両方から受け取れることがある
医療保険を2つ持っている場合、「どちらか一方しか出ない」という決まりはありません。 それぞれの契約の支払条件を満たせば、両方から給付金を受け取れる場合があります。
生命保険文化センターも、複数の契約や複数の特約から給付を受けられる可能性がある例を示しています。 「2つ持っているから片方は無駄」という理解は、正確ではありません。
実際に、目的を分けて2つ持っている人もいます。 古い契約を入院日額の土台として残しつつ、 短い入院でも出る一時金のある契約をあとから足す、といった形です。 この2つは同じ「入院」という場面で出ますが、出方が違うので、 片方だけでは届かなかった部分を、もう片方が埋めています。
この記事では、2つ以上の医療保険を持っているときに何が起きるのかを、 給付の出方・条件の違い・請求の手順の順に見ていきます。 そのうえで、重なっているかどうかを自分で確かめる手順まで書きます。 解約すべきかどうかの話は、そのあとです。
なぜ両方出るのか
損害保険とは仕組みが違うためです。
| 何をもとに支払うか | |
|---|---|
| 生命保険・医療保険の給付金 | 契約で決めた額(定額) |
| 火災保険などの損害保険 | 実際に生じた損害の額 |
給付の決まり方の違い
医療保険の入院給付金は「入院1日につき5,000円」のように、あらかじめ額が決まっています。 実際にかかった医療費がいくらだったかで調整されるものではありません。 だから、条件を満たす契約が2つあれば、2つとも支払われることがあります。
ただし、これは「いくつでも入れば、いくらでも出る」という意味ではありません。 契約するときには、加入できる保障額に上限が置かれていることがあります。 生命保険業界には契約内容登録制度があり、 各社は他社での加入状況を確認できる仕組みを持っています。 同じ人が過大な保障を持つことがないように運用されているので、 実際に持てる範囲には、はじめから枠があるということです。
ただし、条件は契約ごとに違う
両方から出る「場合がある」と書いたのは、条件が契約ごとに違うからです。 同じ「入院日額5,000円」でも、出る場面が同じとは限りません。
片方が入院1日目から出て、もう片方が5日目からなら、 4日で退院したときには片方しか出ません。 この場合、2つの契約はそもそも重なっていません。 短い入院は片方が、長い入院は両方が担当している、という形です。
見比べる4つ
- 支払事由。どういう状態になったら出るのか。
- 免責期間。入院の何日目から出るのか。
- 1入院あたりの限度日数。60日型、120日型など。
- 通算の限度日数。契約全体で何日まで出るのか。
この4つのうち、いちばん見落とされるのが免責期間です。 入院日数は年々短くなっていて、多くの入院は1週間前後で終わります。 「入院5日目から」という契約は、その多くで出番がありません。 同じ日額を持っていても、実際に出る回数がまったく違う、 ということが起こります。
これは保険証券か、毎年届く「契約内容のお知らせ」に書かれています。 分からなければ、保険会社に「入院給付金は何日目から、何日まで出るか」と聞けば済みます。
日額と一時金は、足せない
複数の契約を比べるとき、もうひとつ気をつけることがあります。 入院日額と入院一時金は、単位が違うので足せません。
入院日額5,000円と入院一時金10万円を持っていても、 「10.5万円の医療保障」ではありません。 日額は入院した日数だけ伸び、一時金は入院1回につき1度だけ出ます。
| 保障 | 計算 | 出る額 |
|---|---|---|
| 入院日額 5,000円 | 5,000円 × 10日 | 50,000円 |
| 入院一時金 10万円 | 入院1回につき | 100,000円 |
| 合計 | — | 150,000円 |
10日間入院した場合(例)
では、3日で退院した場合はどうなるか。 日額のほうは1万5,000円まで下がりますが、一時金のほうは10万円のままです。 短い入院では一時金の比重が大きく、長い入院では日額が効いてきます。 どちらが自分に合うかは、 どんな入院を想定するかによって変わる、ということです。
このように、日数が決まって初めて合計が出ます。 日数が決まる前の「保障額の合計」には意味がありません。 比べるときは、日額は日額どうし、一時金は一時金どうしで見てください。
給付日数には限度がある
入院日額には、1回の入院で出る日数の限度と、 契約全体で出る日数の通算の限度があります。
複数の契約を持っている場合、この限度は契約ごとに別々に数えます。 片方が60日型、もう片方が120日型なら、 61日目以降は120日型のほうだけが出る、という形になります。
1入院あたりの限度日数は、古い契約ほど長い傾向があります。 かつては120日型・180日型が主流で、いまは60日型が多くなっています。 入院日数が短くなったことに合わせて、商品の設計も変わってきたためです。 古い契約を「保険料が高いから」という理由だけで解約すると、 いまは手に入りにくい条件を手放すことになる場合があります。
長期の入院に備えたい場合、日額を増やすより、 限度日数の長い契約を1つ持つほうが効くことがあります。金額の大小だけでなく、期間の長さも比べるということです。
請求は自動ではない
複数の契約から給付を受けられる場合でも、請求は自分でします。 保険会社どうしが連絡を取り合って、まとめて払ってくれるわけではありません。
- 契約している保険会社それぞれに、自分で連絡する。
- 診断書が必要な場合、契約ごとに用意することがある(費用がかかります)。
- 請求できる期間には期限があります。多くは3年です。
「片方から出たので、もう片方は請求しなくてよい」ということもありません。 「入っていたのに請求していなかった」は、実際によくあります。 そうならないために、どの契約でどんなときにお金が出るのかを、 自分と家族が把握できる形にしておくことが大事です。
請求の窓口が複数になるぶん、手間もかかります。 入院中や治療中の本人がすべてを進めるのは負担が大きいので、 契約の一覧を家族と共有しておくと、そこが軽くなります。 保険会社名・証券番号・連絡先が分かれば、ほとんどの手続きは始められます。
契約を1枚に並べておくのは、その意味でも役に立ちます。保険保障マップで、保険料と保障の種類を入れると1枚の表になります。
重なっているかを確かめる方法
最後に、手順をまとめます。
- 契約ごとに、保障を給付の単位まで分けて書き出す(死亡・入院日額・入院一時金・手術・がん診断…)。
- 同じ単位が2つ以上ある行を探す。ここが「似た保障」の候補です。
- 候補について、支払事由・免責期間・限度日数を見比べる。
- 出る場面が同じなら重なっています。違えば、重なっていません。
1と2は保障マップで機械的にできます。3と4は証券を見る作業なので、人がやることになります。
証券が見つからない契約があっても、そこで止まらなくて構いません。 多くの保険会社は年1回「契約内容のお知らせ」を送っていますし、 マイページから保障の内容を見られることもあります。 口座から引き落とされている額さえ分かれば、 年間いくら払っているかまでは並べられます。 足りない部分は、あとから証券を取り寄せて埋めれば済みます。
そのうえで「自分に必要か」まで見るなら、保険料、似た保障に何重にも払っていない?で、家族・貯金・勤務先の保障・団信まで含めて確認の順番を出します。
