外貨預金の説明を読むと「為替手数料 1米ドルあたり25銭」のような表示が出てきます。 別途請求される費用のようにも見えますが、実際には請求書が来るわけではありません。 どこでどう負担しているのかを整理します。見落とすと、金利の比較そのものが成り立たなくなります。
為替手数料は、レートの中にある
銀行はその日の基準レート(TTM)を決め、そこから離した二つのレートを提示します。 円から外貨へ替えるときは基準より円安側のTTS、 外貨から円へ戻すときは基準より円高側のTTBです。
この基準からのずれが、為替手数料にあたります。 手数料として別に引かれるのではなく、両替に使うレートそのものが不利な側に寄っている、という形です。
「1米ドルあたり◯銭」の意味
銭は円の100分の1です。「1米ドルあたり25銭」なら、 基準レートから0.25円だけ離れたレートが適用される、という意味になります。 1万ドルを買うなら、25銭 × 10,000 で2,500円ぶんの負担です。 金額が大きくなるほど、負担も比例して増えます。 少額のうちは気にならなくても、まとまった額を動かすときには無視できない大きさになります。
注意したいのは、これが片道の数字なのか往復の数字なのかです。 銀行の説明では片道で書かれていることが多く、その場合、 円 → 外貨 → 円と往復すればこの倍を負担します。 一方、「TTSとTTBの差」として書かれていれば、それは往復ぶんです。
往復でいくら負担するのか
負担の重さは、金額ではなく割合で見るほうが分かりやすくなります。 レートの水準に対して何%かを出せば、通貨をまたいでも比べられるからです。
たとえば1ドル150円の水準で往復2円かかるなら、およそ1.3%です。 これは、預けた瞬間に1.3%のマイナスから始まるということを意味します。 年利1%の通貨なら、1年預けても為替コストを取り戻せません。 金利の数字だけを見ていると、この出発点のマイナスが視界に入りません。
図の元本割れラインが預入時のレートより左(円高側)にあるのは、利息が乗っているからです。 為替コストが大きいほど、この二つの線は近づきます。 コストが利息を上回れば、元本割れラインは預入時のレートより右に来ます。 つまり、円安にならないと元本を回復できない状態です。
銀行・通貨・取引方法で変わる
| 変わる要因 | 傾向 |
|---|---|
| 通貨 | 取引量の多い米ドルは狭く、新興国通貨は広くなりやすい |
| 取引方法 | 店頭より、インターネットバンキングのほうが狭いことが多い |
| 銀行 | 同じ通貨でも銀行によって差がある |
| キャンペーン | 期間限定で狭くなることがある |
幅は日々変わるため、具体的な数値は載せていません。取引前に各行の表示で確認してください。
同じ通貨・同じ金額でも、どこでどう取引するかで負担が変わります。 金利だけを横に並べて比べると、この差が抜け落ちます。金利が0.1%高い銀行より、為替コストが0.3%狭い銀行のほうが有利ということも起こります。
預入期間が短いほど、この差は効いてきます。 為替コストは預けるときに一度かかる負担で、期間の長さに関係しません。 一方、利息は期間に比例して積み上がります。 つまり、1か月ものと1年ものでは、同じコストを取り戻すのに必要な利息の量が12倍違うことになります。 短期の高金利キャンペーンが目を引くのは、この関係が見えにくいからでもあります。
もうひとつ、キャンペーンの読み方にも注意が要ります。 「為替手数料が期間限定で片道◯銭」とある場合、その期間に預け入れたぶんだけが対象で、 円に戻すときのコストは通常どおりということがあります。 往復のうち片道だけが安くなっている、という形です。 対象になるのが預入時だけなのか、払戻時も含むのかは、条件をよく読んで確認してください。
レートとは別にかかる手数料
ここまでは、同じ銀行の中で円 → 外貨預金 → 円と動かす場合の話です。 次のような取引では、レートとは別建ての手数料がかかることがあります。
- 外貨現金への両替(紙幣を受け取る場合)
- 他の金融機関への外貨送金
- 他の金融機関からの外貨の受け取り
- 外貨預金を別の金融機関へ移す場合
とくに外貨現金は、レートの幅が為替預金よりかなり広く設定されているのが一般的です。 紙幣を保管し輸送するコストがかかるためです。「外貨預金の手数料」と「外貨現金の手数料」は別物と考えてください。
外貨預金に預けた外貨を、そのまま現金で引き出せると考えている場合も注意が必要です。 外貨預金は帳簿上の残高であって、紙幣とは別のものです。 現金として受け取るには両替の手続きが必要になり、 そこで外貨現金のレートが適用されます。銀行によっては、 外貨現金の取り扱いそのものがない場合もあります。
海外で使う予定があるなら、外貨預金に紐づいたデビットカードなど、 別の受け取り方が用意されていることもあります。 いずれにせよ、どの形で外貨を使うかによってコストの構造が変わります。 預ける前に、出口までを一度たどっておくと想定違いが減ります。
負担を軽くするためにできること
為替コストそのものをゼロにすることはできませんが、 抑える余地はいくつかあります。どれも特別な知識は要りません。
ひとつは取引方法を選ぶことです。 同じ銀行・同じ通貨でも、店頭よりインターネットバンキングのほうが幅が狭いのが一般的です。 窓口で相談してから、手続きだけをオンラインで行えるようにしている銀行もあります。 預ける前に、どの経路だと条件がよいのかを確認しておくと差が出ます。
もうひとつは往復の回数を減らすことです。 為替コストは、円と外貨のあいだを行き来するたびにかかります。 相場を見て何度も出し入れすると、そのつど負担が積み上がります。 短い期間で判断を変えるつもりなら、そもそも外貨預金が合っていない可能性があります。
三つめは預入期間との釣り合いを見ることです。 コストは一度きり、利息は期間に比例します。 同じ通貨・同じ金額なら、預ける期間が長いほどコストの相対的な重みは下がります。 ただし、期間を延ばせば為替が動く余地も広がります。 コストだけを理由に期間を決めないでください。
自分の損益を数えるときの扱い
結論はひとつです。手数料の額を別に足し引きしないでください。TTSで計算したうえでさらに手数料を引くと、二重に引くことになります。
使う数字
- 預け入れたときに、実際に適用されたレート(取引明細に残っています)
- その通貨・その期間の年利
- 預入金額と預入期間
手数料の額を持っている必要はありません。適用されたレートさえ分かれば、 そこに含まれているコストも一緒に計算に入ります。 逆に、手数料の額だけを知っていてレートが分からない場合は計算できません。持っておくべきなのは、手数料ではなくレートのほうだということです。
この4つがあれば、円で受け取ったときに元本を割るレートが逆算できます。 ToMiでは手数料を入力せずに元本割れラインを計算することができます。 手数料の欄がないのは、聞かなくても済むからです。 銀行によって書き方が違う手数料を読み解くより、 取引画面に出た一つの数字を写すほうが、間違いが起きにくくなります。
レートそのものの意味についてはTTS・TTBとは?を、円高で何が起きるかについては外貨預金は円高になるとどうなる?を参照してください。
