 同じ種類の保障が2つの契約にあっても、片方が無駄とは限りません

生命保険の給付金は、実際にかかった費用に合わせて調整されるものではありません。 それぞれの契約の支払条件を満たせば、複数の契約から給付を受けられる場合があります。 生命保険文化センターも、複数の契約や特約から給付を受けられる可能性があることを示しています。

そもそも重なっていないこともある

もうひとつ、支払条件が違えば出る場面も違います。 どちらも「入院日額5,000円」でも、片方が入院1日目から、 もう片方が5日目からなら、4日で退院したときには片方しか出ません。

  • 免責期間(何日目から出るか)
  • 1入院あたりの給付日数の限度
  • 通算の給付日数の限度
  • 支払事由(どういう状態なら出るか)

この4つを見比べて、初めて「重なっている」かどうかが決まります。保障の名前が同じというだけでは、まだ何も分かっていません

しかも、重なり方は場面によって変わります。 片方が60日型、もう片方が120日型なら、短い入院ではどちらからも出ますが、 61日を超えたところからは120日型だけが残ります。 この2つは、前半では重なっていて、後半では重なっていません。 「重なっているかどうか」は、はい・いいえで答えられないことがあるということです。

民間の保険は、いちばん外側にある

民間の保険だけを見て、多いか少ないかは判断できません。 その内側に、公的な保障と勤務先の保障があるからです。

民間の保険は、いちばん外側にある公的保障勤務先・団信民間の保険内側から確認する。民間の保険はいちばん最後に決まる
医療費には高額療養費があり、会社員には傷病手当金があり、住宅ローンには団信があります。民間の保険は、それらで足りない部分を埋めるものです。内側を確認しないまま外側だけを見ると、足りているものを足りないと判断します。

医療費には高額療養費があり、1か月の自己負担に上限があります。 会社員が病気で働けなくなったときは、健康保険から傷病手当金が出ます。 住宅ローンに団信が付いていれば、亡くなったときに残債は無くなります。 勤務先に団体保険や弔慰金の制度があることもあります。

金融庁も、公的な保険には民間の保険を補完する面があり、 公的な保障の内容を理解したうえで、必要に応じて民間の保険に加入することが重要だとしています。

内側を確認しないまま外側だけを見ると、足りているものを足りないと判断します。 逆に、勤務先の保障をあてにして民間を減らすときは、 その保障が退職後も続くのかを必ず確かめてください。多くは続きません。

詳しくは公的保険と民間保険の違いに整理しています。

年間保険料は「削減できる額」ではない

契約を並べると、年間保険料の合計が出ます。3本で18万円、といった数字です。 この数字は、削減できる額ではありません

理由は単純で、1つの契約に複数の保障が入っている場合、 どの保障にいくら払っているかが分からないからです。 月1万円の契約に死亡・医療・がんの3つが入っていても、 「医療の部分に月◯円」という内訳は、特約ごとの保険料が分からない限り出せません。

出せる出せない
年間保険料の合計無駄になっている保険料
似た保障を含む契約の年間保険料削減できる保険料
確認したい契約の数重なっている部分だけの保険料

出せるものと、出せないもの

それでも、年間保険料の合計を出すことには意味があります。 引き落としは月ごとに数千円ずつ分かれていて、 1年でいくらになるのかを見ていないことが多いからです。 「年18万円」という数字は、それが高いか安いかを決めてはくれませんが、 中身を確かめる手間をかける価値があるかどうかは決めてくれます。

特約ごとの保険料が証券に書かれている契約なら、そこまで入れれば内訳が出ます。 ただしその場合も、その額を「削減できる額」とは呼べません。 その保障が要るかどうかは、まだ決まっていないからです。

確認する順番

並べたあと、何から確認するか。順番があります。 この順番を守らないと、何度もやり直すことになります。

  • 手元にいくら残すかを決める。貯金で何か月持つかで、保険に頼る範囲が変わります。
  • 住宅ローンと団信を確認する。団信があれば、その分の死亡保障は要りません。
  • 勤務先の保障を確認する。団体保険・弔慰金・見舞金。退職後も続くかも合わせて。
  • 公的な保障を確認する。高額療養費・傷病手当金・遺族年金。
  • そのうえで、民間の保険を見る。ここがいちばん最後です。

自分の契約を並べるところは保険保障マップでできます。保険会社名も商品名も要りません。保険料と、どんな保障があるかだけです。

そのうえで「自分の場合はどうか」まで見るなら、保険料、似た保障に何重にも払っていない?で、家族・貯金・勤務先の保障・団信を5問訊いて、何から確認すればよいかを出します。

どちらも、解約を勧めるものではありません。 解約すると保障は無くなり、元に戻せません。 再加入するときは年齢で保険料が上がり、健康状態によっては契約できないこともあります。 減らす場合も、解約の前に見直す前に確認することを読んでください。
マネック案内役):「入りすぎ」かどうかは、並べただけでは決まらないんだ。 でも何に年間いくら払っているかは、 並べれば必ず分かる。そこからでいいと思うよ。

よくある質問

保険は何本までが適正ですか?
本数で決まるものではありません。1本で足りる人もいれば、死亡・医療・就業不能を別々に持って3本になる人もいます。見るのは本数ではなく、同じ場面で出る保障が重なっているかどうかと、その場面で自分にお金が要るかどうかです。
同じ保障が2つあったら、片方は解約すべきですか?
そうとは限りません。条件を満たせば両方から給付を受けられる場合がありますし、支払条件が違えば出る場面も違います。まず契約ごとの支払事由と免責期間を見比べてください。減らす場合も、解約の前に保障額の減額や特約だけの解約でできないかを保険会社に確かめる順番です。
保険証券が見つかりません。何から確認できますか?
多くの保険会社は年1回「契約内容のお知らせ」を送っています。保険会社のマイページでも保障の内容を見られることがあります。証券が無くても、口座から引き落とされている額が分かれば、年間いくら払っているかまでは並べられます。

参照した一次情報

あわせて読みたい

この記事は商品の仕組みを説明するものであり、 特定の商品の購入を勧めるものではありません。 個別の投資助言でもありません。制度や条件は変わることがあるため、実際のご判断にあたっては国税庁の生命保険料控除のページや、お取引先の金融機関で最新の条件をご確認ください。