控除証明書に「新」「旧」と書かれているのを見て、 どちらが得なのかと気になった人は多いはずです。 この2つは、2011年12月の税制改正で分かれたものです。 使う計算表も、区分の数も、上限も違います。
2012年1月1日という境目
もともと生命保険料控除には、一般生命保険料と個人年金保険料の2つしかありませんでした。 そこへ介護医療保険料という区分が加わり、 あわせて計算表と上限が組み直されたのが2012年の改正です。
改正後の制度が新契約、改正前の制度が旧契約です。 どちらか一方に統一されたのではなく、いまも両方の制度が並んで動いています。 2011年以前から続いている契約は、いまも旧契約の表で計算されます。
区分が増えたのは、医療保険や介護保険が広まったことに対応するためです。 それまでは医療保険の保険料も死亡保障と同じ枠を使っていたので、 両方に入っている人は片方の枠を食い合っていました。 新契約では介護医療が独立した枠を持つ形になり、そのかわり1つあたりの枠は狭くなっています。 どちらが有利かは、どの区分にいくら払っているかによって変わります。
契約した年だけでは決まらない
ここがいちばん間違えやすいところです。 境目は契約日ですが、その後の更新や特約の中途付加で、新契約の扱いに変わります。 2010年に契約した保険が、いま新契約として証明されていることは珍しくありません。
たとえば10年ごとに更新する定期保険では、更新のたびに新しい契約として扱われます。 2012年より前に入っていても、そのあと更新していれば新契約になります。 医療特約を途中で付け足した場合も同じです。
一方で、契約内容を変えない自動更新や、保険料の払込方法を変えただけの場合など、 扱いが変わらないこともあります。どの変更が新契約への切り替わりに当たるかは 契約の内容によるので、自分で線を引かずに証明書の記載で判断してください。
区分の数が違う
旧契約の区分は、一般生命保険料と個人年金保険料の2つだけです。 介護医療保険料は新契約でできた区分なので、旧契約側には存在しません。
| 旧契約 | 新契約 | |
|---|---|---|
| 一般生命保険料 | あり | あり |
| 介護医療保険料 | なし | あり |
| 個人年金保険料 | あり | あり |
区分が増えたということは、枠が増えたということでもあります。 新契約では医療保険の保険料が独立した枠を持つので、 死亡保障の枠を圧迫しません。旧契約では、 医療保険の保険料も一般生命保険料の枠を使うことになります。
1区分あたりの上限が違う
1区分あたりの上限は、旧契約のほうが大きく設定されています。 区分が2つしかないぶん、1つあたりの枠が広いという形です。 新契約は区分が3つに増えたかわりに、1つあたりの枠が狭くなっています。
どちらの制度でも、払った額に比例して控除額が増えるわけではありません。 はじめは全額が控除になり、段が進むごとに1/2、1/4と割合が下がって、 最後は横ばいになります。段の切れ目の位置も、新旧で違います。
3区分を合計した上限は、新旧で共通です。 つまり旧契約だけの人は2区分でその上限を目指すことになり、 新契約だけの人は3区分で目指すことになります。 区分が多いほうが、合計上限まで届きやすいという違いが出ます。
新旧の両方があるときは、足さずに比べる
同じ区分に新契約と旧契約の両方がある場合、 それぞれの控除額を足せばよさそうに見えます。 しかし実際には、次の3つを計算していちばん大きい額を採ります。
| 計算のしかた | 上限 | |
|---|---|---|
| ア | 新契約と旧契約の控除額を合計する | 新契約の区分上限 |
| イ | 新契約だけで計算する | 新契約の区分上限 |
| ウ | 旧契約だけで計算する | 旧契約の区分上限 |
注目してほしいのは上限の列です。 アとイは新契約の上限、ウだけが旧契約の上限を使います。 旧契約の上限のほうが大きいので、旧契約の払込が多い人は、新契約を無視したほうが大きくなります。 足すと新契約の上限で切られてしまうためです。
「旧が一定額を超えるか」という目安
国税庁の案内には、旧契約の払込が一定額を超えるかどうかで どちらを使うかを判断する書き方があります。 これはこの3つを比べた結果を、所得税の数字で言い換えたものです。 結論は同じですが、なぜそうなるのかは上の表のほうが分かります。
言い換えた目安のほうだけを覚えると、条件が変わったときに応用できません。 上限が改正で動けば境目の額も動きますし、 次の節で見るように、住民税では同じ目安が使えません。 3つを比べる、という形のほうを覚えておくと、どの場面でも通用します。
所得税と住民税で結論が分かれる
さきほどの目安を、そのまま住民税に持ち込むことはできません。 住民税は段の切れ目も、区分ごとの上限も、3区分を合計した上限も、 所得税とは別の数字だからです。
手で計算する場合は、所得税と住民税で3つずつ、 区分ごとに合計6通りを比べることになります。 区分が3つあれば18通りです。ここを省略すると、 どちらかの税で本来より小さい控除額になります。
住民税のほうが上限が小さいので、同じ払込額でも先に頭打ちになります。 所得税では「もう少し払えば控除が増える」状態でも、 住民税ではすでに増えない状態になっている、ということが起こります。 保険料を増やすかどうかを控除で判断するときは、両方を見ておく必要があります。
旧契約の医療保険はどこに入るか
旧契約に介護医療保険料の区分はないので、 旧契約の医療保険や介護保険の保険料は旧生命保険料として一般に含めます。 新契約の介護医療保険料と一緒にすることはできません。
この扱いを知らずに介護医療の欄へ書いてしまうと、 一般生命保険料の枠が空いたままになり、控除額が小さくなることがあります。 逆に、一般の枠がすでに埋まっている人は、 旧契約の医療保険を足しても額が変わらないこともあります。
古い医療保険を新しいものに切り替えるかどうかを考えるときは、 この違いも判断材料になります。旧契約のまま持っていると一般の枠を使い続けますが、 新しく入り直せば介護医療の枠に移り、一般の枠が空きます。 もちろん保障の中身や保険料そのものが先に来る話で、 控除だけで決めるものではありません。ただ、切り替えたときに 控除額がどう動くかは、事前に計算して確かめられます。
自分の場合を確かめる
新旧の判断そのものは証明書を見れば済みますが、 そのあとの計算は手数が多くなります。区分ごとに3通り、 それを所得税と住民税で2回。どれが採用されたのかも追いにくいところです。
ToMiでは新旧を分けて入れて、控除額と使い忘れを確認することができます。 区分と新旧、年間の支払保険料を入れると、 どの計算が採用されたのかも含めて所得税と住民税の控除額が出ます。
新契約か旧契約かの最終的な確認は、保険会社が出す控除証明書でしてください。 更新や特約の中途付加で扱いが変わっている場合があり、 それを確かめられるのは保険会社だけです。 記事で説明できるのは制度の形までで、自分の契約がどちらかは証明書にしか書かれていません。
