控除証明書が引き出しから出てきた、一部の保険だけ出し忘れた気がする、 そもそも年末調整に何も出さなかった。 気づいたタイミングはさまざまですが、そのタイミングによって、次にやることが変わります。
年末調整で忘れても、そこで終わりではない
年末調整は、勤務先が本人に代わって1年分の所得税を精算する手続きです。 ここで生命保険料控除を出し忘れると、その年の精算には反映されません。 ただし、精算そのものをやり直す道は残っています。
なぜ手続きが分かれるのかというと、税額を確定させた主体が違うからです。 年末調整は勤務先が本人に代わって精算するもの、確定申告は本人が自分で行うものです。 勤務先の精算がまだ終わっていなければ、その中身を直せます。 終わっていれば、本人が自分で申告する側に回ります。 すでに本人が申告まで済ませているなら、出したものを直す手続きになります。
分かれ道は2つあります。 ひとつは年末調整が終わっているかどうか、 もうひとつはその年について確定申告を出しているかどうかです。 この2つで、進む先が決まります。
年末調整の前に気づいた場合
いちばん簡単なのがこの場合です。 給与所得者が年末調整で生命保険料控除を受けるには、 保険料控除申告書という書類に書いて勤務先へ提出します。 そこに未提出だった契約を足せば済みます。
書くときは、区分と新旧を分けてください。 一般生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料のどれか、 そして新契約か旧契約かで、書く欄が変わります。 どちらも控除証明書に書かれているので、証明書を見ながら写すのが確実です。
このとき、その年に払った保険料をすべて書き出しておくと確実です。 出し忘れは1件だけとは限りません。年の途中で契約した保険や、 家族名義で自分が保険料を負担している契約は、とくに見落とされやすいところです。 証明書を全部並べてから、区分と新旧ごとに合計するのが確実な手順になります。
年末調整のあとに気づいた場合
年末調整が終わったあとでも、本人が自分で申告すれば反映できます。 確定申告の義務がない給与所得者が、払いすぎた税金を返してもらうために出す申告を還付申告といいます。
このとき、勤務先に頼んで年末調整をやり直してもらう方法もあります。 翌年1月末までであれば、勤務先が源泉徴収票を出し直せる場合があるためです。 ただし対応は勤務先によって違うので、まず確認してからになります。
還付申告とは何か
還付申告は確定申告の一種ですが、出す目的が違います。 納める税金を確定させるためではなく、すでに納めすぎている税金を返してもらうために出します。
給与から源泉徴収されている所得税は、年末調整で精算された時点の額です。 そこに反映されていない控除があれば、その分だけ納めすぎになっています。 還付申告は、その差を取り戻す手続きです。
| 還付申告 | 更正の請求 | |
|---|---|---|
| どんな人が | 確定申告をしていない人 | 確定申告を出した人 |
| 何をする | 申告して還付を受ける | 出した申告の内容を直す |
| いつまで | 対象年の翌年1月1日から5年 | 法定申告期限から原則5年 |
還付申告は、対象となる年の翌年1月1日から5年間提出できます。 確定申告の期間である2月16日から3月15日を待つ必要はなく、 年が明ければ出せます。混み合う時期を避けられるという意味でも、早いほうが楽です。
すでに確定申告をしている場合
その年について確定申告をすでに出している場合は、還付申告ではありません。 出した申告書の内容を直す手続きになります。 控除を足して税額が減る方向であれば、更正の請求です。
更正の請求は、原則として法定申告期限から5年以内に行います。 請求すれば必ず認められるというものではなく、 税務署が内容を確認したうえで判断します。 そのため、根拠となる控除証明書は必ず手元に用意しておいてください。
5年という期限の数え方
還付申告の5年は、対象となる年の翌年1月1日から数えます。 その年の12月31日からでも、年末調整をした日からでもありません。 年をまたいで数えるので、いま何年分までさかのぼれるのかは、 いまの日付ではなく「どの年分か」で考えることになります。
複数年ぶんまとめて気づいた場合は、年ごとに手続きが要ります。 年分ごとに制度の表も上限も違うことがあるため、 その年の表で計算し直す必要があります。1回の申告でまとめて処理はできません。
気づいたのが年の前半なら、まだ数年分さかのぼれることがあります。 ただし古い年分ほど、控除証明書も源泉徴収票も手元に残っていないものです。 保険会社の再発行にも応じられる期間があり、勤務先に源泉徴収票の再発行を頼むにも 時間がかかります。期限に余裕があるうちに動いておくほうが、結果として早く済みます。
手続きしても増えないことがある
出し忘れた契約があっても、控除額がまったく増えないことがあります。 すでに上限に達している場合です。 生命保険料控除には区分ごとの上限と、3区分を合計した上限があり、 そこへ届いていれば、契約を足しても額は動きません。
「未申告の保険料 × 税率」で戻る額を見積もると、 ここを見落として大きな金額が出てしまいます。 正しくは、全部の契約で計算した控除額から、 申告済みの契約だけで計算した控除額を引いた差です。 上限を通したあとで引き算しないと合いません。
もうひとつ、そもそも引く先の税額がない場合もあります。 課税所得がなければ、控除額が増えても所得税は動きません。 書類を集める手間をかける前に、増える額がいくらなのかを先に見ておくと無駄がありません。
増えるかどうかは、区分の散らばりで決まる
出し忘れた契約が、すでに上限まで使っている区分のものだった場合は増えません。 逆に、まだ何も入っていない区分の契約であれば、その区分の枠を新しく使えるので増えます。 同じ金額の出し忘れでも、どの区分かによって結果が変わるということです。
さらに所得税と住民税で結果が食い違うこともあります。 住民税は3区分を合計した上限が所得税より小さいので、 所得税では増えるのに住民税は上限に当たって増えない、という組み合わせが起こります。 片方だけを見て「増えない」と決めないほうが確実です。
手続きの前にそろえるもの
- 出し忘れた契約の控除証明書。見つからなければ保険会社に再発行を依頼します。
- その年の源泉徴収票。すでに引かれている所得税の額がここに書かれています。
- 還付を受ける口座の情報。本人名義のものが必要です。
- マイナンバーが分かるものと、本人確認書類。
そろえる前に、まず増える額を確かめておくと判断が早くなります。 ToMiではまだ反映されていない控除額と、次に確認する手続きを診断することができます。 申告済みの契約と未申告の契約を分けて入れると、 上限を通したあとの差と、自分がどの手続きに当たるのかが出ます。
控除証明書が見つからない場合は、まず保険会社に再発行を依頼してください。 電話やWebで受け付けている会社が多く、電子的な証明書を出している会社もあります。 再発行には日数がかかるので、期限が近い年分ほど早めに動く必要があります。
手続きそのものの期限や必要書類は、年分や状況によって変わります。 最終的には税務署または勤務先に確認してください。 この記事に書いているのは制度の考え方までで、 個別の事情に合わせた判断は、事実関係を見られる相手にしかできません。
